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シリーズ盤外戦術
盤外戦術その3 未来への展望
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「矢倉ちゃん。地区大会で優勝して、美濃くんに気持ちを告げたらって話をしていたけれど、結局研修会に入るの?」
いちご先輩が私に質問してきていた。
研修会に入る事は女流棋士になるための第一歩だ。他にも特定の棋戦で好成績を収めるなどすれば、女流棋士になることも出来るが、ほとんどがアマチュアだけでなくプロも含めた棋戦であるためそう簡単には勝ち残れない。
「はい。そのつもりです」
「そっかぁ。そうかぁ。がんばってね。応援している」
「ありがとうございます。結果がでるかどうかはわからないですけど、がんばります」
「部活はどうするの?」
「禁止はされていないので参加するつもりです。でも時にはお休みさせてもらう事もあるかもしれません」
「そっか。そっかぁ」
いちご先輩は何か深く感じ入るものがあるのか、大きくうなずいていた。
美濃くんはさっきトイレにいったので今はいない。このことは美濃くんには一番言いにくいなとは思う。
告白して、つきあい初めて。そしてそれと同時に私は研修会に入る。
研修会は月に二回だけだ。従って研修会自体でどうこうはないかもしれない。だけど研修会に入って研鑽を重ねるということは、今までのような将棋の向き合い方ではダメだという事でもある。
今の私の実力でもある程度までは勝ち進めるかもしれない。
うぬぼれと言われるかもしれないけれど、研修会に入ること自体は問題無いと思う。
だけどそこにいるのはプロ予備軍の人達だ。女流棋士を目指している人以外にも、プロ棋士を目指して奨励会に入ろうとしている人達もいる。
私が勝ち進んでいくためには定跡を学び、研究を重ねていく。そうした事が必要になってくるだろう。
毎日、もっと将棋のことだけを考えていかなければならない。
そうしたらデート、できる日限られちゃうな。
ためいきをもらす。
美濃くんと一緒にいる日々は楽しい。もっともっと一緒にいたい。でも美濃くんは例えばプロ棋士を目指そうだなんて気持ちはないだろうし、おそらく普通に趣味としての将棋を楽しんでいくだろう。
女流棋士を目指す私と、ただ将棋を楽しむ美濃くん。
すれ違いにならなければいいな。ふと思う。
でもきっと。きっと美濃くんなら大丈夫。今でも私とかなりの実力差があって、負け続けていても、それでも本当に楽しそうに将棋を指す美濃くん。
彼が隣にいてくれるなら、きっと私もがんばれる。
入る子達はもっと若い頃から研修会に入る。それこそ小学生の頃には私も入るように言われていた。
私は遅いスタートになる。たぶんそれは不利なことなのだろう。
だけど美濃くんがそばにいてくれるなら。きっと私は、大丈夫。
心の中にきめて、私は新しい一歩を踏み出していく。
この日の決断が、悪い方向に進みませんように。
「矢倉ちゃん。ボクは矢倉ちゃんを尊敬しているよ。君が願う形に進めるように、ボクは祈っているね」
いちご先輩の励ましを胸に、私は未来へと進んでいく。
いちご先輩が私に質問してきていた。
研修会に入る事は女流棋士になるための第一歩だ。他にも特定の棋戦で好成績を収めるなどすれば、女流棋士になることも出来るが、ほとんどがアマチュアだけでなくプロも含めた棋戦であるためそう簡単には勝ち残れない。
「はい。そのつもりです」
「そっかぁ。そうかぁ。がんばってね。応援している」
「ありがとうございます。結果がでるかどうかはわからないですけど、がんばります」
「部活はどうするの?」
「禁止はされていないので参加するつもりです。でも時にはお休みさせてもらう事もあるかもしれません」
「そっか。そっかぁ」
いちご先輩は何か深く感じ入るものがあるのか、大きくうなずいていた。
美濃くんはさっきトイレにいったので今はいない。このことは美濃くんには一番言いにくいなとは思う。
告白して、つきあい初めて。そしてそれと同時に私は研修会に入る。
研修会は月に二回だけだ。従って研修会自体でどうこうはないかもしれない。だけど研修会に入って研鑽を重ねるということは、今までのような将棋の向き合い方ではダメだという事でもある。
今の私の実力でもある程度までは勝ち進めるかもしれない。
うぬぼれと言われるかもしれないけれど、研修会に入ること自体は問題無いと思う。
だけどそこにいるのはプロ予備軍の人達だ。女流棋士を目指している人以外にも、プロ棋士を目指して奨励会に入ろうとしている人達もいる。
私が勝ち進んでいくためには定跡を学び、研究を重ねていく。そうした事が必要になってくるだろう。
毎日、もっと将棋のことだけを考えていかなければならない。
そうしたらデート、できる日限られちゃうな。
ためいきをもらす。
美濃くんと一緒にいる日々は楽しい。もっともっと一緒にいたい。でも美濃くんは例えばプロ棋士を目指そうだなんて気持ちはないだろうし、おそらく普通に趣味としての将棋を楽しんでいくだろう。
女流棋士を目指す私と、ただ将棋を楽しむ美濃くん。
すれ違いにならなければいいな。ふと思う。
でもきっと。きっと美濃くんなら大丈夫。今でも私とかなりの実力差があって、負け続けていても、それでも本当に楽しそうに将棋を指す美濃くん。
彼が隣にいてくれるなら、きっと私もがんばれる。
入る子達はもっと若い頃から研修会に入る。それこそ小学生の頃には私も入るように言われていた。
私は遅いスタートになる。たぶんそれは不利なことなのだろう。
だけど美濃くんがそばにいてくれるなら。きっと私は、大丈夫。
心の中にきめて、私は新しい一歩を踏み出していく。
この日の決断が、悪い方向に進みませんように。
「矢倉ちゃん。ボクは矢倉ちゃんを尊敬しているよ。君が願う形に進めるように、ボクは祈っているね」
いちご先輩の励ましを胸に、私は未来へと進んでいく。
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