柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合

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98話

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「私は白鳥に避けられたくない」

 撫子に避けられると心が引き裂かれたかのような痛みに襲われる。

「白鳥に避けられると心が引き裂かれたかのように痛い。だから白鳥も私を避けている理由を教えてほしい。だって私たちは――」

 こんな気持ちは初めての経験だった。
 誰かのせいでこんなにも心が揺さぶられてしまう。
 その人と話せるだけでも嬉しくなり、逆に話せなかったり冷たくされると悲しくなる。
 一度撫子と距離が開いて分かったことがある。
 それは瑞希にとって撫子は他人とは違う特別な存在だと言うことだ。

「友達なんだから」

 きっとこれを人は『友達』というのだろうと瑞希は推測する。
 一緒にいて楽しく、信頼している相手を友達というなら、撫子は間違いなく瑞希の友達だ。

「……そういうことだったのね」

 撫子は涙をこぼしながら一人納得する。

「私と柊さんは友達だったのね……」

 撫子も友達だということに気付いていなかったらしい。

「ありがとう柊さん。柊さんの気持ちは十分伝わったわ。だから今度は私の気持ちも伝えるわね。大切な柊さんに」
 撫子もなにかが吹っ切れたみたいに表情が爽やかになる。
「私もどんどん柊さんの存在が大きくなっていった。でも今まで友達がいなかった私はそれが友達に対する嫉妬だと理解できなかった」
「嫉妬?」
「私は柊さんが周りのいる人と仲良くなっていくことが不安だった。ううん、少し違うかも。嫌だった。最初は私だけと話していたのに、次々柊さんは友達の輪を広げていく。最初は私一人だけだったのに」

 まさか撫子が一人寂しい思いをしていたなんて、瑞希は想像もしていなかった。

「どんどん私と柊さんとの会話が減っていって、金森さんたちの会話が増えていく。柊さんに友達が増えるのは良いことだと思う。でも私は柊さんとの会話がどんどん減っていって寂しかったのね。だから、柊さんに八つ当たりをしちゃった。ホント、子供みたい」

 初めて知る、撫子の本心。
 瑞希は撫子の本心をただ黙って聞いていた。

「柊さんが私以外のクラスメイト、特に金森さんと話していると胸が痛くなって不安だった。私よりもきっとその人と話している方が楽しいんだろうって」

 確かにその気持ちは分かるかもしれない。
 昔、亜美が友達とばかり話していて自分の相手をしてもらえなかった時、自分よりも友達の方が大事なんだと思って、傷ついた経験がある。
 そのせいか今は重度のブラコンになってしまっている。
 今では重度のブラコンの方が迷惑をしているのだが。
 つまり撫子は瑞希が他の友達に取られて嫉妬していただけであった。

「馬鹿よね私。柊さんが私以外の人と話すたび寂しくてしょうがなかった。最初に柊さんに話しかけたのは私なのにって」

 椿に絡まれてから確かに撫子と話す時間は減った気がする。
 まさか、少し会話が減っただけで傷ついていたなんて、それは瑞希も分からなかった。
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