社内捜査は秘密と恋の二人三脚

花里 美佐

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第四章 新天地

吸収合併ー2

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「北村さんはどうするんですか?」

 若い二年目の女子社員が私に聞いた。

「私?私は本社へ行く。今更どうにもならないし、覚悟していきます。一緒に行く気がある人は頑張ろうね!」

 ガッツポーズをしてみんなにウインク。皆、ほっとした顔をした。良かった。それぞれ席に戻っていった。

「さすがだな、里沙。お前、管理職向きだよな。めそめそしてないし、男っぽい。本社で女性管理職目指せよ」

 悟が私を見ながら言った。

「……管理職?興味ない。まあ、部下なんて今だっているようなものだし、責任伴わないから今の方がいい。偉くなったりしたら、みんなから距離が出来ちゃう」

「部長はお前を評価してるし、そうなる気がするな。俺がお前の上司だったら絶対推薦する」

「……やめてよ」

「異動後が楽しみだな」

「悟、人のこと言っていられるの?心配じゃないの?」

「は?俺としては本社の営業になれるなら、万々歳だよ。辞める奴の気がしれない。あっちのほうが入るの難しい会社なんだからラッキーだよ」

 なるほど。そう言われてみればそうかもしれない。ポジティブシンキングの代表選手みたいな人。そういうところは私が好きなところだった。

「お前と同じ部署になれるといいけど、まあ、無理だろうな」

「どうかしらね?」

 夜、彼にメールで事の次第を連絡した。彼のことだから大分前から知っていたかもしれないけれど……。するとしばらくして電話がかかってきた。

「里沙。今回のことは言い方が悪いかもしれないけれど、俺にとっては良かったよ。同じ会社になれるからお前と毎日会えるようになる」

「あなたが実は本社のすごいエリートだと知られたら大変よ。会計部の人だって思っている人がまだ多い。噂になるんじゃない?」

「どうせ、ばれてるんだろ、一部の奴には……」

「そうだけど、一般の人は知らないでしょ。そういう人達が噂大好きなのよ」

「どうだっていいよ。俺は俺だ」

 賢人もある意味ポジティブシンキング。というか、オレ様仕様なのよね。最近わかってきた。

「ね、会計部長ってあなたの部署だったの?」

「俺の部署というよりは、文也のところの人というほうが正しいかもな」

「え?」

「まあ、表向きは普通の仕事をしているが、何かあれば潜入したりする要員だ」

「じゃあ、戻るところはどこなの?」

「さあね。知らない」

「また、秘密?」

「いや、本当に知らない。君らの会社のことだけじゃなく、こちらの機構改正も一緒に行われる。本社自体が大きく変わるんだ」

「ふーん」

「里沙は全然慌ててないんだな。たいしたもんだ」

 部長に言われたことは黙っていよう。もし、本当にそうなら彼から話が先にあるはずだ。話がないなら違うということだろう。

「縁談はどうなったの?」

「里沙がこちらに来るなら、社長に紹介してお前と付き合うと言う。それが一番だと腹をくくった」

「ええ?!行った早々、社長から嫌われるようなことしたくない」

「何言ってんだよ。その代わり、社長に言うとなれば結婚前提だからな。そうだ、里沙の実家のことは何も聞いてなかったな。というか、俺も何にも話してないけど……」

 おかしくて吹き出してしまった。

「賢人って実はこういうこと直感勝負なのね。何も考えてないでしょ?順番ぐちゃぐちゃよ。私達、最初もぐちゃぐちゃだったけど、今もそうなの?落ち着いて話し合いましょう、結婚は飛びすぎだわ」

「里沙が俺から離れないと約束するなら、落ち着いて話し合う。そうじゃなかったら、今すぐ婚姻届を書いてもらう。まだ出さないけど、約束手形だな」

「もう、いい加減にして……落ち着いて。それで今度いつ会えそう?」

「いつでもいいよ。これからお前の部屋へ行こうか?」

 どうしたのよ、どこか変。こんな人だったっけ?

「もう、ふざけないで!」

「ふざけてないよ。俺はいつでもお前優先なの。それだけわかっていればいいよ。後は里沙の覚悟次第ってところだな。会社が一緒になるタイミングで同棲しよう」

「あなたのところに?私、あなたがどこに住んでるのかも知らないのに?」

「そうだな。今度片付けるから一度ご招待しよう。出来れば縁談を片付けてからにしたいけれどな」

「はー。だから、順番がよくわかんない……何からしたいの?優先順位が全くわかりません」

「俺もよくわかんねえ。お前を囲い込みたいことだけはわかってる。面倒な縁談がなくなるのを待ってるけれど、里沙がこっちへ来るのが先ならチャンスだ。やり方を変えるのも悪くない」

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