柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合

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74話

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「もはやここまで嫌い合ってるのに距離を取ったり陰口を言わないだけ凄いわ」
「確かに本当に嫌いだったら陰口とか言っちゃうもんね。でも瑞希ちゃんも椿ちゃんもお互いの陰口を聞いたことがないかも」
「それって本人に直接言ってるからだよね」

 瑞希と椿の喧嘩を近くで見ていた帆波と舞はなぜか感心していた。
 それはそうだろう。
 文句があるなら直接本人に言うべきだ。
 それを影でコソコソ文句を言っても相手には伝わらないし、陰口なんて無意味でしかない。

「さっき柊は友達は必要ないって言ったじゃん。そんなこと言う人初めて会った」

 友達が必要か、必要ではないかと質問をされたら普通の人間は友達は必要だと答えるだろう。
 だから早織が珍しがるのも無理はない。

「別に今までいなくても生きてこられたし」

 瑞希は友達がいなくても高校生まで生きてこられたのだ。
 だからこそ、逆に友達が必要と言っている人の感覚が理解できない。

「だから柊って面白いよね。あたしと全然考え方が違くて」
「はぁ?」

 自分と考え方が違う瑞希のなにが面白いのか分からないが、早織が瑞希の肩に腕を回す。
 瑞希のこの『はぁ?』はいきなり肩に腕を回されたことによる『はぁ?』だった。
 舞もだが、リア充の女の子は男の娘、女の子関係なくこんなに距離感が近いのだろうか。
 早織の肌も柔らかい弾力があり、女の子の腕だった。

「確かに柊や白鳥は僕たちと違うよね」

 帆波も一人ウンウンと頷いている。

「ホント柊と友達になれて良かったよ。世の中にはこんなにも面白い子がいるんだね」
「だから、私は友達になった覚えはないんだけど」

 一人喜んでいるところ悪いが、別に瑞希は早織と友達になった覚えはない。
 勝手に沙織が言っているだけである。

「大村さん、柊さんが嫌がってるわ。離れなさい」

 早織に絡まれて瑞希が嫌がっていると思ったのか、撫子は少し怖い表情を浮かべながら早織の腕をどかす。
 ここまで不機嫌そうな撫子は初めて見た。

「こわっ、どうしたの白鳥。別に柊は嫌がってないでしょ」

 撫子に腕を掴まれた早織は明らかに不機嫌そうな顔だった。

「嫌ではないが面倒だった。ありがとう白鳥」

 別に嫌ではないが陽キャ特有の近い距離感に辟易していた瑞希にとって、撫子の仲裁はありがたかった。

「いえ……別に」

 なぜか撫子は瑞希の視線を外してボソッと言う。

「まぁーまぁー三人とも。いきなりパーソナルスペースに入られて嫌だったんだよね。柊と白鳥はまだ友達になったばかりなんだから、距離感気を付けて」
「……あたしはただ仲良くなりたかっただけなのに」

 仲裁に入った帆波は瑞希たちをフォローしつつ、優しく早織に注意する。
 早織は、不満そうな表情を浮かべていたが帆波がいる手前、無理矢理不満の言葉を飲み込んだ。
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