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89話
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「もちろんさ。例え北野後輩に嫌われても嫌いにはならないさ」
「やっぱり鈴木先輩は凄いですね。そんな鈴木先輩がす――」
真希がなにかを紗那に伝えようとした瞬間、花火が打ち上げられた。
その音が真希の言葉をかき消す。
その音のおかげで真希は我に戻る。
今、自分はなんて言おうとしたのだろう。
いや、自分で言おうとしていたんだからなんて言おうとしていたのかは分かる。
真希はそんな紗那を『好き』と言おうとしたのだ。
もちろん、異性としてではなく先輩として『好き』という意味だ。
だが、もしこれを紗那に聞かれていたら一生、からかわれていただろう。
本当に花火の音がかき消してくれて良かった。
窓の外には綺麗な花火が夜空に咲き誇っていた。
真希のマンションは特等席で、誰にも邪魔されることなく花火を観賞することができる。
「花火が打ち上がったな」
「そうですね」
「特等席で花火を見るとさらに綺麗に見えるな。こんな静かに花火を見たのは初めてだ」
打ち上がった花火を見て紗那は感嘆の声を上げていた。
そんな紗那に相づちを打ちながら、真希も花火を見る。
二人で初めて見る花火は、いつもより綺麗に見えた。
「来年もまた見たいな」
「来年って、鈴木先輩はもう卒業してますよね。無理じゃないですか。私は高校生で鈴木先輩は大学生なんですから」
「無理じゃないさ。だってまた北野後輩の家にお邪魔すれば良いだけなんだから。それに大学生になったら高校生の後輩と友達を辞める法律もないだろ」
「……まっ、そうですけど」
来年に思いを馳せている紗那に真希は苦笑する。
留年していなければ来年、紗那は大学生になっている。
つまり来年、紗那はもう高校生ではない。
大学生になれば、また新しい人間関係が始まる。
そうなれば高校の時の人間関係が希薄になることは容易に想像がつく。
しかも真希と紗那はただの『先輩後輩』の関係で、しかも二年も離れている。
紗那が卒業したら、この関係も勝手に終わると真希は思っていた。
だが紗那は違うらしい。
「あたしは大学生になっても社会人になっても北野後輩と仲良くしたいと思っている。北野後輩はどうなんだ?」
「私も疎遠になるのは、なんか嫌です」
「それならなんの問題もないだろ。来年もまたここで花火を見よう」
これはただの口約束だ。
ずっと仲良くいれる保障なんてない。
今は二人とも同じ学校に通う高校生だから頻繁に会うことができ、仲良くいたいと思っていても一年後も五年後も同じ気持ちでいるとは限らない。
だが紗那は未来になにも悲観していなかった。
そんな紗那の言葉を聞くと、真希もなぜか大丈夫なような気がしてくるから不思議である。
「それでさっき北野後輩はなんて言おうとしてたんだ。『す』の後が聞こえなくてな」
紗那は先ほど真希がなんて言おうとしたのか気になるらしく、その話を掘り返す。
「べ、別になんでもありません。っていうかなにも言ってません」
紗那のことを『好き』と言った自分が信じられず、またそんなことを馬鹿正直に言ったらからかわれると思った真希は誤魔化そうとするも動揺してしまう。
「怪しいな北野後輩。もしかして『好き』とか言ったんじゃないか……まっ、冗談だけど」
「はぁー、そんなこと言うわけないじゃないですか。自意識過剰です。別に嫌いじゃないだけであって好きではありません」
紗那に図星を突かれた真希は、最後の紗那の冗談を聞く前に反論する。
そのせいで最後の紗那のセリフは真希の耳には入らなかった。
冗談のつもりで言った紗那は真希に烈火のごとく反論され、面食らっていた。
「ただいまー、戻ったよー。あれ、もしかして仲直りできた感じかな?」
「ただいま戻りました。どうやらそのようですね」
かき氷を買いに行っていた清美と麗奈が帰って来る。
二人はいつも通りに戻った二人を見て笑みを浮かべた。
その後買ってきたかき氷を食べながら四人は、花火を観賞する。
真希の記憶のアルバムに新しい思い出の一ページがまた刻まれたのであった。
「やっぱり鈴木先輩は凄いですね。そんな鈴木先輩がす――」
真希がなにかを紗那に伝えようとした瞬間、花火が打ち上げられた。
その音が真希の言葉をかき消す。
その音のおかげで真希は我に戻る。
今、自分はなんて言おうとしたのだろう。
いや、自分で言おうとしていたんだからなんて言おうとしていたのかは分かる。
真希はそんな紗那を『好き』と言おうとしたのだ。
もちろん、異性としてではなく先輩として『好き』という意味だ。
だが、もしこれを紗那に聞かれていたら一生、からかわれていただろう。
本当に花火の音がかき消してくれて良かった。
窓の外には綺麗な花火が夜空に咲き誇っていた。
真希のマンションは特等席で、誰にも邪魔されることなく花火を観賞することができる。
「花火が打ち上がったな」
「そうですね」
「特等席で花火を見るとさらに綺麗に見えるな。こんな静かに花火を見たのは初めてだ」
打ち上がった花火を見て紗那は感嘆の声を上げていた。
そんな紗那に相づちを打ちながら、真希も花火を見る。
二人で初めて見る花火は、いつもより綺麗に見えた。
「来年もまた見たいな」
「来年って、鈴木先輩はもう卒業してますよね。無理じゃないですか。私は高校生で鈴木先輩は大学生なんですから」
「無理じゃないさ。だってまた北野後輩の家にお邪魔すれば良いだけなんだから。それに大学生になったら高校生の後輩と友達を辞める法律もないだろ」
「……まっ、そうですけど」
来年に思いを馳せている紗那に真希は苦笑する。
留年していなければ来年、紗那は大学生になっている。
つまり来年、紗那はもう高校生ではない。
大学生になれば、また新しい人間関係が始まる。
そうなれば高校の時の人間関係が希薄になることは容易に想像がつく。
しかも真希と紗那はただの『先輩後輩』の関係で、しかも二年も離れている。
紗那が卒業したら、この関係も勝手に終わると真希は思っていた。
だが紗那は違うらしい。
「あたしは大学生になっても社会人になっても北野後輩と仲良くしたいと思っている。北野後輩はどうなんだ?」
「私も疎遠になるのは、なんか嫌です」
「それならなんの問題もないだろ。来年もまたここで花火を見よう」
これはただの口約束だ。
ずっと仲良くいれる保障なんてない。
今は二人とも同じ学校に通う高校生だから頻繁に会うことができ、仲良くいたいと思っていても一年後も五年後も同じ気持ちでいるとは限らない。
だが紗那は未来になにも悲観していなかった。
そんな紗那の言葉を聞くと、真希もなぜか大丈夫なような気がしてくるから不思議である。
「それでさっき北野後輩はなんて言おうとしてたんだ。『す』の後が聞こえなくてな」
紗那は先ほど真希がなんて言おうとしたのか気になるらしく、その話を掘り返す。
「べ、別になんでもありません。っていうかなにも言ってません」
紗那のことを『好き』と言った自分が信じられず、またそんなことを馬鹿正直に言ったらからかわれると思った真希は誤魔化そうとするも動揺してしまう。
「怪しいな北野後輩。もしかして『好き』とか言ったんじゃないか……まっ、冗談だけど」
「はぁー、そんなこと言うわけないじゃないですか。自意識過剰です。別に嫌いじゃないだけであって好きではありません」
紗那に図星を突かれた真希は、最後の紗那の冗談を聞く前に反論する。
そのせいで最後の紗那のセリフは真希の耳には入らなかった。
冗談のつもりで言った紗那は真希に烈火のごとく反論され、面食らっていた。
「ただいまー、戻ったよー。あれ、もしかして仲直りできた感じかな?」
「ただいま戻りました。どうやらそのようですね」
かき氷を買いに行っていた清美と麗奈が帰って来る。
二人はいつも通りに戻った二人を見て笑みを浮かべた。
その後買ってきたかき氷を食べながら四人は、花火を観賞する。
真希の記憶のアルバムに新しい思い出の一ページがまた刻まれたのであった。
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