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32話・精霊の化石と願い
モノクルはそのままクミナクの懐にしまわれた。
後のことを考えれば、あまりいいことではなかったが、木の精霊までもが「今回の褒美じゃよ」ところころと笑ったので、いいだろう。
残るは精霊の化石を還す作業だ。
石造にされていた木の精霊は、ライラの中に石造にされる直前に意識の一部を写していたということで、今回石造の近くにライラが来たことと精霊を壊すだけではなく、ライラに渡された短剣が元は儀礼用のものであったこと、様々な力がこめられた短剣の術式がいい方向に働いたことで元の姿を取り戻せたとのことだった。
だが、残された精霊の化石はそうはいかない。
木の精霊の助力を得て、ライラが全てを還すことになった。
「いいのか、ライラ。教諭たちに任せたほうが……」
「ううん、元は私のせいだもの。私がやる」
負担が大きいと引き止めるクミナクに強い意志を持って首を横に振り、すでに効果をなくしたペンダントをはずしてクミナクに押し付けると、ライラは化石の散らばる部屋の中央に座り込んだ。
両手を組み合わせて、祈りの体制をとる。そのライラの目元を背後に回った木の精霊のたおやかな手が隠す。
脳裏に描くのは幼い日、遊んだ数多の精霊たち。
学園で目にした元気な精霊たち。
無垢で、無邪気で、それゆえに愛しい隣人たち。
「―――還って」
言葉は、ただ一つだけ。
そこに膨大な願いという名の生命力をこめて。
告げたライラの体が淡く光る。
バレッタが外れて、髪がふわりと浮き上がる。
幻想的な光景に、息を呑むクミナクの周囲で精霊の化石たちも共鳴するように光り輝きだした。
そして、光は割れて、精霊が姿をみせる。
多種多様の精霊たちが一つの部屋に集う様は壮観といってよかった。
モノクルのお陰で、全てとはいかないまでも、精霊が視認できるようになったクミナクが息をつめる。
そっと目を開いたライラの目元から大木の精霊の手がはずされる。
ライラの周りを喜びで踊る精霊たち。その姿にライラを忌諱する気配はない。
そのことに、心底安堵して、力を使い果たしたライラは倒れるように眠りについた。
脳裏には楽しげに笑う精霊たちの無邪気で無垢な声がずっと響いていた。
* * *
クミナクの回復魔術で体の傷を癒したライラとクミナクは何食わぬ顔で村に戻った。
今回のことは、ライラとクミナクだけでどうにかできる範囲を超えている。かといって、精霊に疎い村人に知らせてどうこうなる事案でもない。
目覚めたライラとクミナクは話し合って、木の精霊伝いに風の精霊に学園までの伝言を頼んだ。
風の精霊の伝達はさすがに速くて十五分もすれば、ライラとクミナクのいたカシオスの家屋に空間魔術で教諭たちが姿を見せた。
精霊の化石を還すという木の精霊の助けを得ていたとはいっても無茶をしたライラと、危険人物と知って突っ込んだクミナクはこってりと絞られたが、いつまでたっても帰ってこない二人を心配したライラの母が姿を見せたことで、ひとまず開放された。
現場検証をするという教諭たちを置いて、何があったのかとしきりに心配するライラの母に精霊と喧嘩したけど仲直りしたよ、とライラが明るい笑顔で告げたことでライラの母もそれ以上の追求はしなかった。
ずっと思いつめた表情をしていた娘が晴れやかに笑っていたのが理由のひとつなのだろうとはクミナクの見立てだ。
その後、ライラの家で夕食をとった後、教諭たちが学園に戻るならば一緒に来るかと誘ってくれたので、お言葉に甘えることにして、二人はそのまま学園に戻った。
帰ってきてすぐ、一泊もせずにとんぼ返りになったことを両親や兄妹に詫びたが、全員がライラの学園生活を応援してくれて、とても胸が温かかった。
後のことを考えれば、あまりいいことではなかったが、木の精霊までもが「今回の褒美じゃよ」ところころと笑ったので、いいだろう。
残るは精霊の化石を還す作業だ。
石造にされていた木の精霊は、ライラの中に石造にされる直前に意識の一部を写していたということで、今回石造の近くにライラが来たことと精霊を壊すだけではなく、ライラに渡された短剣が元は儀礼用のものであったこと、様々な力がこめられた短剣の術式がいい方向に働いたことで元の姿を取り戻せたとのことだった。
だが、残された精霊の化石はそうはいかない。
木の精霊の助力を得て、ライラが全てを還すことになった。
「いいのか、ライラ。教諭たちに任せたほうが……」
「ううん、元は私のせいだもの。私がやる」
負担が大きいと引き止めるクミナクに強い意志を持って首を横に振り、すでに効果をなくしたペンダントをはずしてクミナクに押し付けると、ライラは化石の散らばる部屋の中央に座り込んだ。
両手を組み合わせて、祈りの体制をとる。そのライラの目元を背後に回った木の精霊のたおやかな手が隠す。
脳裏に描くのは幼い日、遊んだ数多の精霊たち。
学園で目にした元気な精霊たち。
無垢で、無邪気で、それゆえに愛しい隣人たち。
「―――還って」
言葉は、ただ一つだけ。
そこに膨大な願いという名の生命力をこめて。
告げたライラの体が淡く光る。
バレッタが外れて、髪がふわりと浮き上がる。
幻想的な光景に、息を呑むクミナクの周囲で精霊の化石たちも共鳴するように光り輝きだした。
そして、光は割れて、精霊が姿をみせる。
多種多様の精霊たちが一つの部屋に集う様は壮観といってよかった。
モノクルのお陰で、全てとはいかないまでも、精霊が視認できるようになったクミナクが息をつめる。
そっと目を開いたライラの目元から大木の精霊の手がはずされる。
ライラの周りを喜びで踊る精霊たち。その姿にライラを忌諱する気配はない。
そのことに、心底安堵して、力を使い果たしたライラは倒れるように眠りについた。
脳裏には楽しげに笑う精霊たちの無邪気で無垢な声がずっと響いていた。
* * *
クミナクの回復魔術で体の傷を癒したライラとクミナクは何食わぬ顔で村に戻った。
今回のことは、ライラとクミナクだけでどうにかできる範囲を超えている。かといって、精霊に疎い村人に知らせてどうこうなる事案でもない。
目覚めたライラとクミナクは話し合って、木の精霊伝いに風の精霊に学園までの伝言を頼んだ。
風の精霊の伝達はさすがに速くて十五分もすれば、ライラとクミナクのいたカシオスの家屋に空間魔術で教諭たちが姿を見せた。
精霊の化石を還すという木の精霊の助けを得ていたとはいっても無茶をしたライラと、危険人物と知って突っ込んだクミナクはこってりと絞られたが、いつまでたっても帰ってこない二人を心配したライラの母が姿を見せたことで、ひとまず開放された。
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ずっと思いつめた表情をしていた娘が晴れやかに笑っていたのが理由のひとつなのだろうとはクミナクの見立てだ。
その後、ライラの家で夕食をとった後、教諭たちが学園に戻るならば一緒に来るかと誘ってくれたので、お言葉に甘えることにして、二人はそのまま学園に戻った。
帰ってきてすぐ、一泊もせずにとんぼ返りになったことを両親や兄妹に詫びたが、全員がライラの学園生活を応援してくれて、とても胸が温かかった。
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