ライブ!? 軽い文学部のお話 第1期

渋谷かな

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切ない別れ2

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「別れか。」
 俺は、なぜか卒業論文のテーマを聞いた時に、彼女に視線が向いていた。俺の方が後ろに座っているので、彼女が俺の視線に気づくことは無い。日々の人間の暮らしとは届かない思いの一方通行の繰り返しである。
「それでは諸君、無事に卒業できることを願っているよ。」
「先生、さようなら。」
 教師という権力者が教室から去って行くと、教室は普通の空間に戻り、仲の良い者同士が近づき話しを始めたり、教室から去って帰って行く。
「洋、どうする? 学食でも行って、飯でも食うか?」
「悪い。昼から面接だから、付き合えないわ。じゃあな。」
「おお、がんばれよ。」
 尾羽洋は就職の面接のために急いで帰って行った。本来であれば、カラオケに行ったり、合コンの設定をするのが大好きな男だが、大学を卒業できるとしても、大学4年生の卒業前でも就職先が決まっていないのでは遊ぶこともできない。
「千和は?」
「いいよ。学生生活も最後だし、付き合ってあげよう。ワッハッハー!」
「おまえ、良く結婚出来たな。」
 今仁千和は俺と学生食堂に行き一緒にご飯を食べる。何だか不思議である。大学で初めて見た時は普通のカワイイ女の子だと思った。そんな彼女が学生結婚して子供までお腹にいるという。世の中の流れは俺の想像をはるかに超えていて、正直、分からなかった。
「奈良は、卒業論文のテーマは何を書くの?」
「別れか? 難しいな。考えたことが無い。」
「そだね。」
 俺たちは学食でご飯を食べながら卒業論文のテーマを考える。今までは普通に大学の授業を受けて昼休みに食堂に集まって、ワイワイ騒ぎながらご飯を食べた。春が近いからだろうか、食堂にも学生の姿はまばらだった。
「私の別れは、幼かった子供の自分との別れかな。」
「え。」
「これからはお腹の赤ちゃんのために強いお母さんとして、生きなくっちゃ。ワッハッハー!」
「子供のために、その笑い方をやめたらどうだ?」
「酷い!? 笑いは子供の胎教にいいんだよ!?」
「はいはい。」
 彼女は大人になっていた。俺は自分のことだけでも、何才になっても子供の様に精一杯なのに、彼女は自分のことよりも、生まれてくる新しい命のことを考えていた。なんだか俺は同じ時間、同じ大学で過ごしたのに、彼女だけ成長して、自分だけが何も変わっていないように感じた。
「もしも何かあったら言ってこい。俺が助けてやる。」
「私の夫はお金持ちだよ? 三流大学の安月給の奈良に無理だよ。」
「悪かったな、貧乏で。」
「キャッハッハー!」
 彼女は人生にお金を選んだ。彼女は貧乏の世界と別れを告げた。

つづく。
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