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33話・パーティーとドレス
そして、理由は伏せたまま精霊が戻ってきたことで再開された学園にちらほらと地方の生徒たちも戻ってきた頃。
ツアカがどこから聞いたのか、村での一件を聞きつけて泣きながら「無事でよかった」とライラを抱きしめたりとしたささやかな騒動はあったものの、おおむね平穏に学園生活は仕切りなおされた。
ライラはクミナクからパーティーに招待された。
貴族のパーティーなど敷居が高いと辞退しようとしたライラだったが、いずれ王宮勤めの精霊術士になるならば、いまから社交界の経験をつんでいても無駄ではないというクミナクの説得に応じる形で、クミナクのパートナーとして、パーティーに参加することになった。
さすがのツアカもパーティー用のドレスなどもっていなかったので、クミナクから借りることになったが。
ライラの髪の色に合わせた、オレンジ色の明るいドレスを身にまとって、髪も綺麗にセットしてもらい、薄化粧を施したライラはクミナクにつれまわされる形であいさつ回りを終えたころにはぐったりとしていた。
壁の華を二人して決め込んでいると恐る恐るとクミナクに挨拶に訪れた、ライラやクミナクより年下の少年がきた。
「は、はじめまして。クミナク様、ぼ、……私はゴドリアヌスの次期当主、カガリといいます」
金の髪が眩しい少年は、蜂蜜色の瞳をしていた。澄んだとてもいい目をしていると、ライラは思った。
「はじめまして、僕はシャール家の長男、クミナクと申します」
「はい、存じております。あの、その、先の一件では……名目上の当主が非礼を……」
「いいえ、そのことでしたら気にしておりませんので。気に病まれるようなことはございません」
その後もいくつかやり取りをする二人を遠い世界だよなぁ、やっぱり、などと思いながら眺めていたら、少年は小さく頭を下げて遠ざかっていった。
「ねぇ、クミナク。ゴドリアス、って」
「カシオスの生家だね。流石に今回の件で正式にカシオスを家名から除名して、新たな当主を立てたようだ。それが、さっきの彼だね。当主の拝命は成人する十八歳になるだろうけど」
「ふーん……貴族社会もたいへんねぇ」
「ライラもいずれここに混じるんだよ」
「……想像つかないなぁ……。あ、そういえばさ」
「なんだい?」
にこっとクミナクを覗き込んでライラは笑いながらずっといつ言おうかタイミングを計っていたことを告げた。
「名前、呼んでくれる様になったね」
「え、あ」
「ふふ、その方がなんだか嬉しいや。認められたみたいで」
「……僕はとっくに君を認めているよ」
「? なにかいった?クミナク」
「いや、なんでもない」
小さな声での反論はすぐ傍にいたライラにも届かなかったようだ。安心したような、悔しいような実に微妙な気分になる。
そんな気持ちを振り払うように、クミナクは外に視線を向けた。
火の精のお陰で月明かり以外でも明るい外はポケットにずっと入れっぱなしで渡す機会をずっと逃していたものを渡すいいシュチュエーションに思えた。
「せっかくだ、外を散策しないか?」
「いいね、ちょっと、ここはやっぱり息が詰まるよ」
「慣れだよ、慣れ」
「うーん、慣れたいような慣れたくないような……」
ぶつぶつと呟くライラの手を引いてテラスから外に出る。
「わぁ、噴水が綺麗! 火の精よね、贅沢な使い方だなぁ」
いたるところで素養がないものにもわかるように体を光らせながら空を飛んでいる火の精たちをみつめながら、目を輝かせるライラに小さく笑って、クミナクはポケットから包装された小包を取り出した。
「ライラ、手を出して」
「うん?」
首をかしげながらも素直に出された手のひらに小包を載せる。
ぱち、ぱちり。
瞬きを繰り返すライラに「あけてみて」と優しく促せば、ライラは恐る恐ると小包を開いて、そこに鎮座する金の蝶を象ったいつか見たバレッタを認めて目を見開いた。
「僕から、散々ないがしろにしたお詫びだ。受け取って欲しい」
「え、でも、そんな」
「いいから。これは、僕からの謝意だ」
「クミナク……」
「半年。半年だ。僕が君を馬鹿にして、努力をみようともしなかった期間。物であがなえるとは思えないが、それでも受け取って欲しい」
真摯にそういわれては、要らないと、もらえないとつき返すことも出来なくて。
ライラはへにゃりと眉を寄せて、バレッタを胸元に引き寄せた。
「うん、じゃあ、これは貰う。その代わり、これで終わり。ね?」
「……君がそれでいいなら」
「うん、いいの。本当は貰わなくたって、許してるよ、とっくに」
「君は心が広いな、本当に」
「ふふ、馬鹿にされてたころはいつか張り倒してやろうと思ってた程度には腹は立っていたけどね」
笑い混じりのライラの言葉はけれどどこか本気が見えて、張り倒される前に気付けてよかったとクミナクは人知れず胸をなでおろした。
「……友達から、プレゼントを貰うのは、二度目だなぁ……」
それが、だれを指すのかわかってしまったから、自然と渋面になったのは仕方がないことだろう。
だが、クミナクが苦言を呈すより早く、ライラはにっこりと笑ってセットされた髪をぐしゃぐしゃと解くと、手早く髪を一つにまとめてバレッタで留めて見せた。
「どう? 似合う?」
「ああ」
もっとやり方はあっただろうとか、まだパーティーの途中だとか、いまでなくとも、などなど、いいたいことはあったけれど、晴れやかに笑うライラの顔を見ていたらすべてどうでもいい気がしてきて、クミナクも久しぶりにくったくのない笑みを見せた。
ツアカがどこから聞いたのか、村での一件を聞きつけて泣きながら「無事でよかった」とライラを抱きしめたりとしたささやかな騒動はあったものの、おおむね平穏に学園生活は仕切りなおされた。
ライラはクミナクからパーティーに招待された。
貴族のパーティーなど敷居が高いと辞退しようとしたライラだったが、いずれ王宮勤めの精霊術士になるならば、いまから社交界の経験をつんでいても無駄ではないというクミナクの説得に応じる形で、クミナクのパートナーとして、パーティーに参加することになった。
さすがのツアカもパーティー用のドレスなどもっていなかったので、クミナクから借りることになったが。
ライラの髪の色に合わせた、オレンジ色の明るいドレスを身にまとって、髪も綺麗にセットしてもらい、薄化粧を施したライラはクミナクにつれまわされる形であいさつ回りを終えたころにはぐったりとしていた。
壁の華を二人して決め込んでいると恐る恐るとクミナクに挨拶に訪れた、ライラやクミナクより年下の少年がきた。
「は、はじめまして。クミナク様、ぼ、……私はゴドリアヌスの次期当主、カガリといいます」
金の髪が眩しい少年は、蜂蜜色の瞳をしていた。澄んだとてもいい目をしていると、ライラは思った。
「はじめまして、僕はシャール家の長男、クミナクと申します」
「はい、存じております。あの、その、先の一件では……名目上の当主が非礼を……」
「いいえ、そのことでしたら気にしておりませんので。気に病まれるようなことはございません」
その後もいくつかやり取りをする二人を遠い世界だよなぁ、やっぱり、などと思いながら眺めていたら、少年は小さく頭を下げて遠ざかっていった。
「ねぇ、クミナク。ゴドリアス、って」
「カシオスの生家だね。流石に今回の件で正式にカシオスを家名から除名して、新たな当主を立てたようだ。それが、さっきの彼だね。当主の拝命は成人する十八歳になるだろうけど」
「ふーん……貴族社会もたいへんねぇ」
「ライラもいずれここに混じるんだよ」
「……想像つかないなぁ……。あ、そういえばさ」
「なんだい?」
にこっとクミナクを覗き込んでライラは笑いながらずっといつ言おうかタイミングを計っていたことを告げた。
「名前、呼んでくれる様になったね」
「え、あ」
「ふふ、その方がなんだか嬉しいや。認められたみたいで」
「……僕はとっくに君を認めているよ」
「? なにかいった?クミナク」
「いや、なんでもない」
小さな声での反論はすぐ傍にいたライラにも届かなかったようだ。安心したような、悔しいような実に微妙な気分になる。
そんな気持ちを振り払うように、クミナクは外に視線を向けた。
火の精のお陰で月明かり以外でも明るい外はポケットにずっと入れっぱなしで渡す機会をずっと逃していたものを渡すいいシュチュエーションに思えた。
「せっかくだ、外を散策しないか?」
「いいね、ちょっと、ここはやっぱり息が詰まるよ」
「慣れだよ、慣れ」
「うーん、慣れたいような慣れたくないような……」
ぶつぶつと呟くライラの手を引いてテラスから外に出る。
「わぁ、噴水が綺麗! 火の精よね、贅沢な使い方だなぁ」
いたるところで素養がないものにもわかるように体を光らせながら空を飛んでいる火の精たちをみつめながら、目を輝かせるライラに小さく笑って、クミナクはポケットから包装された小包を取り出した。
「ライラ、手を出して」
「うん?」
首をかしげながらも素直に出された手のひらに小包を載せる。
ぱち、ぱちり。
瞬きを繰り返すライラに「あけてみて」と優しく促せば、ライラは恐る恐ると小包を開いて、そこに鎮座する金の蝶を象ったいつか見たバレッタを認めて目を見開いた。
「僕から、散々ないがしろにしたお詫びだ。受け取って欲しい」
「え、でも、そんな」
「いいから。これは、僕からの謝意だ」
「クミナク……」
「半年。半年だ。僕が君を馬鹿にして、努力をみようともしなかった期間。物であがなえるとは思えないが、それでも受け取って欲しい」
真摯にそういわれては、要らないと、もらえないとつき返すことも出来なくて。
ライラはへにゃりと眉を寄せて、バレッタを胸元に引き寄せた。
「うん、じゃあ、これは貰う。その代わり、これで終わり。ね?」
「……君がそれでいいなら」
「うん、いいの。本当は貰わなくたって、許してるよ、とっくに」
「君は心が広いな、本当に」
「ふふ、馬鹿にされてたころはいつか張り倒してやろうと思ってた程度には腹は立っていたけどね」
笑い混じりのライラの言葉はけれどどこか本気が見えて、張り倒される前に気付けてよかったとクミナクは人知れず胸をなでおろした。
「……友達から、プレゼントを貰うのは、二度目だなぁ……」
それが、だれを指すのかわかってしまったから、自然と渋面になったのは仕方がないことだろう。
だが、クミナクが苦言を呈すより早く、ライラはにっこりと笑ってセットされた髪をぐしゃぐしゃと解くと、手早く髪を一つにまとめてバレッタで留めて見せた。
「どう? 似合う?」
「ああ」
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