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竜の国
名前(2)
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半ば強制的に話し合いの決着がつくと、ルシアは子供竜を胸の高さまで下ろし、腕の中へと抱え直した。そして指で鼻先を突きながら笑いかける。
「だとさ。よかったなー、チビ助。1番上の兄ちゃんからもお許しが出たぞー。これでお前もうちの子だからなー」
「キュッキュッ!」
さすがエリアルの面倒を見てきただけあって、ルシアは子供のあやし方がうまい。遊んでもらっていると思っているのか、子供の竜は大喜びだ。
そんな彼が日中ほとんど子育てに参加できないのは残念だった。
「ってかさ、こいつの名前どうすんだ? 俺らが面倒見るってゆーなら、名前ないと不便じゃね?」
「あっ、そうだよね」
「言い出したのリーシャなんだろ? だったらリーシャが決めてやれよ」
「うん、わかった。そうだなぁ。何て名前にしよう……というか、今さらなんだけどこの子って男の子、なんだよね?」
ノアがやたらとリーシャに近づけたがらなかったため、勝手に雄だと思い込んでいた。
リーシャが尋ねると、ルシアはじっと小さな竜の腹部あたりを見始めた。どうやらルシアもノアの反応で勝手に性別を決めつけていたらしい。
「あー、うん。そうみたいだな」
「男の子か。うーんと、じゃあ…………ルニル。ルニルってどうかな?」
リーシャが子供の竜に「ルニル」と呼びかけると、当然ながらキョトンとした反応が返ってきた。本人がわかっていないのなら、3兄弟の判断にゆだねるしかない。
リーシャはルシアの反応を窺った。
「いーんじゃねぇの? そもそも、こいつはまだ何もわかってないんだし。最悪、チビ助って呼んでても怒らないだろうしさ」
ルシアは「なぁー」と小さな竜に話し掛けた。
小さな竜もルシアの真似をして鳴いた。まるでいいよと言っているようだった。けれどそれはただの偶然。まだ人間の言葉どころか竜の言葉すらよくわかっていないようなのだから。
とはいえ、チビ助という呼び名は問題しかない。
「さすがにそれは……この子が言葉覚えた時、嫌がると思うよ。あと嫌われるかも」
「やっぱそう思うか?」
「あたりまえだよ。それに、名前通り小さい竜に育ったらどうすんのよ」
「んー、それは可愛そうだな。なら、やっぱり名前はルニルがいいんじゃねーの? 兄貴とエリアルもいいだろ?」
ルシアの問いかけにノアとエリアルも同意を示した。
「だとさ」
「それじゃあ、この子の名前はルニルに決まりだね。よろしくね、ルニル」
リーシャが名前を呼んで顔を近づけるとルニルは両手を伸ばし、じたばたし始めた。
「リーシャに抱っこして欲しいみたいだぞ」
「そうなの? ルニル―、おいでー」
こうして呼んでいれば、数日のうちにルニルとは自分の事だと覚えるのだろう。
リーシャはルニルを受け取ると、キュッと抱きしめた。ルニルも満足したようで大人しくなり、されているのと同じように抱きしめ返してくる。
(今度は竜らしく育つように頑張らないと)
すでにこの行動自体が竜の親としては逸脱しているのだけれど、リーシャはその事に気がついていないのだった。
「だとさ。よかったなー、チビ助。1番上の兄ちゃんからもお許しが出たぞー。これでお前もうちの子だからなー」
「キュッキュッ!」
さすがエリアルの面倒を見てきただけあって、ルシアは子供のあやし方がうまい。遊んでもらっていると思っているのか、子供の竜は大喜びだ。
そんな彼が日中ほとんど子育てに参加できないのは残念だった。
「ってかさ、こいつの名前どうすんだ? 俺らが面倒見るってゆーなら、名前ないと不便じゃね?」
「あっ、そうだよね」
「言い出したのリーシャなんだろ? だったらリーシャが決めてやれよ」
「うん、わかった。そうだなぁ。何て名前にしよう……というか、今さらなんだけどこの子って男の子、なんだよね?」
ノアがやたらとリーシャに近づけたがらなかったため、勝手に雄だと思い込んでいた。
リーシャが尋ねると、ルシアはじっと小さな竜の腹部あたりを見始めた。どうやらルシアもノアの反応で勝手に性別を決めつけていたらしい。
「あー、うん。そうみたいだな」
「男の子か。うーんと、じゃあ…………ルニル。ルニルってどうかな?」
リーシャが子供の竜に「ルニル」と呼びかけると、当然ながらキョトンとした反応が返ってきた。本人がわかっていないのなら、3兄弟の判断にゆだねるしかない。
リーシャはルシアの反応を窺った。
「いーんじゃねぇの? そもそも、こいつはまだ何もわかってないんだし。最悪、チビ助って呼んでても怒らないだろうしさ」
ルシアは「なぁー」と小さな竜に話し掛けた。
小さな竜もルシアの真似をして鳴いた。まるでいいよと言っているようだった。けれどそれはただの偶然。まだ人間の言葉どころか竜の言葉すらよくわかっていないようなのだから。
とはいえ、チビ助という呼び名は問題しかない。
「さすがにそれは……この子が言葉覚えた時、嫌がると思うよ。あと嫌われるかも」
「やっぱそう思うか?」
「あたりまえだよ。それに、名前通り小さい竜に育ったらどうすんのよ」
「んー、それは可愛そうだな。なら、やっぱり名前はルニルがいいんじゃねーの? 兄貴とエリアルもいいだろ?」
ルシアの問いかけにノアとエリアルも同意を示した。
「だとさ」
「それじゃあ、この子の名前はルニルに決まりだね。よろしくね、ルニル」
リーシャが名前を呼んで顔を近づけるとルニルは両手を伸ばし、じたばたし始めた。
「リーシャに抱っこして欲しいみたいだぞ」
「そうなの? ルニル―、おいでー」
こうして呼んでいれば、数日のうちにルニルとは自分の事だと覚えるのだろう。
リーシャはルニルを受け取ると、キュッと抱きしめた。ルニルも満足したようで大人しくなり、されているのと同じように抱きしめ返してくる。
(今度は竜らしく育つように頑張らないと)
すでにこの行動自体が竜の親としては逸脱しているのだけれど、リーシャはその事に気がついていないのだった。
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