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出会い
兄と妹(3)
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「ってなことがあってだな。今思えばあの頃あいつが不愛想だったのは、いつ起こるかわからない魔法の暴走に他人が巻き込まれないか怯えてたんだろうなぁ。それからは、リーシャの方からも話しかけてくるようになったし、俺も他の奴等とも話せるように無理やり介入してみたりして今みたいな感じになったんだ」
シルバーは懐かしみながらリーシャと出会った時の話を語った。
最初はエリアルも面白そうに聞いていたのだけれど、気づけば途中から不機嫌そうな顔をしていた。
シルバーはその顔に気が付いてはいたけれど、あえて昔話を続けていた。
話終わってからやっとシルバーはエリアルの不機嫌な理由を聞いた。
「なんでそんな顔してんだよ。聞いてきたのそっちだろ?」
「リーシャねぇちゃんと仲良くしてる話、なんか面白くない」
「お前もかよ」
シルバーは苦笑した。
話しを聞いているうちに、エリアルはどうやらシルバーに嫉妬してしまったようだ。
そうはいっても、シルバーもリーシャもお互いにそういう感情を持って相手を見てはいないため、嫉妬されて八つ当たりをされるのは迷惑だ。
シルバーはエリアルの八つ当たりを避けるため、自分がリーシャをどう見ているのか教えておく事にした。
「あのなぁ、俺はリーシャのことは手のかかる妹としか思ってねぇよ。だからそんな顔止めろ」
「ほんと?」
「ああ、本当だ」
「そっかぁ。ならよかった」
エリアルはシルバーにリーシャを取られる事はないと安心したのか、上機嫌で目の前の肉に噛みつき始めた。
こうして横から見ていると、普通に食べ盛りの子供にしか見えない。これで本性が竜種だというのは今でもたまに疑いたくなる。
「この際だから言っちまうけどよ、俺はリーシャのことを妹みたいに思ってるからこそ心配してた事があるんだ。なんだかわかるか?」
「? ふぁはんふぁい」
「もう少し考えろよ、ったく。俺はな、ぽっと出のお前ら3人、しかも人間じゃないお前らにリーシャを預けてもいいもんなのかって、これでもずっと心配してたんだよ」
リーシャが強いとはいえ、ずっと妹のように面倒を見てきた少女の側に危険な生物を3匹も置かせておくことに心配が無いわけではなかった。
彼らと打ち解けられた今でも、言動を見ていると無理やり嫌がる事をされているのではないだろうかと心配になる事がある。
「……だからリーシャねぇちゃんを僕たちから引き離したいってこと?」
シルバーが思いを零した途端、エリアルの様子が一変した。
口の中の物を嚥下すると、先ほどまでの機嫌の良さが嘘のように消え去り、冷めたような目でじっとシルバーの事を見つめていた。
シルバーはその雰囲気にぞわっとした感覚が背筋を駆け抜けた。けれど、あえて何も感じていないかのように話を続けた。
「引き離せるもんならな。けど、実際できるとは思ってねぇし、リーシャもそれは望んでねぇからそんなことはしやしねえよ。それに、お前らがちゃんとリーシャを守ってやるってんなら、俺はいくらでも手を貸すつもりだ。お前らのことも一応弟みたいに思ってるからな」
シルバーは複雑な気持ちで、困ったような、けれど優しい笑みを浮かべた。
愛娘を嫁に出す父親の気持ちとは、こんな感じなのだろうか、そう思っていた。
エリアルはじっとシルバーを見つめた。
「……シルバーにぃちゃん。おじちゃんって言ってごめんね?」
「なんだよ。それはもう解決してんだから、何回も謝んなっくていいって」
「えへへ。なんとなく言いたかったの。それよりにぃちゃん、これも貰うね」
エリアルはそう言って、シルバーの前に置いている皿の上から肉の塊を持ち去った。
「あっ! この野郎‼ 自分の分食ったからって俺のまで食うんじゃねぇ‼」
「早く食べないのがいけないんだよー」
「お前が教えろっていうから教えてやったのに!」
シルバーはエリアルの鼻をつまんだ。
「いへへへへ‼ やっ、やめてひょ! にぃひゃん‼」
2人が騒がしくしていると、アメリアとの話を終えたリーシャが背後に立っていた。
「なにやってんの、2人とも……」
リーシャは呆れた顔で立っている。
「リーシャ! こいつ、俺がわざわざ買ってきてやった肉をとっとと全部食って、俺の分の肉にまで手ぇ出してきやがった!」
「らってにぃひゃん、じぇんじぇんんてをつけてらかったじゃん!」
「だからって人の分食うやつがあるか、このヤロー!」
「いひゃい、いひゃいっへ!」
エリアルは鼻をつままれ涙目になっている。
その様子はまるで子供の兄弟の喧嘩そのものだった。見ているリーシャが恥ずかしくなってくるほどの。
「もう、なにやってんの、エリアル。あなたが悪いんだから、ちゃんと謝りなさい」
リーシャに諭される間も、大人気ないシルバーから鼻をつままれ続け、耐えられなくなったエリアルは大声で叫んだ。
「ご、ごめんなひゃいぃぃぃぃぃ‼」
エリアルのその声はギルドの外にまで響き渡った。
声を聞いたギルドの者たちは2人の様子を見に来て、騒ぎの真相を知るとみんな一様に爆笑し、立ち去っていったのだった。
シルバーは懐かしみながらリーシャと出会った時の話を語った。
最初はエリアルも面白そうに聞いていたのだけれど、気づけば途中から不機嫌そうな顔をしていた。
シルバーはその顔に気が付いてはいたけれど、あえて昔話を続けていた。
話終わってからやっとシルバーはエリアルの不機嫌な理由を聞いた。
「なんでそんな顔してんだよ。聞いてきたのそっちだろ?」
「リーシャねぇちゃんと仲良くしてる話、なんか面白くない」
「お前もかよ」
シルバーは苦笑した。
話しを聞いているうちに、エリアルはどうやらシルバーに嫉妬してしまったようだ。
そうはいっても、シルバーもリーシャもお互いにそういう感情を持って相手を見てはいないため、嫉妬されて八つ当たりをされるのは迷惑だ。
シルバーはエリアルの八つ当たりを避けるため、自分がリーシャをどう見ているのか教えておく事にした。
「あのなぁ、俺はリーシャのことは手のかかる妹としか思ってねぇよ。だからそんな顔止めろ」
「ほんと?」
「ああ、本当だ」
「そっかぁ。ならよかった」
エリアルはシルバーにリーシャを取られる事はないと安心したのか、上機嫌で目の前の肉に噛みつき始めた。
こうして横から見ていると、普通に食べ盛りの子供にしか見えない。これで本性が竜種だというのは今でもたまに疑いたくなる。
「この際だから言っちまうけどよ、俺はリーシャのことを妹みたいに思ってるからこそ心配してた事があるんだ。なんだかわかるか?」
「? ふぁはんふぁい」
「もう少し考えろよ、ったく。俺はな、ぽっと出のお前ら3人、しかも人間じゃないお前らにリーシャを預けてもいいもんなのかって、これでもずっと心配してたんだよ」
リーシャが強いとはいえ、ずっと妹のように面倒を見てきた少女の側に危険な生物を3匹も置かせておくことに心配が無いわけではなかった。
彼らと打ち解けられた今でも、言動を見ていると無理やり嫌がる事をされているのではないだろうかと心配になる事がある。
「……だからリーシャねぇちゃんを僕たちから引き離したいってこと?」
シルバーが思いを零した途端、エリアルの様子が一変した。
口の中の物を嚥下すると、先ほどまでの機嫌の良さが嘘のように消え去り、冷めたような目でじっとシルバーの事を見つめていた。
シルバーはその雰囲気にぞわっとした感覚が背筋を駆け抜けた。けれど、あえて何も感じていないかのように話を続けた。
「引き離せるもんならな。けど、実際できるとは思ってねぇし、リーシャもそれは望んでねぇからそんなことはしやしねえよ。それに、お前らがちゃんとリーシャを守ってやるってんなら、俺はいくらでも手を貸すつもりだ。お前らのことも一応弟みたいに思ってるからな」
シルバーは複雑な気持ちで、困ったような、けれど優しい笑みを浮かべた。
愛娘を嫁に出す父親の気持ちとは、こんな感じなのだろうか、そう思っていた。
エリアルはじっとシルバーを見つめた。
「……シルバーにぃちゃん。おじちゃんって言ってごめんね?」
「なんだよ。それはもう解決してんだから、何回も謝んなっくていいって」
「えへへ。なんとなく言いたかったの。それよりにぃちゃん、これも貰うね」
エリアルはそう言って、シルバーの前に置いている皿の上から肉の塊を持ち去った。
「あっ! この野郎‼ 自分の分食ったからって俺のまで食うんじゃねぇ‼」
「早く食べないのがいけないんだよー」
「お前が教えろっていうから教えてやったのに!」
シルバーはエリアルの鼻をつまんだ。
「いへへへへ‼ やっ、やめてひょ! にぃひゃん‼」
2人が騒がしくしていると、アメリアとの話を終えたリーシャが背後に立っていた。
「なにやってんの、2人とも……」
リーシャは呆れた顔で立っている。
「リーシャ! こいつ、俺がわざわざ買ってきてやった肉をとっとと全部食って、俺の分の肉にまで手ぇ出してきやがった!」
「らってにぃひゃん、じぇんじぇんんてをつけてらかったじゃん!」
「だからって人の分食うやつがあるか、このヤロー!」
「いひゃい、いひゃいっへ!」
エリアルは鼻をつままれ涙目になっている。
その様子はまるで子供の兄弟の喧嘩そのものだった。見ているリーシャが恥ずかしくなってくるほどの。
「もう、なにやってんの、エリアル。あなたが悪いんだから、ちゃんと謝りなさい」
リーシャに諭される間も、大人気ないシルバーから鼻をつままれ続け、耐えられなくなったエリアルは大声で叫んだ。
「ご、ごめんなひゃいぃぃぃぃぃ‼」
エリアルのその声はギルドの外にまで響き渡った。
声を聞いたギルドの者たちは2人の様子を見に来て、騒ぎの真相を知るとみんな一様に爆笑し、立ち去っていったのだった。
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