リア充するにもほどがある!? 生徒会から始まる、みずほ先輩の下僕ライフ365日

秋月 一成

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【第五話 みずほ先輩の壮絶な生徒会長選挙】

【5ー7】

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「宇和野先輩、今までお疲れ様でした」

 宇和野先輩はこれで会長としてのお役は御免となる。皆はうやうやしく宇和野先輩にねぎらいの言葉をかける。

「僕のほうこそ、これで安堵しかないよ」

 最後に俺とみずほ先輩のそばに近寄って来て、皆に背中を向ける。

「瑞穂、これからの生徒会、よろしく頼むな。まあ、引退してもできることは手伝うがな」
「頑張ります、ですから安心して見守っていてください」
「それから黒澤、瑞穂のこと、よろしく頼むな」
「もっ、もちろんです。任せてください!」

 ううっ、後輩の心配をするなんて、宇和野先輩はやっぱり素晴らしい人格者だ。

「だが、生徒会は皆の規範であるべきだ。校則撤廃しても、けっしてニャンニャンすることのないように」
「「するわけありませんっ‼」」

 ふたりで同時に否定すると、宇和野先輩はにやりと奇妙な笑みを浮かべた。

 なぜだろうか、宇和野先輩は最後までオヤジっぽさにこだわり続ける男だった。



 こうして生徒会は余計なメンバーの参入なく、平穏に継続できることとなった。

 安堵して解散になった後、みずほ先輩と俺は内緒で合流する。人目を忍び、ふたりでこっそりと茂みに潜り込む。

 猫たちも俺たちの後についてきた。

 茂みの奥にはこんもりと土が盛られている場所があって、盛り土の頂には割り箸が立てられている。

 みずほ先輩は憂いた表情でその前にしゃがみ込み、そっと両手を合わせる。瞳がうっすらと揺らいでいた。俺も隣に腰を据える。

 野良猫に餌付けをした理由を、俺だけはみずほ先輩から聞かされていた。

 ――子猫の死体を見つけたの。おかあさんとおなじ模様だったよ。

 ――栄養失調だと思うの。みんな痩せていたんだ。

 ――だから見捨てておけなかったんだもん。

 みずほ先輩が、命の危機に瀕した猫たちを無下にできるはずがない。

 どんな生き物にだって手を差し伸べてしまう、そんな優しいひとだ。

「でも、みずほ先輩が猫好きなのは間違いないっすよねぇ~」
「なんでそう思うの? ――はっ、さては見たわね!」

 実は救出の際、パンツにプリントされた猫と目が合ってしまったのだ。

「見えちゃいました。可愛かったです。みずほ先輩のおしり」
「ばかっ!」

 不可抗力なのに、背中を一発ひっぱたかれた。強烈な一撃だが、下僕はこの程度ではめげっこない。俺はやんわりと尋ねる。

「だけど、どうして生徒会長になるのを了承したんですか。みずほ先輩って、あんまり人前に出たがるひとじゃないと思ったんですけど」

 みずほ先輩は少しだけ考えてから、くすりときれいな笑みを浮かべる。

「正直ね、生徒会長の座をきみに橋渡ししたいと思ったからなんだよ」
「まさか、俺を来年の生徒会長に⁉」

 下僕の俺に白羽の矢を立てるとは思ってもいなかった。

「だってきみは、誰かのために全力を尽くせるひとだから。いつも誠心誠意、わたしを支えてくれるでしょ?」

 そう思われるのは照れくさいが正直、嬉しい。けれど誰かのためではなく、みずほ先輩だから、という気持ちが俺の中にはあった。

「それにわたし、かつき君より先にいなくなっちゃうから」
「あ――そりゃあ、そうっすよね」

 あたりまえのように返事をしたが、心の中にすっと冷たい風が吹き抜ける。

 高校生活のうちの、たった二年間。いや、もっと短いかもしれない。

 ただ、偶然に重なるこの時間が、とても貴重な宝物のように思えた。

「だから先に生徒会長になって、わたしの背中を見せたかったんだ――」

 確かに俺はそのうち、みずほ先輩のいない高校生活を送らなければいけないのだ。

 返す言葉が見つからなかった。かわりにごまかすように答える。

「どっちかと言えば、今度は背中よりもその反対側が見たいっす」
「ばかっ! エッチ!」

 みずほ先輩が怒鳴ると猫も三匹、同時に俺を威嚇した。

「「「フーッ!」」」
「ちょっと待てよお前たち。俺は恩人じゃなかったのか?」 

 みずほ先輩はその様子にあははと笑う。子どもみたいな、まじりっけのない笑顔だ。

 その表情を眺めながら、俺は少しだけ疼く胸をだますように、なんとなく笑い返した。
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