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38話・私と彼の決意の話(1)
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「まって!」
悲鳴じみた叫びが、自分のものだと自覚して飛び起きる。
文字通り飛び起きて、荒い息を落ち着かせる間もなく、なぜか寝ていたベッドから転がり落ちるように降りて、ドアに向かう。そのまま、つい、夢の中のくせで通り抜けようと手を伸ばして、ドアに当たった感触で我に返った。
「あ……、え?」
ぽかん、としてしまう。どういうことか頭の処理が追いつかない。
しばらくじっとドアを見つめて、そっとドアノブに手を伸ばす。
確かに触れたのを確認して、あけようとしたけれど、ガチャガチャと音がなっただけで、ドアは開かなかった。
「ゆ、め……?」
それにしては、あまりにリアリティがありすぎた。
どういうことかわからない。ふと、視線を落とした先に、青いドレスが見えて、また驚く。
「え? え?」
結婚式でも着ないようなふわふわのドレスに驚いて思わず全身を見て、やっぱりもってるはずのない服装に混乱する。
「ここ……どこ?」
そして、大変いまさらながら、この部屋が自分の自室ではないことにも気づいた。
高い天井に、転がり落ちたベッドはいわゆる天蓋つきのお姫様とかがつかっていそうなやつで、広い室内にある調度品はどれもすごく高そうだ。
きょろきょろと周りを見回していると、ガチャリとドアノブが捻られて、驚いて一歩下がる。
開かれた扉から入ってきたのは、目に麗しい、長髪の美形さんだった。
紫色の長い髪は腰までまっすぐに伸ばされていて、赤い瞳にどこか既視感を覚えてじぃっと顔を見ていると、華やかな美貌に穏やかな笑みがのる。
それで、あっと気づいた。もしか、して。記憶に在るのより、大分年上に見えるけれど。
「ルウラン……?」
「ああ、やはり。貴方はいたのですね」
小さくつぶやいた言葉に、嬉しそうな返事が返る。意味は伝わらなかったけど、肯定に近いものを感じて、ますます目を見開く。夢は、夢じゃなかった?
「貴方の目覚めをお待ちしておりました」
そういって跪いたルウランにぎょっとする。え、ちょ、やめて! やめて! 私そんなご大層な身分じゃないよ?! 小市民だから!!
慌てすぎて後ずさりして、長いドレスの裾を踏んでひっくり返る。大分惨めだけど、目の前で目を丸くしているルウランに貴方のせいだと罪を擦り付けたかった。
あ……夢が、夢じゃ、なかった、なら。
目覚める直前の、あの、言葉、は。
レイス、は?
さぁっと顔から血の気が引く。丁寧な動作で立たせてくれた、ルウランの腕を掴む。
「レイス、レイスは?!」
たたせてくれたお礼より先に、問い詰めるように口にした言葉を許して欲しい。
レイスが死んでいる、なんて信じたくなかった。縋るような自分の表情がルウランの赤い瞳に写る。
「落ち着いてください。レイスの元へいく前にいくつか確認したいことがあります」
「レイスは、無事、なの……?」
「先に、私の質問に答えてください。いいですね?」
強い口調で言われて、答えなければこの問答がいつまでも続く事を嫌でもわからされて、しぶしぶ頷く。
ありがとうございます、と穏やかに微笑んだルウランに思うところはあったけれど、口をつぐんで問いを待っていれば、ルウランは穏やかな瞳に僅かに鋭さをのせて、私の手を握る力を強めた。
「まず最初に。貴方がここにいるのは、私の独断です。レイスの想いを踏みにじる事を承知で、貴方をこの世界に呼びました。世渡り、と私たちは呼びます」
夢の中でも、世渡りの許可を、とレイスがいっていたから、きっとそのことだろう。
でも、レイスの想いを踏みにじる、とはどういうことなのか。問いかける視線には黙して答えとされた。
「次に、貴方はどこまで理解していますか? レイスの生い立ちは?」
「……夢が、夢じゃなかったの、なら。レイスは、湖の乙女と王様の子供、で……」
ほかに、なにかあっただろうか。考えながらの答えはルウランの納得するものであったらしい。一つ頷いて、ルウランはさらに問いを重ねる。
「精霊の落とし子の意味は?」
「……たし、か。精霊の落とし子は、人間に贈られる祝福の一つ、で。レイスが王様になれば、未曾有の繁栄が約束される」
「ええ。……ああ、本当に。貴方はそこにいたのですね」
「? さっきも、いってたけれど。それは、どういう」
訝しげに問いかけた私に、ルウランは安心させるような微笑を浮かべて、驚愕の事実を告げた。
「私は母が少し特殊な生まれでして。私自身も割りと精霊に近い立ち位置にいます。幼いころは、感性も精霊よりで。だから、貴方の気配を察することが出来ていました」
「えっ」
思わず、変な声を上げてしまう程度には驚いた。私の存在は湖の乙女にしか分からないと思っていたから。ああ、でも。思い返してみるならば。確かに、頷ける場面は、あったかもしれない。
「とはいっても、貴方を感じられたのは私が五歳のころのほんの一時だけですけれど」
「……」
私が、レイスのそばにいられた時間は、改めてみるととても短いのだろう。
その短い中の、ルウランが五歳で、レイスがまだ人の形をしていなかったころは、ほんとうに少ない時間で。だから、ルウランが謙遜する以上に、それは、すごいことだと思った。
「最低限の確認は終わりました。今、レイスがおかれている状況を説明しましょう」
「!」
「ですが、その前に。百聞は一見にしかず、といいますし。こちらへ」
悲鳴じみた叫びが、自分のものだと自覚して飛び起きる。
文字通り飛び起きて、荒い息を落ち着かせる間もなく、なぜか寝ていたベッドから転がり落ちるように降りて、ドアに向かう。そのまま、つい、夢の中のくせで通り抜けようと手を伸ばして、ドアに当たった感触で我に返った。
「あ……、え?」
ぽかん、としてしまう。どういうことか頭の処理が追いつかない。
しばらくじっとドアを見つめて、そっとドアノブに手を伸ばす。
確かに触れたのを確認して、あけようとしたけれど、ガチャガチャと音がなっただけで、ドアは開かなかった。
「ゆ、め……?」
それにしては、あまりにリアリティがありすぎた。
どういうことかわからない。ふと、視線を落とした先に、青いドレスが見えて、また驚く。
「え? え?」
結婚式でも着ないようなふわふわのドレスに驚いて思わず全身を見て、やっぱりもってるはずのない服装に混乱する。
「ここ……どこ?」
そして、大変いまさらながら、この部屋が自分の自室ではないことにも気づいた。
高い天井に、転がり落ちたベッドはいわゆる天蓋つきのお姫様とかがつかっていそうなやつで、広い室内にある調度品はどれもすごく高そうだ。
きょろきょろと周りを見回していると、ガチャリとドアノブが捻られて、驚いて一歩下がる。
開かれた扉から入ってきたのは、目に麗しい、長髪の美形さんだった。
紫色の長い髪は腰までまっすぐに伸ばされていて、赤い瞳にどこか既視感を覚えてじぃっと顔を見ていると、華やかな美貌に穏やかな笑みがのる。
それで、あっと気づいた。もしか、して。記憶に在るのより、大分年上に見えるけれど。
「ルウラン……?」
「ああ、やはり。貴方はいたのですね」
小さくつぶやいた言葉に、嬉しそうな返事が返る。意味は伝わらなかったけど、肯定に近いものを感じて、ますます目を見開く。夢は、夢じゃなかった?
「貴方の目覚めをお待ちしておりました」
そういって跪いたルウランにぎょっとする。え、ちょ、やめて! やめて! 私そんなご大層な身分じゃないよ?! 小市民だから!!
慌てすぎて後ずさりして、長いドレスの裾を踏んでひっくり返る。大分惨めだけど、目の前で目を丸くしているルウランに貴方のせいだと罪を擦り付けたかった。
あ……夢が、夢じゃ、なかった、なら。
目覚める直前の、あの、言葉、は。
レイス、は?
さぁっと顔から血の気が引く。丁寧な動作で立たせてくれた、ルウランの腕を掴む。
「レイス、レイスは?!」
たたせてくれたお礼より先に、問い詰めるように口にした言葉を許して欲しい。
レイスが死んでいる、なんて信じたくなかった。縋るような自分の表情がルウランの赤い瞳に写る。
「落ち着いてください。レイスの元へいく前にいくつか確認したいことがあります」
「レイスは、無事、なの……?」
「先に、私の質問に答えてください。いいですね?」
強い口調で言われて、答えなければこの問答がいつまでも続く事を嫌でもわからされて、しぶしぶ頷く。
ありがとうございます、と穏やかに微笑んだルウランに思うところはあったけれど、口をつぐんで問いを待っていれば、ルウランは穏やかな瞳に僅かに鋭さをのせて、私の手を握る力を強めた。
「まず最初に。貴方がここにいるのは、私の独断です。レイスの想いを踏みにじる事を承知で、貴方をこの世界に呼びました。世渡り、と私たちは呼びます」
夢の中でも、世渡りの許可を、とレイスがいっていたから、きっとそのことだろう。
でも、レイスの想いを踏みにじる、とはどういうことなのか。問いかける視線には黙して答えとされた。
「次に、貴方はどこまで理解していますか? レイスの生い立ちは?」
「……夢が、夢じゃなかったの、なら。レイスは、湖の乙女と王様の子供、で……」
ほかに、なにかあっただろうか。考えながらの答えはルウランの納得するものであったらしい。一つ頷いて、ルウランはさらに問いを重ねる。
「精霊の落とし子の意味は?」
「……たし、か。精霊の落とし子は、人間に贈られる祝福の一つ、で。レイスが王様になれば、未曾有の繁栄が約束される」
「ええ。……ああ、本当に。貴方はそこにいたのですね」
「? さっきも、いってたけれど。それは、どういう」
訝しげに問いかけた私に、ルウランは安心させるような微笑を浮かべて、驚愕の事実を告げた。
「私は母が少し特殊な生まれでして。私自身も割りと精霊に近い立ち位置にいます。幼いころは、感性も精霊よりで。だから、貴方の気配を察することが出来ていました」
「えっ」
思わず、変な声を上げてしまう程度には驚いた。私の存在は湖の乙女にしか分からないと思っていたから。ああ、でも。思い返してみるならば。確かに、頷ける場面は、あったかもしれない。
「とはいっても、貴方を感じられたのは私が五歳のころのほんの一時だけですけれど」
「……」
私が、レイスのそばにいられた時間は、改めてみるととても短いのだろう。
その短い中の、ルウランが五歳で、レイスがまだ人の形をしていなかったころは、ほんとうに少ない時間で。だから、ルウランが謙遜する以上に、それは、すごいことだと思った。
「最低限の確認は終わりました。今、レイスがおかれている状況を説明しましょう」
「!」
「ですが、その前に。百聞は一見にしかず、といいますし。こちらへ」
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