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#4 家族
32 そうなのかもね
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罪人として護送されるのかと思ったら、そうではないらしい。
ジャックは私のことを、罰するつもりはないと言った。
「処刑しないのか?」
「可愛いなぁ、お前。俺すごい好きだよ。めちゃくちゃ好きだよ。もうすごいめっちゃ好きだよ大好きだよ」
「何故処刑しない?」
「好きだわ俺。抱きたい。抱かせて。生まれたての頃みたいにお姫様抱っこさせて」
「私の行為は反逆罪に相当する。私はお前に捕らえられたら八つ裂きにされると神に誓い、贖罪までの猶予を与えられたんだ。処刑されないと困る」
「ふ、ふふ、そっか。俺の愛しいレビィは俺の助けを望んでるのか」
「そうだな。せっかく死ぬなら、お前の鬱憤を晴らす役に立てればいいと思っている」
「そっかそっか、可愛いなあ。天使じゃん」
「おいジャック、お前は私の話を聞いていないだろう」
「ふふっ」
アインが私の横で噴き出した。
私は思わずムッとする。
私のことを馬鹿にしているのだ。
「笑うな」
「アンタの会話って面白い。全然嚙み合ってない」
「馬鹿にしないでくれ」
「馬鹿にしてない。可愛いなって思ったの」
「私を女児か何かと勘違いしているのか」
私は目を伏せて、それから正面に座るジャックを見る。
いつもの笑顔だ。
その隣のブロウは、そのさらに隣の実験体5924を見つめている。気持ち悪い。
その実験体5924はというと、アインのことをいたく気に入っている。
「アインさんってとってもお美しい方ですよね! そう思いませんか、ブロウ」
「俺はアインさんアインさん騒いでるお前が可愛すぎて泣きそう」
「ブロウってどうしてそんなに頭が悪いんですか?」
「待って、本当に泣きそうなんだけど」
「所長様はブロウと違って見る目がおありなんですね」
「待ってブライド。やめてお願い、レビィと比べないで。レビィと比べられたら俺に勝ち目がない」
「私は貴方のココアがとても好きですよ。元気を出して下さい」
「ねえ、俺それだけなの? 俺ってそれ以外に何もないの? 病みそうなんだけど」
「どうしてですか? それは私にとって何より大切なことです」
「くっそ可愛い……」
アインは、そんな二人を無表情で眺めている。
彼女は大陸に来てから、少し表情豊かになったが、私以外と対するときはその限りではない。少し優越感を覚える。
「アンタって、アンタの恋人にも敬語で話すの?」
「わ、私ですか? 私はその、えへへ、これが落ち着くと言いますか……えへへ」
「ふぅん。アンタって可愛い子だよね」
アインはそう言って、目を細めて実験体5924を見る。
5924の方は笑っていた。
嬉しいのだろう。アインに憧れる気持ちは私にも理解できる。
揺れる馬車の中、彼女は本当に嬉しそうだった。
私はその姿に、記憶を失っていた頃の私を見ていた。
「アインさんは、すっごくお綺麗です! 私、一目見た時からずっとそう思っているんですよ!」
「ふぅん、そう? あまり言われたことないけど」
「お前は美人だ」
私がそう言うと、アインは私の方を向いた。
意外そうな顔をしている。
「アンタもそう思うの?」
「ああ、そうだな」
「ふぅん。アンタがそう言うならそうなのかもね」
アインはそう言って、窓の外に目を移した。
六人乗りの車だが、私とアインは三人掛けの座席に二人で座っている。
ジャックは確かに疲れているようで、さっきから変わらずずっと笑っているが、目が虚ろで心ここにあらずだ。会話も覚束ない。
「ジャック、大丈夫か?」
「ん? 心配してくれんの? 優しいな、やっぱりレビィは。ほんっといい子だ、本当にいい子なんだよなぁ……あはは、可愛いなぁ……」
「……アイン、ジャックに何かあったのか」
「疲れてるんじゃない。ここ最近寝てないみたいだし」
「業務が滞っているなら私が手伝おう」
「いーんだよ。このくらい平気さ、お前がいてくれるってだけで、俺は十分なんだ」
「よく分からんな」
「分かんなくてもいーよ。俺ぁ十分すぎるくらいに満足してるんだ。お前が俺の前にいて、こうして元気な姿で笑ってる。それで十分なんだよ」
「……そうか」
そういえば、アインはジャックが私のことを大切にしていると言っていた。
なるほど、大切にしているというなら、処刑しようとは思わないだろう。
考えてみれば当然のことだった。
私がアインを見ると、彼女は私の方を向いて少し笑った。
「いい子、いい子」
まるで子供をあやすようだと、私は思った。
ジャックは私のことを、罰するつもりはないと言った。
「処刑しないのか?」
「可愛いなぁ、お前。俺すごい好きだよ。めちゃくちゃ好きだよ。もうすごいめっちゃ好きだよ大好きだよ」
「何故処刑しない?」
「好きだわ俺。抱きたい。抱かせて。生まれたての頃みたいにお姫様抱っこさせて」
「私の行為は反逆罪に相当する。私はお前に捕らえられたら八つ裂きにされると神に誓い、贖罪までの猶予を与えられたんだ。処刑されないと困る」
「ふ、ふふ、そっか。俺の愛しいレビィは俺の助けを望んでるのか」
「そうだな。せっかく死ぬなら、お前の鬱憤を晴らす役に立てればいいと思っている」
「そっかそっか、可愛いなあ。天使じゃん」
「おいジャック、お前は私の話を聞いていないだろう」
「ふふっ」
アインが私の横で噴き出した。
私は思わずムッとする。
私のことを馬鹿にしているのだ。
「笑うな」
「アンタの会話って面白い。全然嚙み合ってない」
「馬鹿にしないでくれ」
「馬鹿にしてない。可愛いなって思ったの」
「私を女児か何かと勘違いしているのか」
私は目を伏せて、それから正面に座るジャックを見る。
いつもの笑顔だ。
その隣のブロウは、そのさらに隣の実験体5924を見つめている。気持ち悪い。
その実験体5924はというと、アインのことをいたく気に入っている。
「アインさんってとってもお美しい方ですよね! そう思いませんか、ブロウ」
「俺はアインさんアインさん騒いでるお前が可愛すぎて泣きそう」
「ブロウってどうしてそんなに頭が悪いんですか?」
「待って、本当に泣きそうなんだけど」
「所長様はブロウと違って見る目がおありなんですね」
「待ってブライド。やめてお願い、レビィと比べないで。レビィと比べられたら俺に勝ち目がない」
「私は貴方のココアがとても好きですよ。元気を出して下さい」
「ねえ、俺それだけなの? 俺ってそれ以外に何もないの? 病みそうなんだけど」
「どうしてですか? それは私にとって何より大切なことです」
「くっそ可愛い……」
アインは、そんな二人を無表情で眺めている。
彼女は大陸に来てから、少し表情豊かになったが、私以外と対するときはその限りではない。少し優越感を覚える。
「アンタって、アンタの恋人にも敬語で話すの?」
「わ、私ですか? 私はその、えへへ、これが落ち着くと言いますか……えへへ」
「ふぅん。アンタって可愛い子だよね」
アインはそう言って、目を細めて実験体5924を見る。
5924の方は笑っていた。
嬉しいのだろう。アインに憧れる気持ちは私にも理解できる。
揺れる馬車の中、彼女は本当に嬉しそうだった。
私はその姿に、記憶を失っていた頃の私を見ていた。
「アインさんは、すっごくお綺麗です! 私、一目見た時からずっとそう思っているんですよ!」
「ふぅん、そう? あまり言われたことないけど」
「お前は美人だ」
私がそう言うと、アインは私の方を向いた。
意外そうな顔をしている。
「アンタもそう思うの?」
「ああ、そうだな」
「ふぅん。アンタがそう言うならそうなのかもね」
アインはそう言って、窓の外に目を移した。
六人乗りの車だが、私とアインは三人掛けの座席に二人で座っている。
ジャックは確かに疲れているようで、さっきから変わらずずっと笑っているが、目が虚ろで心ここにあらずだ。会話も覚束ない。
「ジャック、大丈夫か?」
「ん? 心配してくれんの? 優しいな、やっぱりレビィは。ほんっといい子だ、本当にいい子なんだよなぁ……あはは、可愛いなぁ……」
「……アイン、ジャックに何かあったのか」
「疲れてるんじゃない。ここ最近寝てないみたいだし」
「業務が滞っているなら私が手伝おう」
「いーんだよ。このくらい平気さ、お前がいてくれるってだけで、俺は十分なんだ」
「よく分からんな」
「分かんなくてもいーよ。俺ぁ十分すぎるくらいに満足してるんだ。お前が俺の前にいて、こうして元気な姿で笑ってる。それで十分なんだよ」
「……そうか」
そういえば、アインはジャックが私のことを大切にしていると言っていた。
なるほど、大切にしているというなら、処刑しようとは思わないだろう。
考えてみれば当然のことだった。
私がアインを見ると、彼女は私の方を向いて少し笑った。
「いい子、いい子」
まるで子供をあやすようだと、私は思った。
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