BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月

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<ジルベール>シリアス ルート

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「騒がしいな」
「そうだね。なんだろう」
 ジルベールが無理していないか、気にかけながら歩いていると後方から大声が聞こえてくる。市場なら騒がしいのは分かる。だがここは歩いている人もいるが、まばらな通りだ。なにごとだと振り向けば、幼い子供が勢いよく走ってくるのが見えた。

「待ちなさい! 危ないだろう!」
 後ろから追いかけているのは、父親だろうか。息を切らせながら走ってくるのが見えた。声には焦りが、浮かんでいる。子供が転ばないか、人にぶつからないか。色々と心配で気が気じゃないのだろう。けど子供は、おかまいなしだ。
 危ないから、ゆっくりと歩けばいい。なんて正論は子供には、通じないだろう。笑顔を浮かべて、なにやら楽しみな様子だからな。

 ―― けど、行ったらだめだ
 そうだ。行くな。行ったらだめだ。
 気づけば目の前を通り過ぎようとしていた子供の体を、抱き上げていた。

「えっ?」
「あっ、ありあとうございます!」
 何が起きたか理解できてないらしい。戸惑った子供を、そのまま追ってきた父親らしき男に渡す。この中で一番戸惑っているのは、俺なのだがきっと顔に出てないから気づかれないだろう。

「急いでいるのか?」
「えっ、うん……」
 このまま黙っていると、ただの不審者だ。場を取り繕うために、子供に声をかける。
子供からは、見ればわかるだろう。なんだこの不審者とでもいいたげな視線が突き刺さる なぜだかコミュ力抜群のジルベールは、間に入ってくる様子はない。代ってくれれば、全て解決しそうな気がするんだが子供が苦手なのだろうか。

「待てと言われていたのは、聞こえていただろう」 
「だって走ったほうが、早く着くもん」
 子供は露骨に機嫌を、損ねたようだ。顔から不審者に対する拒絶感が見て取れる。確かにいきなり見知らぬ他人に抱き上げられたら、不信感しか抱かないのは分かる。
「それは、そうだな。だか走って行ったら、転んで怪我をするかもしれない。人にぶつかって、怪我をさせるかもしれない」
「……」
 視線が下を向く。どうやら不貞腐れてしまったようだ。それか不審者に言われたくないと思われてるかどっちだ。

「怪我をしたら、痛くて楽しむどころじゃない。誰かに怪我をさせてもな。それと君が怪我をしたら、お父さんが悲しくなるぞ。それでもいいのか」
「えっ! おと……」
「良くない」
 なぜだが子供の後ろにいた父親らしき男が、驚いたように声を上げる。いったいなんだ。父親じゃないのか。なら兄か。それにしては、歳が離れすぎているな。
 関係は分からないが、どういう間柄かなんて聞くわけにもいかない。驚いた顔をしている男は、スルーして子供に視線を向けるとゆっくりと首を横に振った。

「そうか。ならお父さんに、ごめんなさいして一緒にゆっくり行け」
「うん。お父さん、ごめんなさい」
「おっ、お父さ……」
 よくわからないが父親ということにして話を続けると、子供にお父さんと言われた男は目じりに涙をためた。さっきから、なんだろうか。複雑な家庭環境なのだろうか。状況が分からないが、謝った子供が男に向かって手を伸ばすと本格的に泣きそうな雰囲気を醸し出した。なんとか堪えて、子供と手をつないでいる。

「お兄ちゃんも、ごめんなさい」
「俺に謝る必要はないが、きちんとごめんなさいできて偉いな」
 頭をなでてから、しまったと思った。不審者にいきなり頭をなでられたら、もはやそれは事案じゃない事件だ。

「えへへ」
 心配は、杞憂に終わる。子どもははにかんで、笑みを浮かべている。父親らしき男は目じりに涙をためたままだが、微笑ましそうに子供を見つめていた。


「レイザードに頭を撫でてもらって、嬉しそうにしてたね」
「気づいたら撫でていた。昔、誰かにそうしてもらったような気がする……」
 子供が手を振りながら、父親らしき男が何度も頭を下げながら去っていく。二人の姿が見えなくなってから、ようやくジルベールが声をかけてきた。なぜだが微笑ましそうな目を、こちらに向けてくる。どういう意味だろうか。不審者認定されなかったね。ギリギリセーフで、良かったね的なまなざしだろうか。
 色々と考えながら返したせいか、失言をしてしまった。子供が頭を撫でてもらう。あれは、俺の昔じゃない。バグが発生して、見た映像の中のものだ。

 子供の父親でも母親でもない。子供に対して、敬語を使っていたから、身内じゃないのかもしれない。線が細くて綺麗な人だ。白い髪に緑の目を持つ。光の術師の特徴を、持つ人だ。子供はその人のことが、大好きだった。
 ――そんな気がする
 バクを子供の視点で見ているから、そう思うのかもしれない。最近のバグは、いつも子供視点だ。だから、そんな気がしただけだ。俺のものじゃない。あくまで子供の――

「レイザード?」
 ジルベールの声が、遠くなる。視界がぶれて周りが緑に染まる。
 ―― 速く、速く、急がないと
 声が聞こえる。周りの景色が、過ぎ去っていく。ただそれだけの映像に、心臓がわしづかみされたような感覚を覚えて、汗が頬を伝った。
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