【完結】氷の王子様は死ぬ運命?!ー異世界転生したので推しの運命変えてみせますー

久遠れん

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第12話・隣国のお姫様

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 唐突に降ってわいたクーへの縁談に王家も公爵家も大騒ぎになった。

 確かにわたしとクーの婚約発表はまだ正式にされていないので、クーに縁談が来てもおかしくはない。可笑しくはないのだが、ものすごく面白くない。

 しかも求婚をしてきた隣国クラージュの姫君が我が国エクスレムにやってくることになって、出迎えの準備でクーもカークも忙しそうだ。

 全然公爵家に遊びに来てくれなくなった。わたしは黙々と勉強と訓練に打ち込む日々。

 つまらない。とってもつまらない!

 でも、ここで駄々をこねられるような立場じゃないんだよなぁ。

 お父様も忙しそうだし、というかお父様はちょっと嬉しそう。もしかしたらわたしとクーの婚約が白紙になったりするのかな……いやだな……せっかく手に入れた婚約なのに……。

 一人で悶々と考えていると落ち込む時間が増える。今日も家庭教師が帰った後、机に突っ伏して唸っていると、息抜きのお茶を入れてくれたセイラが心配そうに声をかけてきた。

「ライラ様、あまり気を落とさないでください」
「セイラ……」
「大丈夫です! どんな姫君がいらしても、ライラ様のほうがずっと可愛いし、素敵です!!」
「そうかな、そうかなぁ……」
「自信を持ってください! クーリスト様はライラ様にメロメロですよ!!」
「めろめろ……」
「はい!」

 力説してくれるセイラには悪いのだが、個人の魅力うんぬんより隣国の姫君というところがネックなのだ。

 政治的にわたしとの結婚より、隣国との結婚の方が国益になると判断されれば正式発表前の婚約なんてすぐに破棄されるだろう。

 悲しい……ただただ悲しい……隣国の姫君はいったい何を思ってクーに求婚なんてしてきたんだろう……それこそ政治的判断だろうか……。

「あれ? そういえば、わたし隣国の姫君としか聞いてないわ。お名前、なんていったかしら」
「ええと、たしかフレーレ・アスル・クラージュ様だったかと」
「?!」

 げほ、と思わずむせて、セイラに「大丈夫ですか?!」と心配されてしまった。
 わたしは目を白黒させながら、セイラが口にした名前を脳内で反芻する。

 フレーレ・アスル・クラージュといえば、原作ゲームのパーティーメンバーの一人だ。

 回復魔法が得意な後衛キャラで、預言者で聖女でもある女の子。

 神の信託をその身に宿すといわれる数百年に一度生まれるかどうかという稀有な能力持ちで、勇者がエクスレムの出身だということも、預言していたという子だ。

 聖女だけど、神聖な雰囲気は全然なくて、めちゃくちゃ泣き虫な女の子。年は原作ゲームでクーと同い年だから、わたしより一歳年上のはず。

「ま、まって、聖女フレーレさまが婚姻を……?! 彼女、聖女よね?!」

 この世界での聖女の定義はわたしの世界とあまり変わらない。

 神に仕える神聖な立場。処女でないとダメで、結婚や婚約なんてもってのほか。の、はず、なんだけど……?

 わたしが驚きから捲し立てると、セイラはきょとんとした。

「聖女……ですか? そのようなお話は聞いたことがありません」
「えっ?!」

 あ、まってまってまって、聖女の能力が覚醒するの何才だったっけ?! なんかゲーム中にちらっと触れていた気はする。でも思い出せない!!

 カークなら、知っているだろうか。知ってたら、貴方は将来聖女になるから、って婚約を断れたり……しないよなぁ!
 だって今度はそんなことを言い出したこっちが予知能力持ちだと思われてしまう。

 わたしは引きつった笑みでセイラに「ごめんなさい、なにか勘違いしていたみたい。だれにも話さないでね」と念押しをするしかなかった。


 * * *


 結局、成す術なくフレーレが王城にやってくる日がきた。

 わたしは一応公爵家の令嬢なので、お父様にくっついてお目通りすることに成功した。
 まぁ、王様の思惑としては年の近い私を話し相手に、とかそんな感じだろうけど。

 カークやクーには弟王子のキーラグエンの他にも妹姫がいる。ただ、妹姫のケーティミア・エイベル・アスクウィスは御年二歳。年は近いが話し相手はまだ無理なのだった。

 ちなみにケーティミアは王妃様の子供で、しっかり金髪碧眼を受けついだ二歳にして美少女と表現するのがふさわしいかわいい子である。

 まぁ、そんなアレコレは置いておいて、わたしがライラになって初めて入った王城の謁見の間でお父様の横に立って待っていること数十分。

 謁見の間では一番奥で王様が玉座に座っていて、隣の椅子に今回の話の本題であるクーが座っている。さらに隣に王妃様がいて、カークは最前列で涼しい顔をしている。

 いつもならクーが座っている場所は第一王子で王太子でもあるあるカークの場所なのだけれど、今回はメインが違うということだろう。

 騎士がフレーレの到着を告げ、重厚な扉が重々しく開かれた。

 従者と共に謁見の間に入ってきたフレーレは雪のような真っ白な髪を腰まで伸ばし、深海のごとき深い藍色の瞳をしていた。ものすごい美少女である。

 でも、目の色が赤じゃないってことはアルビノってわけじゃないのかな。
 そんなことを考えつつ、じっとしていると、フレーレが足を止める。

「この度は突然のことで驚かせてしまい、申し訳ありません」

 小鳥の鳴き声のような可憐な声が耳に届く。わ、わぁ……声まで美少女だ……見た目もかわいいのに、声までかわいい……ライラの外見スペックもめちゃくちゃ高いけどそれとは別ベクトルの可愛さだ……これ、女のわたしでもわかる。
 守りたくなる可愛さってやつだ……。

「ですが、わたくしはどうしてもクーリスト様と婚約を……結婚をしなければなりません」

 両手を胸の前で組んで、訴えるように告げる美少女。
 お、王様、頼むよ、情に流されないで……! クーの婚約者は正式発表前とはいえ、わたしなんです……!!

 すがるように王様を見上げると、王様は無駄に蓄えた髭を撫でながら「ふむ」と頷いた。
 ふむ、じゃないよ!!

「それは、例の託宣か?」
「はい」

 さすが王様、聖女のことはご存じらしい。フレーレに鈴が転がるような可憐な声で頷かれて、わたしは泣きたくなった。

 前世日本人だったわたしには馴染みが薄いが、この世界の人々は基本的に信心深いのだ。
 神様も天使も悪魔も信じているし、だから勇者や魔王がいる。

 そんな環境で「神様のお告げです」なんていわれたら……。
 わ、わたし、クーの婚約者じゃなくなるの……? クーのこと、こんなに大好きなのに。
 神様が許さないから? そんなの。

「わたしだってゆるさない……」

 ぽつり、考えていた言葉が口からこぼれ落ちた。
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