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魔法学校

親友(1)

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 シーラと別れたリーシャとノアたち3兄弟は、自分たちを待つ人物がいるルーン棟へと急いだ。
 ルーン棟はリーシャのように魔道具を使わずに魔法を発動できる人間が魔法を学ぶ場所となっている。
 そこは別に彼らを隔離するために造られたわけではない。
 ただ万が一、授業中に魔法を暴走させてしまった時に被害を最小限にするため、他の生徒と授業の場を分けているだけの事だ。授業のない時間は他の生徒と合流し、食事したり出かけたりしている。
 ルーン棟の中に入ると、リーシャたちは生徒が講義を受ける部屋へと向かった。講義部屋の出入り口の扉にはガラスがはめ込まれている。
 そこから中を覗くと、リーシャより少し年上の大人しそうな容姿をした女性と、小さな女の子が横並びで椅子に座り何かを話していた。
 久々に見た女性の姿にリーシャの頬が綻んだ。

「ハンナ‼」

 勢いよくドアを全開にしたリーシャは飛びつくような勢いで女性に駆け寄り、彼女の手を握った。

「ひさしぶり‼ 元気だった⁉」
「ええ、元気いっぱいですよ。リーシャ先生の方はどうでしたか? お変わりはないですか?」
「私も元気いっぱい! ちょっと嫌なことはあったけど、楽しくやってるよ」

 リーシャとハンナと呼ばれる女性は嬉しそうに微笑み合った。
 ハンナの横に座っていた少女はというと、リーシャの登場と同時にすぐさま立ち上がり、ハンナの後ろへ隠れてしまった。
 警戒しているようで、様子を窺うように陰からこっそりとリーシャのことを見ている。どうやら、いきなり現れた見知らぬ人間の大声にかなり驚いてしまったようだ。
 それに気が付いたリーシャはしまったという顔をし、頬を人差し指でかいた。
 
「あ、ごめん。ちょっと大きい声出しすぎたかな?」
「ふふっ、大丈夫ですよ。先生の大声には慣れてますから。この子はちょっとびっくりしてしまったみたいですけど」
「あはは……ごめん。けど、ハンナも1年ぶりなんだしもっと、うわぁぁ! って感じで喜んでくれてもいいんじゃない? 一方通行過ぎて寂しいよ」
「ええと……これでもこの上ないくらいに喜んでいるのですが……」

 ハンナは少し苦笑していた。
 彼女、ハンナ・マグダレーノは感情の起伏があまり表に出ない。それはリーシャもわかっている。
 けれど、仲の良い相手に会ったのだ。一緒に会えた嬉しさを分かち合いたいと思い、冗談も込めてそう言わずにはいられなかった。


 リーシャがハンナと初めて出会ったのは去年の事。一緒に過ごした期間は半月ほどだった。
 いつもならその程度の期間で、リーシャが他人にここまで気を許す事はない。
 今でこそかなり親しい関係にあるシルバーとアメリアでさえ、用事のないリーシャが自分から話しかけに行くようになるまでに何カ月もの時間を費やしていた。しかもかなり嫌そうな顔をされながらだった。
 けれど、ハンナは違った。
 彼女の傍は心地よく、初対面の相手だと距離を置きたがるリーシャも、不思議とすぐに打ち解けることができたのだ。


 2人で笑いあっていると、ハンナの視線がリーシャの背後へと移った。完全に存在を忘れていたけれど、その視線の先にはノアたち3兄弟がいるはずだ。
 振り向くと、ノアたちは入り口付近で不満そうに佇んでいる。
 リーシャはいかにも「最初から話が終わったら紹介するつもりでした」というような感じを漂わせて手招きをした。

「3人もこっちに来てよ」
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