脳内お花畑から帰還したダメ王子の不器用な愛し方

伊織愁

文字の大きさ
7 / 38

7話

しおりを挟む
 六つの棟を繋いで六角形の形で建てられたアルカンジェリ城、左中央の政務棟の五階にある王太子の執務室には、マウリツィオのご機嫌な声が響いていた。

 「二人が仲直り出来そうで良かったよ」

 終始笑顔のマウリツィオがご機嫌で言う。

 「マウリツィオ殿下は、これで良かったのですか?」

 自身の執務机に肘を置き、組んだ手の上に顎を乗せて笑うマウリツィオに、目の前にいる侍従は問いかける様な表情を向けてきた。

 マウリツィオは即答した。

 「勿論だよ。確かに私は彼女を気に入っているし、他の令嬢より好ましく思っているのだろう。だが、私は彼女よりも、ファブリツィオを愛しているんだよ。ああ、勿論、兄弟としてだよ。もう一人の弟、オラツィオのことも愛している」

 マウリツィオは弟愛が激しく、語り出すと止まらない。侍従はマウリツィオが大好きな弟の為に、ヴァレリアを諦めたのかと、少なからず思っていたのだ。

 「あの幼いファブリツィオが頑張って彼女を射止めたんだよ。やっぱり仲良くやって欲しいじゃないか。兄としては、頑張って乗り越えて欲しいんだ」

 マウリツィオの想いを聞き、侍従は頬を緩ませた。しかし、懸念される事がある。

 殿下、分かっておられますか?弟愛の深い殿下の婚姻が遠のいておられることを!陛下も王妃様もご心配されていますよ! ファブリツィオ殿下の恋の行方より、ご自身の未来の妃の事を心配なさって下さい!

 ◇

 翌日からアドルフォとサヴェリオは、生徒会室に来なくなった。ストライキで自身の意見を主張をしたい様だ。ファブリツィオは執務室で溜め息を吐いた。

 もう直ぐ実力テストもある。王子として恥ずかしくない成績を収めないといけない。

 あいつらの事ばっかり、構ってられないんだけどな。俺の仕事は生徒会の仕事だけじゃないんだ。

 「一週間、様子を見てからあいつらの処分を考えるか」
 「そうですね。それがいいでしょう」

 ピエトロが同意すると、ヴァレリオが眉尻を下げた。

 「私はあの二人からそんなに嫌われているんでしょうか?お二人とは、初対面だと思うのですが」
 「ヴァレリオの事ではなくて、クローチェ伯爵令嬢を生徒会から出したからな。まぁ、ヴァレリオの事も少なくとも邪魔な人間だと思っているだろうけどな」
 「そうだったんですね。私を邪魔だと思われているのは、それは姉上の事があるからですか?」
 「ヴァレリアの事もあるけど、クローチェ伯爵令嬢が……ヴァレリオ、お前の事を気に入ったみたいだからだ。で、今以上彼女の周囲に男を侍らせたくないと思ったんだろう」

 ヴァレリオはなんとも言えない表情を浮かべた。

 「私はクローチェ伯爵令嬢には興味ありませんし、痴情のもつれに巻き込まれるなんて、迷惑なだけですね」
 「まぁな、同情するよ」

 ヴァレリアは今、王宮へ使いに行ってもらっている。彼女が居ては、彼らの話は出来ない。

 「ありがとうございます」

 ヴァレリオは苦笑を零した。

 「数日後にある実力テスト、期待しているぞ。アイツらが度肝を抜く成績を取ってくれ」
 「殿下の期待に添える様、出来る限り頑張ります」

 ヴァレリオが当てがわれた自身の机に戻ると、ピエトロからまたミッションを与えられた。

 まだ、前のミッションである観劇デートに誘えていないんだが……?

 ピエトロから出されたミッションは。

 「ストラーネオ侯爵令嬢を新入生歓迎会でエスコートする事です。一緒に過ごせば、観劇デートに誘えるチャンスもあるでしょう」
 「……っ、また、難問を!」
 「難問ではないですよ。ご令嬢は、殿下の婚約者なんですから、婚約者をエスコートするのは当然です」
 「……分かっている。ちゃんとヴァレリアをパートナーとして誘う」
 「何のお話ですか?今、私の名前が出たみたいですが……」
 「ヴァレリア……戻ってたのか」
 「はい、ただいま戻りました」
 
 話に夢中になっていて、気づかなかった。分かってる、ちゃんと誘うから、そんな目で見るな、ピエトロ!

 ピエトロがファブリツィオの視界に入る位置に下がりながら立ち、『ちゃんと誘って下さい』と視線だけで訴えてきた。

 ファブリツィオは咳払いをしてから、ヴァレリアに向き合った。

 「あの、さ。新入生歓迎会なんだが、ヴァレリアが私と行ってくれ」

 なんか、ちょっと変な文になった……。

 ファブリツィオは照れくささもあり、目を合わせずに誘った。

 「無理をなさらなくてもいいですよ?」
 「無理はしていない。俺は……だ」

 最後の言葉はゴニョゴニョと言ってしまい、言葉にならなかったが、ヴァレリアからは了承の返事が返ってきた。

 顔を上げると、照れくさそうなヴァレリアの顔があり、更に顔に熱が上がった。

 ◇

 新学期が始まって一週間、明日は実力テストがあり、テストの後は新入生歓迎会がある。カーティアは学園を終え、寮の自室に戻っていた。最近、カーティアの周辺が変わりつつあった。カーティアの思い通りに行かず、苛立ちを隠せないでいた。

 殿下、どうして……。

 カーティアは数日前にファブリツィオから、生徒会のメンバーから外された。

 殿下の様子がおかしい事は気づいていたが、まさか生徒会メンバーから外されるとは思っていなかった。

 生徒会での、少し前の話。

 「殿下!どうしてカーティアを生徒会から外すのです!」
 「そうだ、カーティアは今まで頑張ってきたじゃないか!殿下はカーティアのこと、好きなんじゃなかったのか?!」

 アドルフォとサヴェリオが同時に叫び、不協和音で何を言っているのか、分からなかった。しかし、二人の言いたいことは分かった。特にサヴェリオの言い分だ。

 深く眉間に皺を寄せ、二人が黙ったところで、ファブリツィオは口を開いた。

 「これは決定事項だ。今期に入った新人がとても優秀で、一人で三人分の仕事をする。クローチェ伯爵令嬢に振る仕事がないんだ。それと、サヴェリオ、前にも言ったが、お前は生徒会じゃなくて、実行委員だろう。生徒会のことに口を出すな」

 サヴェリオが力任せに生徒会長の机に、両拳を振り降ろして叩きつけた。生徒会室に大きな騒音が響き渡った。サヴェリオの顔が怒りで歪んでいる。

 「実行委員も生徒会の一部だ!!」

 ……執務室じゃなくて、生徒会室で話して良かった。ヴァレリアが居たら絶対にトラウマを引き起こしてた!

 祖父の事があって以来、ヴァレリアは大きな騒音や物音、怒鳴り声や暴力を目の当たりにすると、祖父を思い出して身体の震えが止まらなくなる。

 サヴェリオも短慮ではあったが、騎士の家系に生まれた者だ。暴力的ではなかったはずだ。彼女に恋したからか、元から持っていたのか……諍いがあった時の為に、抑止力が効くサヴェリオを実行委員に推薦したが……実行委員にも手を入れないと駄目か。

 不安気な表情でファブリツィオを見つめてくるカーティアに視線を送り、一つの提案をした。

 「クローチェ伯爵令嬢、一つ提案なんだが」
 「は、はい」

 カーティアには珍しく、歪んだ笑みを浮かべた。ファブリツィオがファミリーネームで呼んだからだろう。アドルフォとサヴェリオは、驚きの表情を浮かべている。 

 彼らの心情を無視して話を続ける。

 「君は実行委員の方でサヴェリオを支えてくれないか?」
 「えっ……」
 「殿下!」
 「……カーティアが実行委員に来るのか、それは」

 歓迎の声を上げそうになったサヴェリオをアドルフォが鋭く睨み付ける。アドルフォに睨みつけられたサヴェリオは、何とも言えない顔をして押し黙った。

 「殿下、カーティアは生徒会の人間です!こんな横暴は許されません!カーティアだって、生徒会で活躍する事を望んでいます」
 「そ、そうだ」
 「……っ」

 もしかしたら、カーティアが実行委員に来るかも知れないと思っているのか、サヴェリオの反対の声が弱くなっている。

 サヴェリオ……気持ちが透けて見えてるぞ。

 「アドルフォ、お前も人の心配をしている暇はないぞ。ジェンマ子爵子息は、副会長ができるくらい優秀だぞ」
 「な、田舎の子爵家に、私が負けるわけない!」
 「そうか、なら頑張るんだな。クローチェ伯爵令嬢」
 「はい」
 「君が頑張ってくれていた事は知っている。今、直ぐとは言わない。考えてみてくれ」
 「はい」

 そして、是非、これ以上色恋で生徒会を掻き回さないで欲しい。

 「あの、殿下」
 「なんだ?」
 「新入生歓迎会のパートナーの事なんですけど……」
 「あぁ、ダンスパートナーか」
 「はい、もし宜しければ、」

 カーティアは頬を染めて俯き加減でファブリツィオを見つめてきた。カーティアのあざとい仕草に、内心で小さく息を吐いた。

 「クローチェ伯爵令嬢、私は婚約者と行く。君はフリーの誰かと行きなさい」

 目の前でアドルフォが鼻で笑った様な気するが、気のせいか?!どうせ今まで蔑ろにしてたクセにって思っているんだろが、お前も人のこと、言えないからな!!

 「そうですか、残念です」

 淑女のフリをしているからか、しつこく誘われなくて良かった。

 「じゃ、カーティア、私がエスコートしよう」

 いや、アドルフォ、お前も婚約者がいるだろうが。いや、もういいか。

 サヴェリオも参加して、どっちがカーティアをエスコートするか競い合っている。

 溜め息を吐いたファブリツィオは、公務があるから、と言ったが誰も聞いていなかった。一人、遠巻きに見ていたフラヴィオと視線が合った。

 「殿下、僕も必要ない感じ?」
 「いや、ヴァレリオを手伝ってくれたら助かる」
 「了承しました。僕も執務室に招待してもらえるのかな?」
 「ああ、今から行くが……フラヴィオは公務の書類を見るのも、触るのも駄目だからな。執務室で一人になるのも禁止する」

 『あれ?』と笑顔で疑問符を浮かべているフラヴィオを半眼で見つめる。

 「もしかして、全然、信用されてない?」
 「女たらしのフラヴィオは、ヴァレリアに近づく事を禁止する。ピエトロが見張っているからな」
 「うわぁ、本当に信用されてない!じゃ、僕は何の為に誘われたのっ?」
 「コマ使いに何かと便利だからだ」
 「殿下が鬼畜!」

 カーティアが気づいた時には、ファブリツィオとフラヴィオは、生徒会室にいなかった。まさか連れ立って執務室へ行ったとは思っていなかった。

 「ダンスパートナーは婚約者に取られるし、踏んだり蹴ったりだわ。でも、貞淑な令嬢を演じてるから、あまりしつこくは出来ないし……何で、今更、婚約者を大事にしているのよ!私を一番に考えなさいよ!」

 二人部屋の共同居間のソファーで寝転び、ジタバタと手足を動かした。

 もう既に、淑女の仮面は剥がされているのだが、カーティアは全く気づいていなかった。

 「そうだわ、明日の実力テストで私の優秀さを見せつければ、殿下の考えも変わるかも知れないわ」

 居間の扉付近で、メイド服を着て立っているアリーチェが物言いた気にカーティアを見つめていた。

 ◇

 翌日の実力テストは無事に終了し、成績表の結果は貼り出す事はせず、各個人に渡される。新入生歓迎会の準備を終え、正装をし、ファブリツィオは学園寮のカフェテリアの入り口前で、ヴァレリアを待っていた。 

 ちょっと早く来過ぎたか?久しぶりにヴァレリアをエスコートするから、緊張するな。

 一人でカフェテリアの入り口でいるファブリツィオを見かけた生徒たちは、カーティアを待っているんだろうと思っていた。

 知り合いを見掛け、手を挙げて挨拶をかわす。皆、楽しそうにカフェテリアへ入って行く。

 暫く待っていると、ドレスを着たヴァレリアがやって来た。本当はドレスを贈りたかったが、時間が無くて断念した。

 しかし、ヴァレリアは一人では来なかった。左右にトロヴァート姉弟を連れていた。彼らは揃えて驚きの声を上げた。

 「「本当に殿下がいる!」」
 「まぁ、本当にヴァレリアをエスコートしてくださるのね。今日一番の驚きの出来事ですわ」
 「本当だったんだ、疑ってごめんね、ヴァレリア。僕も今日一で驚いた」
 「だから、言ったでしょう、大丈夫だって」
 「そうね。私が悪かったわ。変な事、言って」
 「うん、そうだね」
 「「じゃ、ヴァレリアをよろしくお願いします。殿下」」
 「あ、ああ、大丈夫だ。任せくれ」

 双子の息のあった掛け合いに、ファブリツィオはたじろぎながら頷いた。

 彼らは姉弟でエスコートする様で、フィオレラはフリオの腕を取り、二人でカフェテリアへ入っていった。

 目の前まで来たヴァレリアはとても綺麗だった。次は絶対に自身の色を着てもらおと、強く思った。

 「殿下、お待たせして申し訳ありません」
 「いや、大丈夫だ。それと」
 「はい?」

 綺麗だって言うだけだ、噛むなよ、俺!

 「ド、ドレス、似合ってる」

 視線を合わせて褒めるのは、気恥ずかしく、直前で目線を逸らしてしまった。

 耳まで赤くなっていた様で、ヴァレリアも俯いた。ヴァレリアから消え入りそうな声が吐き出された。

 「……ありがとうございます。殿下も素敵です」

 物凄く、小っ恥ずかしい。

 ヴァレリアに腕を差し出し、そっと細い手がファブリツィオの腕に触れる。

 二人が並んでカフェテリアへ入って行くのを見た生徒たちは、驚いた顔をして二人の背中を見つめていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです

鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。 理由は―― 「王太子妃には華が必要だから」。 新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。 誰もが思った。 傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。 けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。 「戻りません」 彼女は怒らない。 争わない。 復讐もしない。 ただ――王家を支えるのをやめただけ。 流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。 さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。 強いざまあとは、叫ぶことではない。 自らの選択で、自らの立場を削らせること。 そして彼女は最後まで戻らない。 支えない。 奪わない。 ――選ばれなかったのではない。 彼女が、選ばなかったのだ。 これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。

処理中です...