リア充するにもほどがある!? 生徒会から始まる、みずほ先輩の下僕ライフ365日

秋月 一成

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【第二話 みずほ先輩は女優さんに怒られる】

【2-7】

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 ゴールデンウィークをまたいだ後の、平日の放課後。

 みずほ先輩と俺は広報誌の編集作業を終え、ふたりで帰路についていた。

 休日を使ってしばらく先の原稿まで仕上げられたから、気持ちにも余裕が生まれていた。

「この前の出来事、広報誌で特集にしたら四回分くらい稼げちゃったよ」
「いやー、ことなきを得たどころか、ネタは満載でしたし、記念写真はもらえましたし、大金星でしたね」
「ほんとねー、もしかしてかつき君って幸運を運んで来たりするひと?」
「そうだったらどんなに胸張って生きていたか、計り知れないっす。残念ですけどね」

 沈みゆく夕日は帰り道をオレンジに染め上げ、俺たちの影を遠くまで描いている。

 俺を見上げるみずほ先輩の顔がやわらかに色づいている。

「あのふたり、その後もめたりしてないですかね」
「わたしは大丈夫だと思うなぁ」

 みずほ先輩は確信のあるような顔をして、あごをくいっと上げた。

 コンビニの前を通るとき、ふと、とあるスポーツ新聞の見出しに気をひかれた。

 知る芸能人の名前があったから、目に留まったのだ。

 何の気なしにふらりと近づいて読んだ俺は驚いた。

『桜木淳と鈴音美沙、熱愛発覚! 事務所公認!』

「みずほ先輩、これ見てくださいよ!」
「なになに?」

 みずほ先輩はそばに来て新聞の見出しに目を向け、あっと声をあげた。

「かつき君、まさかあのふたり……」
「うわぁ、俺たちひょっとしてキューピッドだったんっすかね」
「世の中誰と誰がくっつくかわからないわよねー」
「ほんとっすね。でも桜木さんが相手なら、あの勝ち気な女優さんだって、飼い猫みたいになっちゃうんじゃないすか」
「うんうん、絶対甘えると思う!」

 話しながら歩いていると、みずほ先輩がふと足を止めた。

 気づいて振り返る。逆光の中に上品な笑顔が浮かぶ。髪は風になびき、ゆるやかに揺れていた。

「あのとき、ほんとにかっこよかった」

 華奢な首を少しだけ傾けて、ささやくような声でそう言った。

「そうっすね、さすが俳優さんっす」
「ううん、違うよ。――きみのことだってば」
「おっ、俺っすか⁉」

 一瞬びっくりしたが、鈴音さんに正々堂々と謝ったことだと思い直す。でも俺は下僕としてみずほ先輩をかばっただけ。ただのヘコヘコマシーンだ、かっこよくなんてない。

 みずほ先輩は吐息のような声で尋ねてくる。

「ところできみ、ドラマみたいな高校生活してみたくない?」

 なるほど、みずほ先輩はドタバタ劇がご所望なのか。

 確かにあの一日で、俺はみずほ先輩に潜む混沌の匂いを嗅ぎ取った。

 けれど波風が立つくらいのほうが、きっと面白い。このひとについていれば退屈なんてしないはずだ。

 それに、桜木さんのような誠意という魔法を、俺だって一度は唱えてみたい。

「ドラマみたい、っすか。――いいっすよ、いくらでもみずほ先輩とお付き合いしますって!」
「えっ、えっ⁉ それって、つまりそういうことだよね?」

 頬を紅色に染めて驚き、うれしそうな顔をした。そんな顔されちゃ、腹をくくってお供するしかないっしょ。

「はい、そうっす。生徒会はやりがいありそうだし、なにせ俺フリー(ひまの意)だし」

 その瞬間、みずほ先輩はくるりと背中を向けガッツポーズをとった。

 どうやら下僕確保を喜んでいらっしゃるようだ。

 まあ、取材で美味しいものにありつけるし、悪い気は全然しない。

「じゃあかつき君は、今日から正式にわたしのパートナーよ。末永くよろしくね!」
「えっ、いままではお試しだったんすか⁉」
「あたりまえじゃない、でもきみがどんなひとかもわかったし、なにより本心が聞けたから文句なしよ!」

 ということで今日から俺は正式な生徒会員、らしい。

 パートナーというのは体裁で、つまり内心では確固たる『下僕』に認定したという意味だろう。

 みずほ先輩は軽やかなステップで駆けてゆく。俺はみずほ先輩を小走りで追いかける。

 けれどそんな生徒会活動のはじまりが、人生最大の勘違いをはらんでいたなんて、そのときの俺は気づくはずもなかった。

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