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三.さよならは言わなかったけど
21.捜し物は何ですか
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今日は終業式だから、昼で学校は終わりだった。
美優も用事で先に帰ったから、時間は十分にある。ひなたの事を捜そうと思う。
昨日のうちに電話局の配布している電話帳は調べてみていた。しかし残念ながら綾瀬という家は見つからなかった。たぶんいたずら防止などで電話帳には載せていないのだろう。そもそも電話帳のサービス自体ももう今は終わっているから、情報としても少々古い。
こうなると考えられるのはしらみ潰しに家を捜していくしかくらいだ。ただいくらこの町が狭いとは言っても、かなりの時間はかかるだろう。
それでもひなたがこの辺りに住んでいるという事だけは間違いないはずだ。
うちの高校の三年生には、綾瀬という名はない。三年生も担当している先生数人に聞いたから間違いないし、そもそも学校が同じであればいくらなんでも四ヶ月の間、全く会わないなんて事はあるはずがなかった。それほど大きな学校ではないし、ひなたのような目立つ容貌をしていればなおさらだ。
学校が近い訳でもないのに、この辺りに普段からいるという事は、家が近所にあるのだと考えられる。ちょうどこのあたりは校区の境目だから、中学校までは別の校区で出会った事がないのは十分に有り得る話だ。
もちろんそれは絶対の保証ではない。それでも僕にとってはそのことにかけるしかない。もしも違うとすれば、もう探すあてがないことになる。
町の地図を広げてみる。昨日のうちにある程度、区域を区切っておいた。校区が違うとして考えれば、ある程度は絞り込めるはずだ。
もちろん引っ越してきたなんて可能性もあるから確実ではないけれど、今は少しでも探す場所を絞り込んでおきたかった。
ひなた捜しの一日目が始まっていく。
まずは公園の近隣から捜し始めていた。田中、佐藤、山口……。表札を一つ一つ眺めていくけれど、残念ながら見つからない。
それでも僕にとって幸いなのは、この小さな町にはマンションのような集合住宅は少ない事だった。小さな古い団地が一つだけあるが、団地であれば、まだ気軽に捜す事も出来る。都会のマンションのようにオートロック等の設備があれば、勝手に入り込む訳にはいかない。
ひとまずは一件、一件、家の表札を眺めていく。しばらく歩いただけで、足が棒のようにだるい。
捜し歩いているうちに、一つの疑問が浮かんでいた。
どうして僕はひなたを捜すんだ。ひなたと会ってどうするんだ。
ずっとひなたからの連絡もなかった。連絡先も消されてしまっている。それならこんな風に捜すのは、ひなたにとって本当は迷惑なんじゃないだろうか。冷静になってみれば、少しストーカーっぽい気もする。
そして仮にみつかったとして、僕はいまさらひなたに何を言うつもりなんだろうか。
もしかしたら拒絶されるかもしれない。
そうした時に僕はどうするのだろうか。
後ろ向きの気持ちが表札を見る度に僕を襲った。それでもその都度、僕は首を振るい続けていく。
ひなたに会いたい。本当の事を知りたい。
その気持ちだけが、僕を突き動かしていた。
他の事なんて考えられなかった。どうしてもひなたに会いたい。そして見つけたかった。
失っていた記憶と想い。
僕が求めているのは、その二つだ。僕はどうして事故にあったのか。その時に僕はどんな気持ちを抱いていたのか。それさえ確かめられたなら、この落ち着かない気持ちも元に戻るはずだ。
僕は失われていた時間を取り戻したい。
次の家の表札を見つめる。
だけど綾瀬という名前の家は、結局一件も見つからなかった。
足の疲れだけを残して、一日目を終えていた。
美優も用事で先に帰ったから、時間は十分にある。ひなたの事を捜そうと思う。
昨日のうちに電話局の配布している電話帳は調べてみていた。しかし残念ながら綾瀬という家は見つからなかった。たぶんいたずら防止などで電話帳には載せていないのだろう。そもそも電話帳のサービス自体ももう今は終わっているから、情報としても少々古い。
こうなると考えられるのはしらみ潰しに家を捜していくしかくらいだ。ただいくらこの町が狭いとは言っても、かなりの時間はかかるだろう。
それでもひなたがこの辺りに住んでいるという事だけは間違いないはずだ。
うちの高校の三年生には、綾瀬という名はない。三年生も担当している先生数人に聞いたから間違いないし、そもそも学校が同じであればいくらなんでも四ヶ月の間、全く会わないなんて事はあるはずがなかった。それほど大きな学校ではないし、ひなたのような目立つ容貌をしていればなおさらだ。
学校が近い訳でもないのに、この辺りに普段からいるという事は、家が近所にあるのだと考えられる。ちょうどこのあたりは校区の境目だから、中学校までは別の校区で出会った事がないのは十分に有り得る話だ。
もちろんそれは絶対の保証ではない。それでも僕にとってはそのことにかけるしかない。もしも違うとすれば、もう探すあてがないことになる。
町の地図を広げてみる。昨日のうちにある程度、区域を区切っておいた。校区が違うとして考えれば、ある程度は絞り込めるはずだ。
もちろん引っ越してきたなんて可能性もあるから確実ではないけれど、今は少しでも探す場所を絞り込んでおきたかった。
ひなた捜しの一日目が始まっていく。
まずは公園の近隣から捜し始めていた。田中、佐藤、山口……。表札を一つ一つ眺めていくけれど、残念ながら見つからない。
それでも僕にとって幸いなのは、この小さな町にはマンションのような集合住宅は少ない事だった。小さな古い団地が一つだけあるが、団地であれば、まだ気軽に捜す事も出来る。都会のマンションのようにオートロック等の設備があれば、勝手に入り込む訳にはいかない。
ひとまずは一件、一件、家の表札を眺めていく。しばらく歩いただけで、足が棒のようにだるい。
捜し歩いているうちに、一つの疑問が浮かんでいた。
どうして僕はひなたを捜すんだ。ひなたと会ってどうするんだ。
ずっとひなたからの連絡もなかった。連絡先も消されてしまっている。それならこんな風に捜すのは、ひなたにとって本当は迷惑なんじゃないだろうか。冷静になってみれば、少しストーカーっぽい気もする。
そして仮にみつかったとして、僕はいまさらひなたに何を言うつもりなんだろうか。
もしかしたら拒絶されるかもしれない。
そうした時に僕はどうするのだろうか。
後ろ向きの気持ちが表札を見る度に僕を襲った。それでもその都度、僕は首を振るい続けていく。
ひなたに会いたい。本当の事を知りたい。
その気持ちだけが、僕を突き動かしていた。
他の事なんて考えられなかった。どうしてもひなたに会いたい。そして見つけたかった。
失っていた記憶と想い。
僕が求めているのは、その二つだ。僕はどうして事故にあったのか。その時に僕はどんな気持ちを抱いていたのか。それさえ確かめられたなら、この落ち着かない気持ちも元に戻るはずだ。
僕は失われていた時間を取り戻したい。
次の家の表札を見つめる。
だけど綾瀬という名前の家は、結局一件も見つからなかった。
足の疲れだけを残して、一日目を終えていた。
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