柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合

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96話

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「瑞希ちゃん、撫子ちゃん」

 後ろから舞も走って追いかけてくる。
 舞も廊下を走ってはいけない校則を破り、瑞希たちを追いかける。
 一体、なぜ撫子が瑞希たちを……いや瑞希を避けているのか分からない。
 でも分かっていることだけはある。
 撫子は生理でイライラして避けていたということは嘘だったということだ。
 撫子は昨日、もう避けないと約束してくれた。
 責任感の強い撫子がたった一日で約束を反故にしない女の子だということは分かっているつもりである。
 撫子はどんどん上に逃げていく。
 上ということはだいたい逃げられる場所は限られてくる。
 多分、屋上だろう。
 瑞希の予想は見事的中し、撫子は屋上に逃げ込む。
 もちろん、屋上に逃げ場などない。
 屋上で向かい合う、撫子と瑞希。
 後ろから追いかけてきていると思っていたが、舞が全然姿を見せてくれない。
 どこかではぐれてしまったのだろうか。

「白鳥、昨日の私を避けている理由は嘘だったんだなっ」
「……」

 感情が高ぶっているせいか、瑞希の口調はきつかった。
 やはり、信頼していた撫子に嘘をつかれるのは精神的にきついものがある。
 いつも冷静な撫子はどこに行ってしまったのか、屋上にたたずむ撫子は弱々しく俯き、なにも返事をしてくれなかった。

「それじゃーなんで私を避けるんだよ。私、なにか白鳥に悪いことでもしたのか?悪いがなにも心当たりがないんだ」

 昨日避けないと約束したのに、一日で反故にされ瑞希の気持ちは悪い意味で高ぶっていた。

「別に柊さんは悪くないわ」
「ならどうして避けるんだよ」

 撫子の否定の言葉はよく芯が通っていた。
 だからその言葉は嘘ではないと理解した。
 でも、だったらどうして瑞希を避けているのだろう。
 謎は深まるばかりである。

「……」

 そして再びの無言。
 どうやら、撫子は瑞希を避けている理由だけは話したくないらしい。
 その中途半端な反応がさらに瑞希をイラつかせる。
 もし瑞希が悪いことをしたなら全力で謝りたいと思っている。
 でも撫子は瑞希に非はないと断言をした。
 つまり、瑞希には非はないのだろう。
 だったら余計、なにもしていないのに避けられているこの状況を納得することはできない。

「私が悪くないなら、どうして避けるんだよ」

 そもそも瑞希が悪くないなら撫子に避けられる意味が分からない。
 そもそもおかしな話だろう。
 瑞希が悪いなら瑞希を避けているのもまだ分かる。
 でも撫子は瑞希は悪くないと言いながら瑞希を避けている。
 言っていることとやっていることがメチャクチャである。
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