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四.最後の夏とうそつきの麦わら
30.春の終わり夏の始まり
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「おはようございます。謙人さん」
目覚めと共にありすの声が響いた。
いつの間にか僕は眠ってしまっていたようだった。そしてしっかりと布団の上で眠っていた。変な見得を切っただけにどことなく恥ずかしい。
ありすはいつの間にかまた着替えを済ましているようで、再びあの白い着物に変わっていた。
ありすは一人で着付けも出来るんだと妙なところに感心してしまう。
それからスマホの時計をみると朝の四時になろうとするところだ。まだ朝はかなり早い。
「そろそろ迎えが来ますよ。起きてくださいね」
「あ、うん」
ありすの言葉にぼうっとした頭のまま答える。
「これで春渡しは終了なの?」
「そうですね。最後に迎えの問答に答えれば終わりです。春が帰り夏に変わります」
ありすの言葉とほぼ時を同じくして、障子の前に影が出来る。
『春よ、春よ。季節は巡り、神代に帰られましたか」
その向こう側から声が響く。どこかできいた女性の声だ。
「はい。春はそろそろ神代へと帰りとうございます」
ありすがその声に儀式らしく応える。
『承知いたした。それでは私がお見送りいたしましょう』
言いながら障子が開く。その向こう側には巫女服をきたあかねの姿があった。
いや、これは反則だろう。どことは言わないが、ものすごく強調されている。どことは言わないが。紅い袴の上に巨大なものが。
これは、大きい。こずえの時はそこまで気にならなかったけれど、あかねは反則だと思う。全く予想していなかっただけに、そのインパクトたるや桁違いだ。
と、そこまで思ったところでジト目でありすが僕を睨んでいるのがわかった。
「……謙人さん、やっぱりおっぱい星人です。そんなにあかねちゃんがいいんですかー」
「い、いや違うからね!?」
違わないかもしれないけど、とりあえず否定しておく。
だってしょうがないじゃないか。この大きさはどうしても目が釘付けになってしまうって。
「ふふ。謙人くん。あんまり有子ちゃんを泣かせたらだめだよ」
あかねは伸ばした指先を僕の鼻の上にちょんとのせる。
それから少しだけ意地悪な笑みを浮かべていた。
「わーっ。有子じゃなくて、ありす。ありすって呼んでよぅ」
「あら、そうだったわね」
ありすのいつものやりとりではあったが、やはりあかねは大して気にしていないようだ。
続いてありすを呼ぶ名前も変わらなかった。
「じゃ、有子ちゃんいこうか。あ、謙人くん、しばらく有子ちゃんは借りていくね。愛しい彼女がいなくて寂しいだろうけど、我慢するように」
あかねはそう言いながら、片目をつむってみせる。
「いや、その。そんなことは」
「あら。彼氏じゃありません、とは言わないの? 昨日は言っていたと思ったんだけどな」
くすくす笑いながらあかねは告げる。
ああ、もう。どう答えればいいんだ。別に彼氏になったという訳では無いけど、キスまでしておいてそうでないというのもはばかられる。
僕はあんまり嘘が得意じゃないし、答えに詰まる。
「ふふ。何があったのかは。あとで有子ちゃんにきいておくわね」
ウインクしながらあかねはここから離れていく。
その背中に向けて「有子じゃなくて、ありす。ありすって呼んでよぅ」と再び懇願しているありすの声が聞こえてきていた。
『あ、謙人くんはもう帰っちゃっていいからねー。もう何もないから。眠かったら有子ちゃんのおうちで眠ってね』
離れた場所からあかねの声が響いてくる。
『有子って呼ばないで。ありす、ありすって呼んでよぅ』
同時にありすの声が響く。何一つ変わらずにいるありすが可愛いと思う。
春渡しはこれで本当に終わりのようだった。
そして二人がいなくなると、あたりは完全に静寂に包まれていた。
いや正確にはすでに蝉の鳴き声が響いていた。朝早いというのにご苦労な事だなと思う。
しかし外はもう白み初めており、暗闇の中というほどでもない。このくらいなら懐中電灯がなくてもありすの家にはたどり着けそうだ。
僕は一人、ありすの家へと帰っていく。
目覚めと共にありすの声が響いた。
いつの間にか僕は眠ってしまっていたようだった。そしてしっかりと布団の上で眠っていた。変な見得を切っただけにどことなく恥ずかしい。
ありすはいつの間にかまた着替えを済ましているようで、再びあの白い着物に変わっていた。
ありすは一人で着付けも出来るんだと妙なところに感心してしまう。
それからスマホの時計をみると朝の四時になろうとするところだ。まだ朝はかなり早い。
「そろそろ迎えが来ますよ。起きてくださいね」
「あ、うん」
ありすの言葉にぼうっとした頭のまま答える。
「これで春渡しは終了なの?」
「そうですね。最後に迎えの問答に答えれば終わりです。春が帰り夏に変わります」
ありすの言葉とほぼ時を同じくして、障子の前に影が出来る。
『春よ、春よ。季節は巡り、神代に帰られましたか」
その向こう側から声が響く。どこかできいた女性の声だ。
「はい。春はそろそろ神代へと帰りとうございます」
ありすがその声に儀式らしく応える。
『承知いたした。それでは私がお見送りいたしましょう』
言いながら障子が開く。その向こう側には巫女服をきたあかねの姿があった。
いや、これは反則だろう。どことは言わないが、ものすごく強調されている。どことは言わないが。紅い袴の上に巨大なものが。
これは、大きい。こずえの時はそこまで気にならなかったけれど、あかねは反則だと思う。全く予想していなかっただけに、そのインパクトたるや桁違いだ。
と、そこまで思ったところでジト目でありすが僕を睨んでいるのがわかった。
「……謙人さん、やっぱりおっぱい星人です。そんなにあかねちゃんがいいんですかー」
「い、いや違うからね!?」
違わないかもしれないけど、とりあえず否定しておく。
だってしょうがないじゃないか。この大きさはどうしても目が釘付けになってしまうって。
「ふふ。謙人くん。あんまり有子ちゃんを泣かせたらだめだよ」
あかねは伸ばした指先を僕の鼻の上にちょんとのせる。
それから少しだけ意地悪な笑みを浮かべていた。
「わーっ。有子じゃなくて、ありす。ありすって呼んでよぅ」
「あら、そうだったわね」
ありすのいつものやりとりではあったが、やはりあかねは大して気にしていないようだ。
続いてありすを呼ぶ名前も変わらなかった。
「じゃ、有子ちゃんいこうか。あ、謙人くん、しばらく有子ちゃんは借りていくね。愛しい彼女がいなくて寂しいだろうけど、我慢するように」
あかねはそう言いながら、片目をつむってみせる。
「いや、その。そんなことは」
「あら。彼氏じゃありません、とは言わないの? 昨日は言っていたと思ったんだけどな」
くすくす笑いながらあかねは告げる。
ああ、もう。どう答えればいいんだ。別に彼氏になったという訳では無いけど、キスまでしておいてそうでないというのもはばかられる。
僕はあんまり嘘が得意じゃないし、答えに詰まる。
「ふふ。何があったのかは。あとで有子ちゃんにきいておくわね」
ウインクしながらあかねはここから離れていく。
その背中に向けて「有子じゃなくて、ありす。ありすって呼んでよぅ」と再び懇願しているありすの声が聞こえてきていた。
『あ、謙人くんはもう帰っちゃっていいからねー。もう何もないから。眠かったら有子ちゃんのおうちで眠ってね』
離れた場所からあかねの声が響いてくる。
『有子って呼ばないで。ありす、ありすって呼んでよぅ』
同時にありすの声が響く。何一つ変わらずにいるありすが可愛いと思う。
春渡しはこれで本当に終わりのようだった。
そして二人がいなくなると、あたりは完全に静寂に包まれていた。
いや正確にはすでに蝉の鳴き声が響いていた。朝早いというのにご苦労な事だなと思う。
しかし外はもう白み初めており、暗闇の中というほどでもない。このくらいなら懐中電灯がなくてもありすの家にはたどり着けそうだ。
僕は一人、ありすの家へと帰っていく。
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