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28話・私と彼の見つめる先の話
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お城に戻って。元の位置に戻されたレイスの蕾をぼんやりと眺める。
王様は同年齢の人を手配するって帰り道でレイスに話しかけていたけれど、だれがくるのだろう。誰が来ても私のことは見えないだろうし、私も相手を知らないのは決定なのだけど。
首を傾げつつ、つんつんとレイスをつつく。今度は変化は起きない。
「早く、あいたいなぁ」
ぽつりと、本音がこぼれた。
翌日、レイスはまだ物が食べれる状態ではないけど、毎日律儀にお供えのように用意される食事の、果物を盗み食いする。
人目がないときにためしてみて、私が意思を持てば物に触れることができるとわかっていた。
逆に触れる意思がないと、扉とかもすり抜けてしまうのだけど。
林檎によく似た食感の、味はもうちょっとすっぱい柑橘系みたいな果物を口に放り込む。お腹は減らないけど、口に物を入れる行為はほっとできた。
人間だもんなぁ、と無理やり納得している。
メイドさんの目を盗んでちょこちょこ食べているので、不自然に物が減っているのを当初は驚かれたけど、王様が「守人が付いている」といってからは騒ぎにもならなかった。
私用のものも用意されていたけど、そちらは剥かれずそのまま丸ごと置かれているので、食べるのを躊躇ってしまう。かじりつけということか。ちょっとハードルが高い。
なので、レイス用のものを、レイスに一応断ってからちょこちょこつまんでいるのだ。ごめんね、レイス。
そんな風に、ここにきてからの日常を過ごしていると、こんこんと扉がノックされた。慌てて口の中のものを飲み込む。
これ、口の中に入った時点で見えなくなるのかな? 咀嚼してても見えるんだろうか? なんて疑問がわく。
ノックの後しばらくして入室してきたのは、オレンジの髪を銀のバレッタで留めた妙齢の女性と、五歳ほどの外見の男の子だった。
藍色の髪をおかっぱにした、赤い瞳のとても愛らしい子供。
「はじめまして、ルウランといいます」
ルウランと名乗った小さな子供は、レイスの前までとたとたと歩いてくると恭しい動作で頭を下げた。
その姿が年不相応で、でも愛らしくて、小さく笑うと、後ろで母親だろう人も優しい笑みを浮かべていた。
それにしても、不思議な色の瞳をしている。光を反射してきらきら輝く瞳は、深い翠色で、瑞々しい木々の葉のようだ。
しげしげと眺めていると、ぱちりと視線が合った。視線が、あった?
え? と驚いていると、自然な仕草で視線がそらされる。気のせい?
「初めまして、ルウランの母のライと申します」
「おかあさま、そのおなまえでいいの?」
「ええ」
名前にその、も、どの、もあるのだろうか。
不思議な親子のやり取りに首をかしげていると、女性がほころぶように笑った。
「レイス様は精霊側のお方なの。貴方も将来精霊術士として名を授かったときには、その名をお伝えしなさい」
「はい、おかあさま」
こくんと頷いた子供の前で首を傾げる。つまり、精霊術士とやらになると、名前が変わる? ということだろうか。
とてとてとレイスに近づいた、ルウランと名乗った子供はもみじみたいな小さな手をレイスの蕾にかざした。
「とても、あたたかいはどうをかんじます。やわらかな、おちついた、きもちいい、やさしさにみちていますね」
幼い外見に見合わない成熟した物言いに、賢い子供だなぁと感心する。
私がこのくらいのときに、こんな言動はできなかった気がするなぁ。
まぁ、私がこのくらいの年のころのことは亡くなった母のこと以外、記憶にないのだけど。
「今日からこの子が貴方様の話し相手となります。どうぞよろしくお願いしますね」
そう言って、母親の女性はやわらかく微笑んだ。
慈愛に満ちたその表情が、酷く懐かしくて。私は無性に泣きたくなった気持ちを抑えるのに必死だった。だから、その瞳が。レイスを通り越して。
私に向けられていたのだと、気づかなかった。
王様は同年齢の人を手配するって帰り道でレイスに話しかけていたけれど、だれがくるのだろう。誰が来ても私のことは見えないだろうし、私も相手を知らないのは決定なのだけど。
首を傾げつつ、つんつんとレイスをつつく。今度は変化は起きない。
「早く、あいたいなぁ」
ぽつりと、本音がこぼれた。
翌日、レイスはまだ物が食べれる状態ではないけど、毎日律儀にお供えのように用意される食事の、果物を盗み食いする。
人目がないときにためしてみて、私が意思を持てば物に触れることができるとわかっていた。
逆に触れる意思がないと、扉とかもすり抜けてしまうのだけど。
林檎によく似た食感の、味はもうちょっとすっぱい柑橘系みたいな果物を口に放り込む。お腹は減らないけど、口に物を入れる行為はほっとできた。
人間だもんなぁ、と無理やり納得している。
メイドさんの目を盗んでちょこちょこ食べているので、不自然に物が減っているのを当初は驚かれたけど、王様が「守人が付いている」といってからは騒ぎにもならなかった。
私用のものも用意されていたけど、そちらは剥かれずそのまま丸ごと置かれているので、食べるのを躊躇ってしまう。かじりつけということか。ちょっとハードルが高い。
なので、レイス用のものを、レイスに一応断ってからちょこちょこつまんでいるのだ。ごめんね、レイス。
そんな風に、ここにきてからの日常を過ごしていると、こんこんと扉がノックされた。慌てて口の中のものを飲み込む。
これ、口の中に入った時点で見えなくなるのかな? 咀嚼してても見えるんだろうか? なんて疑問がわく。
ノックの後しばらくして入室してきたのは、オレンジの髪を銀のバレッタで留めた妙齢の女性と、五歳ほどの外見の男の子だった。
藍色の髪をおかっぱにした、赤い瞳のとても愛らしい子供。
「はじめまして、ルウランといいます」
ルウランと名乗った小さな子供は、レイスの前までとたとたと歩いてくると恭しい動作で頭を下げた。
その姿が年不相応で、でも愛らしくて、小さく笑うと、後ろで母親だろう人も優しい笑みを浮かべていた。
それにしても、不思議な色の瞳をしている。光を反射してきらきら輝く瞳は、深い翠色で、瑞々しい木々の葉のようだ。
しげしげと眺めていると、ぱちりと視線が合った。視線が、あった?
え? と驚いていると、自然な仕草で視線がそらされる。気のせい?
「初めまして、ルウランの母のライと申します」
「おかあさま、そのおなまえでいいの?」
「ええ」
名前にその、も、どの、もあるのだろうか。
不思議な親子のやり取りに首をかしげていると、女性がほころぶように笑った。
「レイス様は精霊側のお方なの。貴方も将来精霊術士として名を授かったときには、その名をお伝えしなさい」
「はい、おかあさま」
こくんと頷いた子供の前で首を傾げる。つまり、精霊術士とやらになると、名前が変わる? ということだろうか。
とてとてとレイスに近づいた、ルウランと名乗った子供はもみじみたいな小さな手をレイスの蕾にかざした。
「とても、あたたかいはどうをかんじます。やわらかな、おちついた、きもちいい、やさしさにみちていますね」
幼い外見に見合わない成熟した物言いに、賢い子供だなぁと感心する。
私がこのくらいのときに、こんな言動はできなかった気がするなぁ。
まぁ、私がこのくらいの年のころのことは亡くなった母のこと以外、記憶にないのだけど。
「今日からこの子が貴方様の話し相手となります。どうぞよろしくお願いしますね」
そう言って、母親の女性はやわらかく微笑んだ。
慈愛に満ちたその表情が、酷く懐かしくて。私は無性に泣きたくなった気持ちを抑えるのに必死だった。だから、その瞳が。レイスを通り越して。
私に向けられていたのだと、気づかなかった。
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