リア充するにもほどがある!? 生徒会から始まる、みずほ先輩の下僕ライフ365日

秋月 一成

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【第七話 みずほ先輩と美術部の不思議な絵】

【7-2】

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「これが例の『ひとが消えた絵』かぁ」

 目の前に掲げられているのは、部員全員が横並びに描かれた絵。

 題名は『絆』と記されている。

 夜空を見上げる背中姿で、正確には誰が誰だかわからない。けれど、雰囲気と立つ位置で誰を示しているか、なんとなく察しがつく。

 しかし部員は十一人いたはずなのに、絵には十人しか描かれていない。中央にはひとりぶんの空間があり、虚空な背景に描き換えられていた。

 向かって左隣には美人オーラを漂わせる長髪の女子、右隣には小柄なふわくしゅの髪の女子が描かれている。

「もともとはここに部長の村本先輩がいたんすね」
「そうだったはずよ。でも、この絵を鑑賞してかつき君はどう思ったかな」
「俺は幽霊のしわざかと思います」
「なんで⁉」
「だって、そう思えるくらい、人物像がすっぽり抜けていますから。背景がしっかり描かれていて、いたずらにしてはきれいすぎる消えかたっすよね」
「ああ、かつき君もその点に気付いたのね。幽霊のしわざかどうかは別として」
「やったとすれば相当テクニシャンな幽霊かと」
「なんで嫌がらせとかは考えないわけ? ――まぁ、性善説はきみのいいとこなんだけどね」
「みずほ先輩は現実主義っすね。けど、うまく消すなら美術部の誰かがやったんじゃないっすか」
「うーん……」

 みずほ先輩は絵を見つめ思案する。

 宇和野先輩が空白の左側の人物を指して言う。

「ちなみに僕が思うに、これは鮎川だろうな」
「知ってるひとっすか⁉」
「ああ、僕のクラスメイトだ。はかなげな雰囲気がうまく描けている」

 宇和野先輩によると、それは引退する三年生である、鮎川晴美先輩らしい。

 ちなみに美術部に所属していた三年生は、そのふたりだけとのことだ。

「そうなると右側の小柄な女の子は誰っすかね」

 みずほ先輩は閃いたようで、ぴんと人差し指を立てて言う。

「わたし、川和結奈かわゆいなちゃんじゃないかと思うんだけど」
「あっ、確かにそうかもしれないっす!」

 川和結奈という子は美術部に所属している俺のクラスメイト。ところが最近、美術部を辞めるから生徒会に入会したいと俺に伝えてきた。そんな経緯があり、先日、みずほ先輩にも引き合わせたところだ。

 結奈が活動の場として生徒会を選んだのは、校内で絶大な人気を誇るみずほ先輩に憧れているから、とのことだった。

 選挙の演説のインパクトが大きかったのだろう。ただ、美術部を辞める理由については明言しなかった。

「もしかすると、美術部で揉めごとがあったのかも。それで居場所がなくなって、生徒会に入会したいって相談しに来たとか?」
「なるほど、そういう可能性もありますね。結奈に直接、聞いてみようと思います」
「だけど、気まずいことを話してくれるほど、仲がいい関係なの?」
「その点はだいじょうぶっす、何かカフェで奢れば話してくれるんじゃないっすか。だから俺、学校帰りに結奈を誘ってふたりきりで聞いてみますよ」
「ちょ、ちょっと待って! わたしも行く!」

 みずほ先輩は突然あわてだした。

「いや、別に来なくていいっすよ。先輩忙しいっしょ」
「ふたりきりなんて、だめ、ぜったい! ……あっ、いや、聞き込みは女子のわたしがいたほうがいいでしょ」
「俺ひとりで十分っす。クラスメイトだし」
「刑事だってたいてい、ふたりで尋問するじゃない」
「尋問って人聞き悪いっすね。ドラマで見るような口の割らせ方なんて、するわけないじゃないっすか」

 みずほ先輩はどうしても俺についてくるつもりらしい。そこまで気を遣わなくたっていいのに。

「とにかくこの黒沢克樹、任務はまっとうしますから頼りにしてください!」
「たっ……頼りになんかできないから言ってるのよっ! っていうか心配なのよ、いろんな意味でっ!」
「みずほ先輩、言い草が究極的にひでえ!」
「ひどくなんかないわ! この鈍感男子!」

 みずほ先輩は顔を赤らめて支離滅裂だ。ときどきこんなふうになるから厄介である。

 そんなみずほ先輩の様子を宇和野先輩は面白そうに見ていた。俺は救いを求める。

「宇和野先輩、みずほ先輩が俺のことをディスるんですけどっ!」

 すると宇和野先輩は俺の肩に手を乗せ、さわやかに微笑んだ。

「いや、全面的にお前が悪い。このバカイケメンが!」
「なんでっ⁉」

 どうしてこうも変わり者に恵まれたのだろうか。俺の疑問はいまだ解決しないままでいる。

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