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24話・短い旅路とキャラバン
そうこうすること五日。
ライラの故郷に行くための馬車に乗り換えるために降り立ったのは、ぎりぎり街と呼べなくもない規模のラッツイネという場所で、隣のクミナクが「ずいぶん狭いな」と呟いたのがやけに印象的だった。
ラッツイネでその感想ならば、ライラの村などクミナクにとっては屋敷の敷地内にはいるような印象かもしれない、などと冗談交じりに考えて、一瞬、果たしてそれが冗談で済むのだろうかと真剣に考え込んでしまったライラだった。
ラッツイネからはライラの村、イーデルまで途中に村も街もない。
ただただ、本来は歩くだけなのだが、徒歩だと馬車の五倍は時間がかかることもあって、よほど生活に困窮していない限り、イーデルの村の住人は自ら飼っている馬に乗るか、運がよければイーデルの方向に向かうキャラバンを引き止めて乗せてもらうかのどちらかだ。
ライラは今回後者しか手段がないので、キャラバンが見つかるまでラッツイネに留まるつもりで根気強くキャラバンを探すつもりだったが、街中でキャラバンを探していると、背後から肩を叩かれた。
「久しぶりじゃねぇか、ライラ」
「ファンさん!」
馴染みのキャラバンのボスの顔にぱっとライラの顔が輝く。
短く刈り上げた黒髪に同色の瞳。茶色の帽子はトレードマークだ。優男風の優しげな面差しをしているが、その実、真が強く精霊術にも長けた頼れる男だ。
隣のクミナクが首を傾げたのに、よく村に訪れているキャラバンだと説明をして、ファンと向き合う。
「あの、さっそくで悪いんですけど、ファンさんはこれからどちらにいかれますか? もし村にいかれるんでしたら、乗せていってほしいんですけど……」
「ああ、それな。カシオスの旦那にライラの迎えを頼まれたんだよ」
「えっ」
「そろそろ帰ってくる筈だから、迎えにいってほしいって。うちは乗り合い馬車じゃねぇっていったんだけどなぁ」
口ではそうはいいつつも気分を害した様子もなく、からからと笑うファンにライラは眉を寄せて困ってしまう。
「ライラ、カシオス、というのは? ご兄弟かだれかか?」
「ううん、えっとね、なんていうか……」
説明が難しいなぁと、ライラが考え込んでいれば、クミナクに気付いたファンがフードの中を覗き込むように身をかがめて、端整なクミナクの面差しにひゅうと口笛を吹く。
「ライラお前、王都ですっごいのつかまえたんじゃねぇの? シャール家の坊ちゃんじゃん」
「僕を知っているんですか?」
「おうよ。キャラバンの情報網舐めんなよ?」
驚いた声を出したクミナクにファンはにっと笑う。
その笑みが実に人好きのするものだったから、クミナクもさして警戒心は抱かずに、被っていたフードを落とした。
紺色の髪と燃えるような紅い瞳を改めて正面か見て、もう一度ファンが口笛を吹く。
「ライラ、お前ほんと……すげぇなぁ」
「な、なにか勘違いしてるみたいですけど! クミナクはパートナーですから! パートナー!」
「ただのパートナーは王都から飛び出してこんな辺境までこないだろうよ、っていうのはまぁ、いいか。んで、乗っていくかい?」
「もちろんお願いします。えっと、料金は……」
「カシオスの旦那から貰ってるからいらねぇよ。んじゃ、補給はすんでるし、ちゃちゃっといきますかね」
そう言って踵を返したファンの後について歩き出しながら、隣のクミナクが小声でライラに問いかける。
「それで、結局カシオスと言う人物は……」
「あー……年上の、友人?」
「友人?」
「それ以外に、言葉見つからないなぁ……」
そんな二人のやり取りは小声だったものの前を歩くファンは流石の聴力というべきか、しっかり聞こえていたようで、笑いながら言葉を投げかけてくる。
「まぁ、あれだけ年が離れてたらそういう表現にもなるだろうが、カシオスの旦那のほうは年の離れた妹みたいに思ってるんじゃないかねぇ。坊主もまずはカシオスの旦那に認められるところからだろうなぁ」
「な、なにいってるんですかー!」
「だって、わざわざ俺らに依頼してライラの迎えによこすほどだぜ? 溺愛されてるじゃねぇか。ご両親は王都の貴族って知ったら喜びそうだが、旦那はそういうのに流されないからなぁ」
「だから違うっていってるじゃないですか!」
「はっはっは」
「ちょっと、聞いてるんですかー!」
それこそ兄と妹のような気安いやりとりを、どこか眩しく感じながらクミナクは黙って見つめていた。
ライラの故郷に行くための馬車に乗り換えるために降り立ったのは、ぎりぎり街と呼べなくもない規模のラッツイネという場所で、隣のクミナクが「ずいぶん狭いな」と呟いたのがやけに印象的だった。
ラッツイネでその感想ならば、ライラの村などクミナクにとっては屋敷の敷地内にはいるような印象かもしれない、などと冗談交じりに考えて、一瞬、果たしてそれが冗談で済むのだろうかと真剣に考え込んでしまったライラだった。
ラッツイネからはライラの村、イーデルまで途中に村も街もない。
ただただ、本来は歩くだけなのだが、徒歩だと馬車の五倍は時間がかかることもあって、よほど生活に困窮していない限り、イーデルの村の住人は自ら飼っている馬に乗るか、運がよければイーデルの方向に向かうキャラバンを引き止めて乗せてもらうかのどちらかだ。
ライラは今回後者しか手段がないので、キャラバンが見つかるまでラッツイネに留まるつもりで根気強くキャラバンを探すつもりだったが、街中でキャラバンを探していると、背後から肩を叩かれた。
「久しぶりじゃねぇか、ライラ」
「ファンさん!」
馴染みのキャラバンのボスの顔にぱっとライラの顔が輝く。
短く刈り上げた黒髪に同色の瞳。茶色の帽子はトレードマークだ。優男風の優しげな面差しをしているが、その実、真が強く精霊術にも長けた頼れる男だ。
隣のクミナクが首を傾げたのに、よく村に訪れているキャラバンだと説明をして、ファンと向き合う。
「あの、さっそくで悪いんですけど、ファンさんはこれからどちらにいかれますか? もし村にいかれるんでしたら、乗せていってほしいんですけど……」
「ああ、それな。カシオスの旦那にライラの迎えを頼まれたんだよ」
「えっ」
「そろそろ帰ってくる筈だから、迎えにいってほしいって。うちは乗り合い馬車じゃねぇっていったんだけどなぁ」
口ではそうはいいつつも気分を害した様子もなく、からからと笑うファンにライラは眉を寄せて困ってしまう。
「ライラ、カシオス、というのは? ご兄弟かだれかか?」
「ううん、えっとね、なんていうか……」
説明が難しいなぁと、ライラが考え込んでいれば、クミナクに気付いたファンがフードの中を覗き込むように身をかがめて、端整なクミナクの面差しにひゅうと口笛を吹く。
「ライラお前、王都ですっごいのつかまえたんじゃねぇの? シャール家の坊ちゃんじゃん」
「僕を知っているんですか?」
「おうよ。キャラバンの情報網舐めんなよ?」
驚いた声を出したクミナクにファンはにっと笑う。
その笑みが実に人好きのするものだったから、クミナクもさして警戒心は抱かずに、被っていたフードを落とした。
紺色の髪と燃えるような紅い瞳を改めて正面か見て、もう一度ファンが口笛を吹く。
「ライラ、お前ほんと……すげぇなぁ」
「な、なにか勘違いしてるみたいですけど! クミナクはパートナーですから! パートナー!」
「ただのパートナーは王都から飛び出してこんな辺境までこないだろうよ、っていうのはまぁ、いいか。んで、乗っていくかい?」
「もちろんお願いします。えっと、料金は……」
「カシオスの旦那から貰ってるからいらねぇよ。んじゃ、補給はすんでるし、ちゃちゃっといきますかね」
そう言って踵を返したファンの後について歩き出しながら、隣のクミナクが小声でライラに問いかける。
「それで、結局カシオスと言う人物は……」
「あー……年上の、友人?」
「友人?」
「それ以外に、言葉見つからないなぁ……」
そんな二人のやり取りは小声だったものの前を歩くファンは流石の聴力というべきか、しっかり聞こえていたようで、笑いながら言葉を投げかけてくる。
「まぁ、あれだけ年が離れてたらそういう表現にもなるだろうが、カシオスの旦那のほうは年の離れた妹みたいに思ってるんじゃないかねぇ。坊主もまずはカシオスの旦那に認められるところからだろうなぁ」
「な、なにいってるんですかー!」
「だって、わざわざ俺らに依頼してライラの迎えによこすほどだぜ? 溺愛されてるじゃねぇか。ご両親は王都の貴族って知ったら喜びそうだが、旦那はそういうのに流されないからなぁ」
「だから違うっていってるじゃないですか!」
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