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【第五話 みずほ先輩の壮絶な生徒会長選挙】
【5-3】
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★
「はっはっはっ、そういうことだったか。まさかお前らがホンモノの猫のことを言ってたなんてな」
「っていうか、『ニャンニャン』はさすがに死語っすよ。高校生で使っているひとが実在するってことが驚きっす」
※「にゃんにゃん」とは大人の男女の行為をコミカルに表現した隠語である。X~Y世代には通用するが、Z世代にはなじみがなく、会話の中で意味を理解できる者はきわめて少ない。
「以前から思っていたんですけど、宇和野先輩ってすごく大人に感じます」
「みずほ先輩、言い換えればオヤジっぽいっていうことですよね」
「かつき君、せっかく言い換えたのをもとに戻さない!」
「あっ、やっぱり!」
「ぐっ、瑞穂……! まさか僕のことをそんなふうに思っていたなんて……」
宇和野先輩はみずほ先輩の繰り出すひそかなディスりに打ちのめされている。
「とっ、とにかく選挙が終わるまでは、不利になる行動は控えろよ。ところでマニフェストは決まったのか?」
演説のさいには公約を掲げるのが本校のならわしで、その内容が選挙の結果に大きく影響するらしい。
「そのことなんですけれど、いろいろ考えたんです。それで、わたしは校則の改正をマニフェストにしたいと思っているんです」
「こっ、校則を、っすか⁉」
なんと、伝統ある校則に手をつけるつもりだなんて。下手をすれば教師の反感を買うかもしれないっていうのに。
「だって、みんなの幸せを奪う理不尽な校則は撤廃しないといけませんから」
「なっ、なんすか、その『みんなの幸せを奪う理不尽な校則』って!」
「時代にそぐわない疑問点が多々あるわ。たとえば――」
みずほ先輩はカバンから学校のしおりを取り出し、あるページを開いてぴしゃりと机に叩きつける。
「なんなのよ、この『不純異性交遊は禁止』ってのは!」
みずほ先輩は古典的な一文にひどくおかんむりだ。
だがその記載、確かに疑問を抱かずにはいられない。
「ああ、ジェンダー問題ってやつっすね」
昨今、性別によって扱いに差をつけることは御法度とされている。生徒は男女関係なく「さん」付けで呼ばれるようになった。こだわりのない俺でさえ、「黒澤さん」という呼ばれ方には馴染めていない。一方、みずほ先輩が俺を呼ぶ「かつき君」は響きがいい。
「交遊するのが異性だって限定してるところが時代にそぐわない、ってことっすね」
「かつき君、そこじゃないわよ!」
「ひゃいっ⁉」
強い口調に背筋がしゃんとなる。そこじゃないとすると、どういうことか。
そこで宇和野先輩が助け船を出した。
「瑞穂は『不純』ってものの定義が曖昧だってことを言いたいんだろう」
「そうよ。どんなに純粋な気持ちの交遊であっても、まわりは面白がって不純なことをしてると解釈するに決まってる! この時代、不純な憶測が SNS で拡散して、恋人のふたりが簡単に傷つけられるのよ! 恋愛ひとつで校則違反だの退学だのと騒ぎ立てるひともいるはず! こんなんじゃ、おちおち恋愛なんてできっこないわよ! そうよね、かつき君!」
「た、確かにそうっすよね……」
しかし今、なぜ俺に同意を求めた⁉
「けど俺、現状では困ってないっすから」
「なに言っているのよかつき君。青春時代は戻らない砂時計よ、時間を無駄にはできないわ!」
いや、時間を無駄にって……。みずほ先輩はこの高校の中に意中のひとがいるというのか⁉
疑問ばかりが脳内に渦巻く。そこで宇和野先輩が意味ありげに口角を上げて尋ねる。
「瑞穂、さてはニャンニャンしたいお年頃なのか?」
それ、あけすけに聞いちゃっていいのか⁉ 下手をすればセクハラ発言だ。
ところがみずほ先輩はすかさず高速の切り返しを繰り出す。
「宇和野先輩、猫に罪はありません! あの子たちとわたしは純粋異種族交遊です!」
「ぐっ……!」
おお、みずほ先輩すごい防御力だ! 話題を猫に引き戻して宇和野先輩の口を封殺したァ――!
どうやら会話術は、宇和野先輩よりもみずほ先輩のほうが一枚上手のようだ。
「はっはっはっ、そういうことだったか。まさかお前らがホンモノの猫のことを言ってたなんてな」
「っていうか、『ニャンニャン』はさすがに死語っすよ。高校生で使っているひとが実在するってことが驚きっす」
※「にゃんにゃん」とは大人の男女の行為をコミカルに表現した隠語である。X~Y世代には通用するが、Z世代にはなじみがなく、会話の中で意味を理解できる者はきわめて少ない。
「以前から思っていたんですけど、宇和野先輩ってすごく大人に感じます」
「みずほ先輩、言い換えればオヤジっぽいっていうことですよね」
「かつき君、せっかく言い換えたのをもとに戻さない!」
「あっ、やっぱり!」
「ぐっ、瑞穂……! まさか僕のことをそんなふうに思っていたなんて……」
宇和野先輩はみずほ先輩の繰り出すひそかなディスりに打ちのめされている。
「とっ、とにかく選挙が終わるまでは、不利になる行動は控えろよ。ところでマニフェストは決まったのか?」
演説のさいには公約を掲げるのが本校のならわしで、その内容が選挙の結果に大きく影響するらしい。
「そのことなんですけれど、いろいろ考えたんです。それで、わたしは校則の改正をマニフェストにしたいと思っているんです」
「こっ、校則を、っすか⁉」
なんと、伝統ある校則に手をつけるつもりだなんて。下手をすれば教師の反感を買うかもしれないっていうのに。
「だって、みんなの幸せを奪う理不尽な校則は撤廃しないといけませんから」
「なっ、なんすか、その『みんなの幸せを奪う理不尽な校則』って!」
「時代にそぐわない疑問点が多々あるわ。たとえば――」
みずほ先輩はカバンから学校のしおりを取り出し、あるページを開いてぴしゃりと机に叩きつける。
「なんなのよ、この『不純異性交遊は禁止』ってのは!」
みずほ先輩は古典的な一文にひどくおかんむりだ。
だがその記載、確かに疑問を抱かずにはいられない。
「ああ、ジェンダー問題ってやつっすね」
昨今、性別によって扱いに差をつけることは御法度とされている。生徒は男女関係なく「さん」付けで呼ばれるようになった。こだわりのない俺でさえ、「黒澤さん」という呼ばれ方には馴染めていない。一方、みずほ先輩が俺を呼ぶ「かつき君」は響きがいい。
「交遊するのが異性だって限定してるところが時代にそぐわない、ってことっすね」
「かつき君、そこじゃないわよ!」
「ひゃいっ⁉」
強い口調に背筋がしゃんとなる。そこじゃないとすると、どういうことか。
そこで宇和野先輩が助け船を出した。
「瑞穂は『不純』ってものの定義が曖昧だってことを言いたいんだろう」
「そうよ。どんなに純粋な気持ちの交遊であっても、まわりは面白がって不純なことをしてると解釈するに決まってる! この時代、不純な憶測が SNS で拡散して、恋人のふたりが簡単に傷つけられるのよ! 恋愛ひとつで校則違反だの退学だのと騒ぎ立てるひともいるはず! こんなんじゃ、おちおち恋愛なんてできっこないわよ! そうよね、かつき君!」
「た、確かにそうっすよね……」
しかし今、なぜ俺に同意を求めた⁉
「けど俺、現状では困ってないっすから」
「なに言っているのよかつき君。青春時代は戻らない砂時計よ、時間を無駄にはできないわ!」
いや、時間を無駄にって……。みずほ先輩はこの高校の中に意中のひとがいるというのか⁉
疑問ばかりが脳内に渦巻く。そこで宇和野先輩が意味ありげに口角を上げて尋ねる。
「瑞穂、さてはニャンニャンしたいお年頃なのか?」
それ、あけすけに聞いちゃっていいのか⁉ 下手をすればセクハラ発言だ。
ところがみずほ先輩はすかさず高速の切り返しを繰り出す。
「宇和野先輩、猫に罪はありません! あの子たちとわたしは純粋異種族交遊です!」
「ぐっ……!」
おお、みずほ先輩すごい防御力だ! 話題を猫に引き戻して宇和野先輩の口を封殺したァ――!
どうやら会話術は、宇和野先輩よりもみずほ先輩のほうが一枚上手のようだ。
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