嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐

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私、帝国領で暴れます!

私、ギリギリでした!

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 早速金色のコインを召喚しまして、いざ投下! チーン! クルクル パシッ!

 さあ、結果は如何に? どきどきっ! わくわくっ!


 …………これ、表裏ないですね。

 金貨、使えねーですね。
 はぁ。仕方ないので殺しておきますか。不愉快ですし。

 血が飛び散らないように調整をし終わったので、早速一人ずつ狙い撃とうとしたところで、声が掛かりました。何かを察したんですかね? 女を肉〈ぴー〉器としか思わない変態ド畜生のくせに、妙に勘だけはいいんですね。

 チッ。

あばばっべぼびび待ってほしい
「……はい? 何言ってんのか分かりませんけど? 話すならちゃんと話してください。ぶち殺しますよ?」

 もう既に私の中では、目の前にいる野郎どもは、王国のゴミカスどもと同じ立ち位置なのです。話を聞いてあげるだけ、優しいと思ってほしいですね。私の器量の大きさに咽び泣け!

 ちなみに、完全なるセレスティアさんの誤解である。寒さで震えている皆さんの方は、言われずとも咽び泣きたい気持ちでいっぱいだ。

(護衛として)雇われないか、と問えば急にブチキレ始めて、凍らされる。そして、殺されそうになっている!

 天の声さん的には、皆さん方は泣いていいと思います。そして、以前セレスティアさんに「雇われないかね?」と問いかけた、どこぞの侯爵様を怨んでもいいと思います。タコ殴りにしてしまいましょう。

「……喋らないんですか? じゃあ死ね」

 ヒュゥゥゥゥ パリンッ

 私が更に温度を下げると、吹雪がより一層強さを増し、芯まで凍てついた変態野郎の腕が、ガラスのような音を立てながら砕けました。

 ……最初からこうしていれば良かったですね。後は私の胸ですやすやと寝ている弟子をでながら、氷像が出来るのを待つだけです。

 なんなら、このまま立ち去ってやってもいいですけど、それだと多分、ここら辺(超局所的な一部分)が、ずーっと吹雪いている、なんて事態になりかねませんからね。仕方が無いので、完全に死ぬまでは見ていてやりますよ。感謝しなさいクソども。

っでぼじびってほしい……、ばなじぶぉぎびべ聞いて

 チッ。うるせーですね。クズならクズらしく、さっさと死ねよ。クソが。

ごばごかっ!」
「は? ごばびば? 何言ってんの? お前。ちゃんと喋れよ」

 ただでさえ王国のクズどもを彷彿とさせられて不愉快だと言うのに、理解をの全てをこちらに投げつけてくるような言葉。本当に最低な気分になります。

 セレスティアさんは当然誤解をしているわけであるが、苛立ちが頂点付近まで上っており、大切な要素をスッカリと忘れてしまっていた。

 それは、寒いと口もガクガク震えて、マトモに喋れなくなる、という事だ。

 そんな当たり前の事が抜け落ちている為、『嫌がらせ』として、『あえて』難解な言葉を使っている、と思っているのである。そしてそれがまた、セレスティアさんの苛立ちを加速させているのであるが……。

 自分の誤解から他人さんを凍て付かせ、自分の誤解故に苛立ち、自分の抜けのせいで他人さんを苦しめている。

 これだけ見れば、セレスティアさんが悪魔の様な女に思えてしまうが、勿論そんな事は無い。
 不幸だったのは、王国にはそういう事をする人間が実在した、という事だろう。全くもって迷惑な話である。

「ご、ごかひ、なんは!」
「ごかひ……? なんは? ……ごかい……、なんは? ……誤解?」

 英雄、ここに誕生である。彼はよく頑張った。
 震える口を必死に抑えつけて、後ろから聞こえてくるピキパキという、仲間たちが割れていく音に絶望せず、とにかく口を動かして、しっかりとセレスティアさんに伝えた。

 それのお陰で、仲間たちは救われーー

「なにが? は? 主語抜くなよ。バカなの?」

 ーーそうになかった。

 絶賛ブチキレ(ガチのマジver.)中のセレスティアさんに、察してやるなどと言う文化は無かった。悲しいことである。

 しかしそこで、救世主が現れた!

「んみゅぅ……」

 セレスティアさんの胸元で、弟子が呻いたのである!
 それにより、ガチガチのマジマジ&ブチキレファイヤーだったセレスティアさんの意識が、全て弟子に注がれる!

「あっ、弟子。よしよし。弟子は偉い子ですね。とっても可愛いですよ。ちゅっ」

 弟子の呻き声一つで、怒りゲージは全て失われた。それどころか、機嫌は既にプラスの域にまで達している。
 すると、どうなるか。

「はっ!」

 そう。理性さえ戻ってしまえば、抜け落ちていた常識も戻り、また、察してあげるという文化も帰ってくる。

「……ぎりぎり、間に合いそう、です……?」

 私は気付きました。なぜ彼が、あんなに酷い言葉を使っていたのか。そして、"何が"誤解なのかに。

 そう、彼が誤解だと言ったのは、「雇われないか」に対する私の解釈。彼はきっと、「護衛として雇われないか」と言ったのです……ッ!

 そして、マトモな言葉を発する事が出来ていなかったのも、当たり前なのです! 寒いのだから!

「せ、《癒しの天光セイクリッド・ターンライト》っ!!!」

 暖かな光の波動が拡がっていき、凍てついた彼らの体を溶かしていきます。そして同時に、パキッと割れてしまった腕や足なども再生していきます。

 多分死人は出ていない……はず。い、一応、本気では無かったわけですし……。

 少し不安気にしながら見ていると、まず最初に、喋りかけてきた人が起き上がりました。そして続々と鎧の人が起き上がってきます。

 ちゃんと癒えたはずですけど、皆さん、体をガタガタ震わせています。

「も、申し訳ありません……。か、勘違いを、その、してしまいまして……」

 ギルティ! 重大な過失である。裁判になったら負け確定です!

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エール感謝2本目!
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