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【第五話 みずほ先輩の壮絶な生徒会長選挙】
【5-1】
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今日は、生徒会で重要な打ち合わせの予定がある。だから、授業が終わるやいなや急いで生徒会室に向かった。
「お待たせしましたー! ――って、あれ?」
ところが生徒会室に生徒の姿はなかった。清川瑞穂――みずほ先輩は、早めに待っていると言っていたはずなのに。
空虚な生徒会室内をうろうろと歩く。
ふと、気づいたことがある。みずほ先輩のペン立てにあった魚肉ソーセージが数本、減っていたのだ。昨日、帰る前にはこんもりと盛られていたのに。
ということは、すでに来ているはずなのだ。
「みずほ先輩、どこっすかー!」
返事はない。けれど校舎の外では草木の音が騒がしい。
窓を開けて見回すと、茂みの中にかがみ込むセーラー服の背中姿が見えた。丸くなった背中につややかな髪が流れている。
間違いない、みずほ先輩の後ろ姿だ。
「あー、ここにいたんですね。何してるんすか」
みずほ先輩は、はっと驚いて振り向いた。気まずそうな表情を浮かべている。手には剥いた魚肉ソーセージが握られていた。
「かつき君、あなたは何も見てません!」
座ったまま上半身だけ反転させこちらを見た。ごまかすように手をふりふりする。明らかに様子がおかしい、何かを隠しているようだ。
そのとき、みずほ先輩の足元の雑草がガサリと音を立てた。
「ニャー!」
猫の鳴き声だ。子猫が二匹、みずほ先輩のスカート脇から顔をのぞかせる。黒と茶色の子猫で、不思議そうな顔で俺を見上げている。
子猫特有のくりっとした瞳が可愛らしい。
「あっ、猫がいたんですね」
「たっ、たまたま見かけただけよ!」
「別に隠すことないじゃないっすか。動物好きに悪い人はいないって言うし」
辺りを見回すと、少し離れたところにおとなの三毛猫がいた。たぶん母猫なのだろう。俺と目が合うと「フーッ!」と露骨に威嚇してきた。
その様子を見た子猫も揃って俺に牙を見せる。この警戒心の高さは野良猫に違いない。
だが、みずほ先輩にだけは懐いている。それはつまり――。
「さては野良猫に餌やってたんすね」
「やってませんっ!」
この街は条例で野良猫への餌付けが禁止されている。だからみずほ先輩の行為は条例違反だ。
「でも、手にブツを持ってますよね」
「こっ、これはわたし専用のおやつですっ!」
そう言って立ち上がり、魚肉ソーセージを一気に口の中に押し込んだ。二匹の子猫はぎょっと目を見開き、世界が終わるような顔。まさに生き証人である。
「猫は自分のだと思ってたみたいっすよ。それにストックがあったから常習犯なんすね」
「魚肉ソーセージはマイブームなのよ!」
「別に誰にも言いませんから、心配しないでください」
上履きのまま勢いをつけて窓を飛び越える。茂みの中に着地した。三匹の猫は同時に数歩、身を引いて振り向いた。
緊張感をみなぎらせ、「あたいらの縄張りに入ってくんなよ!」と言いたげだ。
けれど今日は猫にかまっていられない。重要な要件があるのだ。
「だいたいみずほ先輩、猫と遊んでる暇ないっしょ。学校の未来は先輩が握っているんですからね」
「そんなこと、わかってるってば!」
そう、みずほ先輩は生徒会が推薦する、新生徒会長候補なのである。
今度、開催される生徒会長選挙に向けての、作戦会議が組まれていたのだ。
城西高等学校では、秋が訪れると生徒会長選挙が開かれる。
会長の決定とともに生徒会の主要メンバーは世代交代となり、下級生へバトンタッチされるのだ。
そして俺、黒澤克樹は選挙の後援組として奔走中である。
先日、誰が次期生徒会長になるべきか、皆で話し合いをしたところだ。
「お待たせしましたー! ――って、あれ?」
ところが生徒会室に生徒の姿はなかった。清川瑞穂――みずほ先輩は、早めに待っていると言っていたはずなのに。
空虚な生徒会室内をうろうろと歩く。
ふと、気づいたことがある。みずほ先輩のペン立てにあった魚肉ソーセージが数本、減っていたのだ。昨日、帰る前にはこんもりと盛られていたのに。
ということは、すでに来ているはずなのだ。
「みずほ先輩、どこっすかー!」
返事はない。けれど校舎の外では草木の音が騒がしい。
窓を開けて見回すと、茂みの中にかがみ込むセーラー服の背中姿が見えた。丸くなった背中につややかな髪が流れている。
間違いない、みずほ先輩の後ろ姿だ。
「あー、ここにいたんですね。何してるんすか」
みずほ先輩は、はっと驚いて振り向いた。気まずそうな表情を浮かべている。手には剥いた魚肉ソーセージが握られていた。
「かつき君、あなたは何も見てません!」
座ったまま上半身だけ反転させこちらを見た。ごまかすように手をふりふりする。明らかに様子がおかしい、何かを隠しているようだ。
そのとき、みずほ先輩の足元の雑草がガサリと音を立てた。
「ニャー!」
猫の鳴き声だ。子猫が二匹、みずほ先輩のスカート脇から顔をのぞかせる。黒と茶色の子猫で、不思議そうな顔で俺を見上げている。
子猫特有のくりっとした瞳が可愛らしい。
「あっ、猫がいたんですね」
「たっ、たまたま見かけただけよ!」
「別に隠すことないじゃないっすか。動物好きに悪い人はいないって言うし」
辺りを見回すと、少し離れたところにおとなの三毛猫がいた。たぶん母猫なのだろう。俺と目が合うと「フーッ!」と露骨に威嚇してきた。
その様子を見た子猫も揃って俺に牙を見せる。この警戒心の高さは野良猫に違いない。
だが、みずほ先輩にだけは懐いている。それはつまり――。
「さては野良猫に餌やってたんすね」
「やってませんっ!」
この街は条例で野良猫への餌付けが禁止されている。だからみずほ先輩の行為は条例違反だ。
「でも、手にブツを持ってますよね」
「こっ、これはわたし専用のおやつですっ!」
そう言って立ち上がり、魚肉ソーセージを一気に口の中に押し込んだ。二匹の子猫はぎょっと目を見開き、世界が終わるような顔。まさに生き証人である。
「猫は自分のだと思ってたみたいっすよ。それにストックがあったから常習犯なんすね」
「魚肉ソーセージはマイブームなのよ!」
「別に誰にも言いませんから、心配しないでください」
上履きのまま勢いをつけて窓を飛び越える。茂みの中に着地した。三匹の猫は同時に数歩、身を引いて振り向いた。
緊張感をみなぎらせ、「あたいらの縄張りに入ってくんなよ!」と言いたげだ。
けれど今日は猫にかまっていられない。重要な要件があるのだ。
「だいたいみずほ先輩、猫と遊んでる暇ないっしょ。学校の未来は先輩が握っているんですからね」
「そんなこと、わかってるってば!」
そう、みずほ先輩は生徒会が推薦する、新生徒会長候補なのである。
今度、開催される生徒会長選挙に向けての、作戦会議が組まれていたのだ。
城西高等学校では、秋が訪れると生徒会長選挙が開かれる。
会長の決定とともに生徒会の主要メンバーは世代交代となり、下級生へバトンタッチされるのだ。
そして俺、黒澤克樹は選挙の後援組として奔走中である。
先日、誰が次期生徒会長になるべきか、皆で話し合いをしたところだ。
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