嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐

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私、帝国領で暴れます!

私、感謝します!

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 シルベスターさんたちが話し合いを始めたので、私は商人さんたちとお話する事にします。そちらを目を向けると、未だに呆然としている商人さんたちと目が会いました。

 皆さん口をポカンと開けて、ビックリしている様子です。そんな長いこと驚いていなくてもいいのでは……? と思わなくもないですが、まあ、元とは言え、聖女ですからね。私。しかも、大変にお下品な事を言っていたーーと言うか、聞かれていますし。

 それでイジってくるようなら、無言で記憶を削除(物理)させていただきますが、未だに皆さんはそういう事をしてきてはいないので、一応セーフです。聞かれた時点でアウトかもしれませんが。

 まあそれはさておき、です。

「商人さん、先にオークション行っちゃいましょう。そろそろ、そのトカーードラゴンも邪魔ですしね」

 弱いくせして、図体だけは無駄にデカいんですよね、このトカゲって。そんなんだから、数が少ないんじゃないですかね? 図体が大きいとパワーは上がりますけど、その分的になりやすいですからね。
 もう少し最適化した方が、種としての生存率は上がりそうですよね。

 ほんと、残念な生物ですよね。

 ……言うまでもないが、ドラゴンとは最強種である。数が少ないのは、千年に一度から二度程度しか卵を産まないからだ。絶対的な質を担保された最強種故、数を当てる必要がないのだ。

 当然セレスティアさんは、そんな事などまーったく知らない。彼女のドラゴンに対する認識など、『お肉もまずいし、弱いし、可哀想な生物ですよね』である。

 本当に報われない。

 ちなみにセレスティアさんは、美食家(自称)である。串焼きに感動した彼女は、美味しいものに目がないのだ。
 セレスティアさんがドラゴン肉を口にした時、ドラゴンさんはどうなってしまうのか。……ぜひともドラゴンさんには、全速力で逃げてもらいたいところである。

「……皇子殿下の方はいいのーーいや、いいんですか……?」
「まあ、準備をするのも時間はかかりますしね。あ、喋り方は普通でいいですよ! 私はそっちのほうが嬉しいです」

 王国の人たちみたいに、「おい!」とか、「聖女!」とかって雑に扱われるのは嫌ですけど、そんな事はしないでしょうし、硬い言葉じゃなくてもいいのです。私はどちらかと言うと、気安い関係の方が好きですしね。

 その思いがちゃんと伝わったのか、商人さんは普通の言葉使いに戻してくれました。

「そうかい。それじゃあ普通に話させてもらうそ? 俺もこっちの方が好きなんでな」
「はい。それに、私はもう奴隷聖女じゃないですからね。カチカチになる必要なんてないのです」

 そうです。私はもう解放されたのですから、聖女じゃないのです。ふふん。

 そんな事より、オークションですよ! 私、実はすごく気になっているんですよね。行ったことないですし、競り合うのは楽しそうです。自由に使える金貨も百枚あることですし、オークションの様子を見ながら参加してみるのも楽しそうかも?

 どんな物が出品されているのか、会場はどんな雰囲気なのか。ぜひとも見てみたいですね。

「商人さん! 早くオークション行きましょう! 私、見てみたいです!」
「え、ああ。オークションか。確かに保存の負担を押し付けるわけにもいかんし、早めに行った方がいいかもな。少し待っててくれ。商隊長に確認してくるからな」
「はーい」

 ふふふ。オークション楽しみです。

「弟子。オークションに行くまで、ゆっくり休んでいてくださいね。よしよし」

 しばらく寝ている弟子の頭をよしよししていると、商人さんが戻ってきました。シルベスターさんの方も、話し合いが一段落したようで、こちらに向かってきます。

「嬢ちゃん。商隊長に確認をしたら、オークション会場のある次の街まで、このまま向かうことになった。街に着いたら商品の登録だけして、開催を待つ、ってことになりそうだ」
「本当ですか! よーし! それじゃあ今から早速向かいましょう!」
「え、いや……」

 ドキドキが止まりません! ふんふふ~ん♪

「少し、いいでしょうか?」

 初めてのオークションに胸を高鳴らせていると、横から声が!
 ……すごいビックリしました。

 あー、そう言えばシルベスターさんもこちらに向かってきていたんでしたね。
 もうすっかり頭の中から存在が消えてしまっていました。……うっかりはダメですね。もっと自制せねば!

「どうしたんですか? 何か問題とか?」
「いや、そう言う訳では無いのですが……。少し声が聞こえてきましたので、良ければオークションにご招待しようかと思いまして」

 ! な、なん……だと!? 

 シルベスターさんが、私たちをご招待……!? 確かにこの人は皇子様ですけど……。え? 皇子様って、オークション会場とか持ってるんですか? 私の常識が欠落しているだけで、それが普通、とか?

 ……皇子様ってすごいんですね。(違う)

「いいんですか?」
「はい。もちろんです」

 即答……だと……!? やっぱり皇族と言うだけあって、すごいんですね。自分の持っているオークション会場にわざわざ招待してくれるのも、殺しかけてしまったのを水に流してくれる(流してません)のも、懐の広さがどこぞの王族(笑)とは大違いです。この人に比べたら、あの猿たちなんて、ただの輩ですよ。盗賊の方がマシなくらいです。

 ごほん。そんな事は今はどうでもいいですね! 誘っていただいたからには、感謝もしておきませんとね。

「ありがとうございます! すっごく嬉しいです!!!」
「あっ……、い、いや、そそっそ、その、き、気にする必要はないぞ! です!」

 ? 何かカミカミですね。もしかして、さっきの寒さがをまた感じてしまった……とかでしょうか?
 さっきのあれは今世紀最大のやらかしですよね。……二番目かな? まあそこら辺は、何でもいいですけど。とりあえず《超回復ハイヒール》っと。

 ……さっきのカミカミが恥ずかしかったんですかね? お顔が真っ赤です。でも大丈夫ですよ! 私は何も見てないので! そういう事にしておくので!

 ふふん。私のことは気遣いマスターとでも呼んでください。えっへん!

 無意識に、『年頃の青少年』を撃墜してしまうセレスティアさんなのであった。

 白金髪に空のような瞳を持った聖女スタイルの彼女は、ぶっちゃけ言って、輝きすぎなのである。心から満面の笑みを浮かべれば、そこらの男などイチコロなのだ。

 王国にいた時は、顔が(主にポーションのせいで)死んでいたので、胸は揉まれても、襲われるまではいかなかった訳だが……。

 そのせいもあり、自分の顔など大したことはない、などと考えてるのだから始末が悪い。

 近場の男性陣諸君には、セレスティアさんの顔だけは見ないように気を付けてもらいたいものである。
 ……とは言え、まだまだこれからも彼女の撃墜スコアは、グングンと伸びていくのだろう。

 男性諸君らに、敬礼。

════════════════
エール感謝6本目!

感想下さった皆様、本当にありがとうございました。

お陰様で、沈んでいた気持ちを持ち直す事が出来、無事に描き上げることが出来ました。

とても感謝しております!
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