BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月

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<シーディス>ルート

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 ―― 火?
 光ったように見えたものが、火だと気づく。それで水を温めてるのは、分かったけど疑問が浮かんだ。
 術の適性は、一つ。それが多くの人、に当てはまる。ジルベールみたいに、二つの適性があるのは珍しいんだ。
 それでシーディスさんの適性は、土のはずで当たり前だけど使える術は土系のものしかない。

「どうした?」
「あのいま、火を……」
 凝視しすぎたせいかシーディスさんが、不思議そうに声をかけてくる。考えても分からないから、素直に聞くことにした。

「ああ、これだ」
 掌を広げてこれといったものを、見やすいようにしてくれる。何かと思ってみると、小さい石、いや宝石だろうか。詳しくないから宝石みたいなものとしか、言えないものがあった。大きさは一センチくらいかもしれない。一つの宝石と言うより欠片といった方が、いいようなものだった。

「……もしかして」
「ああ、思ってるので、正解だと思うぞ。見てみるか?」
 お礼を言って欠片を、持ちしげしげと眺める。

 ―― 初めて見た
 宝石じゃなくて、これは鉱石だ。話に聞いたことがあるだけで、実物は初めて見た。
 この物体はなんとも、ファンタジーな代物だ。この鉱石には、術を封じ込める力がある。火でも水でも土でも風でもだ。そして封じ込めた術は、適性がなくても使える。

 なんとも便利で、ファンタジーである。こんなモノがあるなら生活に応用できて、ものすごく便利になるだろうと思うだろうがそうもいかない。
 まずこれは一度術を、封じたら未来永劫使えるって代物じゃない。そこはファンタジーなんだから、ずっと使えればいいのにと思うが形あるものは崩れるという現実が待ってる。
 何百年とはいかなくても、何十年持てばこれを活かして技術が発展したりするのだろうけどそこまでもいかない。ひどいのは数回使うだけで、壊れてしまうのだそうだ。

 そんなもろい代物なのに、希少性があるからと高値で取引されてるらしい。なんか貴族とかが、信じられないくらいの値段で買うらしいと噂で聞いた。
 ザッ庶民である俺の行く店では、絶対に見るものじゃないから正確な値段はしらない。

「よければ、やるぞ。他にもあるが、どれがいい?」
「えっ」
 思わず良いんですかと、飛びつきそうになった。
 だってそんな不思議物体が、あれば色々と研究が出来るだろう。水の適性しかないから、関わる術の研究しかできなかったけどそれがあれば他の術の研究も出来る。
 心が凄く躍ったけれど、理性の力で押さえ込む。腐男子にも、理性はある。妄想のあれやこれを、口にも表情にも出さない腐男子の理性は鉄壁なんだ。

「いえ見せていただいただけで、十分です」
「そうか。ほしくなったら、いつでもいってくれ」
 すこし残念そうな表情をされた。
 やっぱり下さいと、言いそうになるのをぐっと堪える。
 この鉱石は高いだけじゃない。詳しくは知らないのだが、昔の遺物らしく限られた量しかないそうだ。だから高値で取引される。希少性が高いから、ただ金を積めば手に入らないとも聞いた。
シーディスさんはお金持ちで、いろいろな伝手がありそうだから買えたんだろう。要するに本来なら俺が絶体に手に入れることが出来ない物と言うことだ。お金も手に入れる手段も持たない。

「あのもう少し、見ていてもいいですか?」
「ああ」
 なぜだが残念そうな表情をしたままだから、声をかけると目が細まって穏やかなものになる。 
「綺麗ですね」
 菱形の石の中で、炎が揺らめいているように見える。持っても、熱さは全く感じない。

「ここで、使って見るか?」
「えっ?」
 眺めている鉱石と別の透明なものを、取り出して意外なことを言われた。

「興味は、あるんだろう? やってみたらどうだ」
「そんなことをしたら、価値が落ちてしまんじゃ……」
 どうみてもまだ何の力も入れていない鉱石に見える。未使用のものを、使ってしまえばそれだけ商品としての価値が下がってしまう。

「これは商品じゃなくて、俺の持ち物だからな。構いやしないさ」
「ありがとうございます」
 遠慮と好奇心がせめぎ合って、好奇心が頭一つ分だけど突き抜けてしまった。両手を重ねて差し出すと、別の鉱石を乗っけてくれる。正直に言えば宝石と鉱石の違いなんて分からなくて、鉱石って言われてるからそうなんだろうくらいの知識しかない。

「そのまま術を使って、鉱石自体に注ぎ込むようにすればそれで完了だ」
「わかりました」
 けっこうざっくりとした説明だけれど、感覚めいたものなのかもしれない。とりあえず言われたとおりに、やってみることにした。失敗しても、それでもいい。貴重な体験が、出来るだけでありがたい。
 術を構築して液体の状態で、鉱石に向かうようにする。術で作った水が、鉱石に吸収されるように見えたときいいようのしれない嫌悪感が全身を駆け巡った
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