社内捜査は秘密と恋の二人三脚

花里 美佐

文字の大きさ
35 / 56
第四章 新天地

吸収合併ー1

しおりを挟む
 

 翌週月曜日。驚くべき事が起きた。

 あれから財団の社長が辞任し、一時的に会長が代わりを務めていた。だが、不祥事があったというのが噂になり、財団の仕事が難しくなってきたというのだ。会長が皆を集めて話をした。

「この財団の仕事は氷室商事の文化事業ですが、一時的に財団を閉鎖して本体である氷室商事の傘下へ戻ることとなりました。以前は氷室商事の文化部という部署があり、それが独立してここになったのです」

 皆、ざわざわし出した。

「静かに。会社が潰れるわけではありません。ただ、規模を縮小してやり直す必要があるとの上の判断です。そのため、氷室商事のほうへ戻ります。希望者は全員連れて行きますが、本社はここから少し離れています。通いきれないなど色々問題のある人や、早期退職希望も募ります」

「それから、営業部以外の事務方の人達は本社の方へ吸収されますので、異動もあるかと思います。覚悟の上で来て下さい。二週間お時間を差し上げますので、上司経由で希望を提出して下さい。以上」

 フロアへ戻ると神部君がひっくり返っていた。

「ったく、何なんだよ!俺の異動はどうなるんだ?」

「異動は決定でしょ。本社へ行っても営業になるんじゃない?私達は本社の会計部に全員入れるわけないから、きっと異動になるわね」

「やだ、先輩。怖いこと言わないで……」

 佐倉さんが腕にしがみついた。

「ほら、ダメじゃないの。チーフのあなたがそんなんじゃ、後輩ちゃん達がびくついてるわよ。安心させるのがあなたの役目でしょ」

「そんなの無理です」

 会計部長からも話があり、会計部の8割が異動になるとのこと。ただ、システムは似ているし、出来ないことないはずだと慰めてくれた。

 部長は間違いなく異動だそうだ。鈴村さんが言っていたのが本当だとすると、部長は元からあちらの人。元のところに戻るんだろう。

「部長」

 部屋に戻った部長を訪ねた。

「どうした?北村さん」

「部長は元から本社の人なんですよね?鈴村さんから少し伺ったんですけど……」

 びっくりしたような顔をした部長が私を見た。

「その通り。今回のことも僕が連絡して調査に入った。だが、もう少し早く報告すべきだったな。こんなことになってしまって責任を感じているよ」

「そんな……まさか、畑中専務が関わっているとは思っていませんでしたよね?」

「いや。わざとスルーしていた書類に専務が判を押した段階でクロだと思ったね。だから、鈴村君に入ってもらったんだ。ただ、結構前からだったんだよ。遅すぎた。君も彼の担当だったし、ショックだったろう。悪かったね」

 頭を下げてくれた。

「やめて下さい、部長は悪くありません。あの。お聞きしたいことがあります。ここにいる人達は営業事務やそのほかの部署に行く可能性もあるということですか?」

「そうだね。佐倉さん達女性陣は事務職だからそうなると思う。会計部にはおそらくほとんど行くことはないだろう。うちの営業部の営業事務になる可能性もあるが、現段階ではその営業事務の人がどのくらい辞めるか予想がつかない」

「……わかりました。皆にはそのように伝えます」

 部長はうなずいた。そして、私に言った。

「実質、君が佐倉さんの指導員だったんだから今のチーフだ。みんなをよくまとめてほしい。あと、迷っている人を引き留めなくていい。おそらくは思うようにはならない。覚悟も必要だ」

「わかりました」

「……北村さん。君はね、君こそ全く違う部署になる可能性がある。もしかすると僕と同じ所になるかもしれない」

「部長と同じ所?そこって、まさか……」

「そうだね。まだわからないけれど、君なら何でもできるだろう。斉藤さんも有望だ」

「……斉藤さんはわかりますけど、私は何もしてません」

「嫌なのかい?」

「出来れば、数字を見ている方がいいです」

「あはは。君は根っからの数字オタクだったからね。でも最近は秘書をやっていたりして、会計の仕事とは大分距離があっただろ」

「……やっと戻れると思ったのに、ショックです」

「ここだけの話にしておいてくれ。君がどこへ配属になるかはまだ未定だよ。楽しみにしているといい」

「……失礼します」

 頭を下げて出てきた。今は専務のいたところに部長がいるのだ。部長室になってしまった。そして、部長は実は本社の人だということが噂になっていて、皆怖がっている。

 だからこそ、私が先に入って話を聞いたのだ。そうすればみんな安心するかもしれないと思ったからだ。

「……先輩、どうでした?」

 わらわらと女子社員たちが私の周りに集まってきた。

「うん。そうね……ほとんどの人が本社の会計部には入れないらしい。入るとするとこの財団が異動したところの営業事務とか。ただ、うちの営業事務の人がどのくらい辞めるかにもよるそうよ。迷うくらいなら早期退職して構わないとおっしゃってた」

「「えー!」」

「冷たいようだけど、あまり自分の希望に合った部署へは行かれない可能性が高い。みんなならいくらでもやっていけると思うけど、その覚悟は必要だから、そういう意味よ。バラバラになっても同じ会社だし、会おうと思えば会えるんだから、それくらいの気構えで行きましょう」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

憧れのお姉さんは淫らな家庭教師

馬衣蜜柑
恋愛
友達の恋バナに胸を躍らせる教え子・萌音。そんな彼女を、美咲は優しく「大人の身体」へと作り替えていく。「ねえ萌音ちゃん、お友達よりも……気持ちよくしてあげる」眼鏡の家庭教師が教えるのは、教科書には載っていない「女同士」の極上の溶け合い方。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

友達婚~5年もあいつに片想い~

日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は 同僚の大樹に5年も片想いしている 5年前にした 「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」 梨衣は今30歳 その約束を大樹は覚えているのか

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

処理中です...