84 / 143
08 異世界
説得と和解
しおりを挟む
エナさんの長い話が終わるころには、既に日が暮れていた。
明らかに太陽はないのに、この世界でも夜は暗く、朝は明るくなるみたいだ。どういう仕組みなんだろう、とわたしは思った。
エナさんは、あの不味い水を美味しそうに細めてごくごく飲んでいる。
「どうかな。僕らがどんな想いで、君を召喚したか理解してくれた? それでもなお、君は諦め悪く、生にしがみつくつもりなのかな?」
エナさんは、やっぱりわたしに死んでほしいみたいだった。
わたしは、なんていうか、困っていた。
死にたい、とは、思わない。死にたくない。キースもわたしの帰りを待ってる。
でも同時に、それはわたしの存在に矛盾してしまう。
エナさんがわたしを召喚しなければ、わたしはこの世界に生まれなくて。
わたしがこの世界に生まれなければ、わたしは「生きたい」なんて思わなかった。
でもわたしが「生きたい」と思えば、この世界は滅びてしまう。
神様が滅びるって言ってた世界は、わたしのいた世界じゃなく、こっちの世界のことだったのだろうか。
神様はこの都市が滅びることを望んでいて、だからわたしに、世界樹の都市に行ってほしくなかった?
……いや、だとしても、やっぱり疑問が残る。
どうしてわたしは、この都市のちょうど入り口に転送されたのか、とか。
仮にそれがエナさんの指示だったとしても、王子様のこともある。
王子様はわたしを「神様に言われて世界樹の都市に送り届ける」と言った。
そして恐らく、王子様にそう言ったのと同じ神様がダンジョンに機械を置いてほしいと頼んだ。
王子様はそれに従った。
「……あ」
そこでわたしは、気がついた。
「あの、エナさん。聞きたいんですけど」
「この後に及んでまだ質問? いいかげん僕喋りすぎて疲れたんだけど」
「ごめんなさい。でも、大事なことなんです。……わたしが、仮に死ぬとしても、死なないにしても……この世界と、この上の世界って、関係あるんですか?」
「知らないよそんなの。言ったじゃん、僕らは上に世界があることすら知らなかったの。そっちもそうなんでしょ? 違う?」
「でも……そうだとするなら、わたしが犠牲になったところで、この問題は解決しないと思うんです。エナさんの話を聞いてると、なんていうか、なんとなくだけど、上の世界と似てると思ってて」
「上の世界も、マナの不足で苦しんでるの?」
「そうじゃないんですけど……上の世界は、今、魔獣が大量発生してるんです。わたし、神様が授けた機械がダンジョンに置いてあるって言ったと思うんですけど」
「ああ、言ってたね。それ、本当? 僕、口から出まかせじゃないかと疑ってるんだけど」
「本当です。それに……エナさん、さっき、『ダンジョンでマナを生産したけど、あるとき急に、マナが吸収されるようになった』って言ってましたよね? それ、5年前なんですよね?」
「そうだね、だいたいそのぐらいかな」
「それで、今は『海を中心に各地で取り出してる』って。それって、ダンジョンにしたのと同じ方法なんですよね?」
「そうだよ。それがどうかしたの?」
「たぶん、この都市と上の世界は繋がってるんです。少なくとも、ダンジョンと海は確実に。それでなんですけど……たぶん、エナさんが、マナを生産すると、魔獣が発生するんだと思うんです」
「……うん? それで?」
「だから……その、エナさんがわたしを使ってマナをたくさん作っちゃったら、上の世界が大変なことになるんじゃないかなって」
「え、知らないよそんなの。どうでもいいじゃん。だって僕に関係ないし。むしろ君が害されたことに怒り狂うかもしれない世界が滅びるんだから、プラスでしょ」
エナさんは全く動揺することなくそう言った。
サイコパスってこういう人のことを言うのかもしれない。
「……醤油さんもいるんですよ?」
「まあ、それはいいんじゃない? 僕は全然構わないよ。なんなら世界が滅びた後で、醤油の魂だけ回収できればそれで十分だし」
相変わらず、エナさんはとてもドライだ。
たぶん、あまり感情で動くタイプの人ではないのだと思う。
わたしがどんなにお願いしても、ダメなものはダメ、なのだろう。
でも同時に、分かりやすくもある。
「……えっと、これはわたしの考えなんですけど。魔獣とか魔物って、倒すと、体の中から魔石が出て来るんです。つまり、マナ・ストーンが。それって、つまり、体が魔力でできてるってことじゃないんですか?
「今の状態って、たぶん、エナさんが頑張って作ってるマナが、全部上に流れちゃってて、そのせいで魔獣が大量発生してる……ってことだと思うんです」
エナさんは、その考えに関しては少し興味を示してくれた。
「仮にそうだとして、僕にどうしろって言うの? まさか今のマナの生産すらやめろってこと?」
エナさんは、わたしを試すように聞き返す。
「違います。やっぱり、話し合いが必要なんじゃないかなって……上の世界には、自然にある魔力を動かせる、『魔導士』って人もいるんです。みんなで力を合わせれば、もしかしたら、この都市に、マナを送り込めるかもしれない……それに機械は、やっぱり怪しいです。撤去してもらえるように、頼んだ方がいいと思うんです」
「だからさ、それ本当にできるの? 上の世界には何の関係もないじゃん」
「そんなことありません! 最近の魔獣の発生の原因は、機械なんじゃないかっていうのは、言われてました。何らかの影響があるっていうのは察してるんです。
「でも、撤去したら、またダンジョンから魔獣が溢れ出すかもしれない。だから、このままにしとこうっていうのが考えみたいです。だから、もしダンジョンから魔獣が出て来ることがないって分かれば、きっと撤去してくれます」
「ふーん。魔獣ね。その感じだと、そっちの世界の人間って、あんまり武力がないのかな? 獣なんて、銃でも使えば簡単に殺せそうなのに」
「え……っと、どうなのかな。分からないです。でも、危険だって言われてたし、たぶんそうだと思います」
「その魔獣って奴さえ制御できれば、何の問題もないの?」
「はい、そうだと思います。わたしが聞いた限りだと……一応、宝具は王子様がくれた物だから、退かすときは聞いた方がいいかもしれないですけど、でも王子様も別にどうでもいいとか言ってたし、大丈夫だと思います」
「王子様ってさぁ……そっちの世界って、まだ絶対王政なの? 前時代的すぎだよ。蛮族の集まりじゃないの?」
「そんなことないです。お城はあるけど、王様は……いるのかな? 貴族さんはいるけど……でも、みんな仲良しですよ。王子様っていうのは、闇の峡谷っていうところに住んでる古代闇妖精の王国の王子様です」
「面白い民族がいるんだね、上の世界って。その王子様ってのが機械を持ってきたの?」
「王子様は、光の民……人間とか、獣人さんとか、を助けようとしてくれたんですよ。神様に言われたから、貸してあげたって言ってたけど……」
「は?」
「その神様が、エナさんの敵の神様なんじゃないですか? だったらその機械、絶っ対、悪いことしてますよ! エナさんは上の世界の人のこと、あんまり信じてないみたいですけど、わたしは信じてます。自分たちが知らない世界のことだからって、苦しんでるのを放っておくような、そんな人たちじゃないんです!」
「……ふーん」
「わたしは死にたくないです。死んじゃダメだと思うんです。死ぬのは簡単だけど、わたしが死んだら、ここのことを知ってる人は、本当に誰もいなくなっちゃう。今のところ、ここに来られるのはわたしだけなんです。わたしには、生きて果たすべき、役目があると思います!」
わたしがそう言うとほぼ同時に、部屋の扉が開いた。
わたしばかりでなく、エナさんまでもが驚いて「わ」と声を上げる。
「彼女の言う通りだよ、総督。我々は会話すべきだ」
それは燃えるような赤い髪を持つ、隻眼の女性だった。彼女は力強い目をし、仁王立ちしている。
「あぁ、聞いてたんだ」
とエナさんが言った。
「総督の知識と技術力はよく理解しているが、彼らが我々に敵対するという確証がない以上、我々はまず対話すべきだ。我々において最も優先すべきは大樹の保持と種の存続ではないか?」
「それは分かってるよ。リスクの問題だ。彼女を利用すれば確実に助かるんだよ。分かる? 賭けるのは勝手だけど、失うものは人類だよ。この世界なんだよ?」
「彼女を犠牲にする方が、将来的なリスクは高いだろう。我々にとってはただのイズミでも、幼い少女だ。大切に想う者がいる。彼女を傷つければ、彼らは我々に敵対する。どうしようもなく、確実に。
「彼女によれば干渉の可能性はないそうだが、今後永遠にそうだとは限らない。そうなったとき、彼らの我々に対する認識が、『幼い少女を無慈悲に殺した蛮族』では困る。今度は異界人と戦うことになりかねないとは思わないか?」
「知らないよそんなの。僕は守るのは得意だから、攻めてきたら皆殺しにすればいいじゃん」
「総督はそれでいいかもしれないが、我々の子孫はどうなる? 総督とて、永遠に君臨することは難しいだろう。そして我々も、永遠の君臨を許すつもりはない」
「……あー、そう。君はそういう考えなわけね」
エナさんは露骨に嫌な顔をした。
「さっきディーは、こっそり上に行って機械だけぶち壊そうって言ってたけど、君はそれも嫌なんだね? 正面切って交渉して、和解を持ちかけて……そうしないと嫌ってこと? はぁ……そんなんだから、君は負け犬なんだよ」
「それでも、オレは自分が間違ってるとは思わない。人類の9割以上が死滅した世界で、今、生きてるんだ。それが答えだよ」
「思い上がるな。お前は、生きてようが死んでようが何の影響もないし、お前が死ぬとデコイが壊れそうだから生かしてるだけなんだから。
「でも……はぁ……お前の言う通りにするのはほーんとムカつくし、最悪の気分だけど……それが最善だろうってことは、認めざるを得ないか。はー…………じゃ、スズネちゃん。今日はもう寝なよ。明日、改めて全員に紹介するからさ」
「えっ?」
「だーかーらー、生かしてあげるって言ってるの! 死にたくないんでしょ? じゃあいいよ、生きてても。ただし役には立ってもらうからね! ってこと。分かった? 子供だけど女の子だし間違いが起こったら大笑いしてあげるから、適当なところで寝れば? おやすみ!」
エナさんはそう言って、部屋の扉を開けて出ていった。
明らかに太陽はないのに、この世界でも夜は暗く、朝は明るくなるみたいだ。どういう仕組みなんだろう、とわたしは思った。
エナさんは、あの不味い水を美味しそうに細めてごくごく飲んでいる。
「どうかな。僕らがどんな想いで、君を召喚したか理解してくれた? それでもなお、君は諦め悪く、生にしがみつくつもりなのかな?」
エナさんは、やっぱりわたしに死んでほしいみたいだった。
わたしは、なんていうか、困っていた。
死にたい、とは、思わない。死にたくない。キースもわたしの帰りを待ってる。
でも同時に、それはわたしの存在に矛盾してしまう。
エナさんがわたしを召喚しなければ、わたしはこの世界に生まれなくて。
わたしがこの世界に生まれなければ、わたしは「生きたい」なんて思わなかった。
でもわたしが「生きたい」と思えば、この世界は滅びてしまう。
神様が滅びるって言ってた世界は、わたしのいた世界じゃなく、こっちの世界のことだったのだろうか。
神様はこの都市が滅びることを望んでいて、だからわたしに、世界樹の都市に行ってほしくなかった?
……いや、だとしても、やっぱり疑問が残る。
どうしてわたしは、この都市のちょうど入り口に転送されたのか、とか。
仮にそれがエナさんの指示だったとしても、王子様のこともある。
王子様はわたしを「神様に言われて世界樹の都市に送り届ける」と言った。
そして恐らく、王子様にそう言ったのと同じ神様がダンジョンに機械を置いてほしいと頼んだ。
王子様はそれに従った。
「……あ」
そこでわたしは、気がついた。
「あの、エナさん。聞きたいんですけど」
「この後に及んでまだ質問? いいかげん僕喋りすぎて疲れたんだけど」
「ごめんなさい。でも、大事なことなんです。……わたしが、仮に死ぬとしても、死なないにしても……この世界と、この上の世界って、関係あるんですか?」
「知らないよそんなの。言ったじゃん、僕らは上に世界があることすら知らなかったの。そっちもそうなんでしょ? 違う?」
「でも……そうだとするなら、わたしが犠牲になったところで、この問題は解決しないと思うんです。エナさんの話を聞いてると、なんていうか、なんとなくだけど、上の世界と似てると思ってて」
「上の世界も、マナの不足で苦しんでるの?」
「そうじゃないんですけど……上の世界は、今、魔獣が大量発生してるんです。わたし、神様が授けた機械がダンジョンに置いてあるって言ったと思うんですけど」
「ああ、言ってたね。それ、本当? 僕、口から出まかせじゃないかと疑ってるんだけど」
「本当です。それに……エナさん、さっき、『ダンジョンでマナを生産したけど、あるとき急に、マナが吸収されるようになった』って言ってましたよね? それ、5年前なんですよね?」
「そうだね、だいたいそのぐらいかな」
「それで、今は『海を中心に各地で取り出してる』って。それって、ダンジョンにしたのと同じ方法なんですよね?」
「そうだよ。それがどうかしたの?」
「たぶん、この都市と上の世界は繋がってるんです。少なくとも、ダンジョンと海は確実に。それでなんですけど……たぶん、エナさんが、マナを生産すると、魔獣が発生するんだと思うんです」
「……うん? それで?」
「だから……その、エナさんがわたしを使ってマナをたくさん作っちゃったら、上の世界が大変なことになるんじゃないかなって」
「え、知らないよそんなの。どうでもいいじゃん。だって僕に関係ないし。むしろ君が害されたことに怒り狂うかもしれない世界が滅びるんだから、プラスでしょ」
エナさんは全く動揺することなくそう言った。
サイコパスってこういう人のことを言うのかもしれない。
「……醤油さんもいるんですよ?」
「まあ、それはいいんじゃない? 僕は全然構わないよ。なんなら世界が滅びた後で、醤油の魂だけ回収できればそれで十分だし」
相変わらず、エナさんはとてもドライだ。
たぶん、あまり感情で動くタイプの人ではないのだと思う。
わたしがどんなにお願いしても、ダメなものはダメ、なのだろう。
でも同時に、分かりやすくもある。
「……えっと、これはわたしの考えなんですけど。魔獣とか魔物って、倒すと、体の中から魔石が出て来るんです。つまり、マナ・ストーンが。それって、つまり、体が魔力でできてるってことじゃないんですか?
「今の状態って、たぶん、エナさんが頑張って作ってるマナが、全部上に流れちゃってて、そのせいで魔獣が大量発生してる……ってことだと思うんです」
エナさんは、その考えに関しては少し興味を示してくれた。
「仮にそうだとして、僕にどうしろって言うの? まさか今のマナの生産すらやめろってこと?」
エナさんは、わたしを試すように聞き返す。
「違います。やっぱり、話し合いが必要なんじゃないかなって……上の世界には、自然にある魔力を動かせる、『魔導士』って人もいるんです。みんなで力を合わせれば、もしかしたら、この都市に、マナを送り込めるかもしれない……それに機械は、やっぱり怪しいです。撤去してもらえるように、頼んだ方がいいと思うんです」
「だからさ、それ本当にできるの? 上の世界には何の関係もないじゃん」
「そんなことありません! 最近の魔獣の発生の原因は、機械なんじゃないかっていうのは、言われてました。何らかの影響があるっていうのは察してるんです。
「でも、撤去したら、またダンジョンから魔獣が溢れ出すかもしれない。だから、このままにしとこうっていうのが考えみたいです。だから、もしダンジョンから魔獣が出て来ることがないって分かれば、きっと撤去してくれます」
「ふーん。魔獣ね。その感じだと、そっちの世界の人間って、あんまり武力がないのかな? 獣なんて、銃でも使えば簡単に殺せそうなのに」
「え……っと、どうなのかな。分からないです。でも、危険だって言われてたし、たぶんそうだと思います」
「その魔獣って奴さえ制御できれば、何の問題もないの?」
「はい、そうだと思います。わたしが聞いた限りだと……一応、宝具は王子様がくれた物だから、退かすときは聞いた方がいいかもしれないですけど、でも王子様も別にどうでもいいとか言ってたし、大丈夫だと思います」
「王子様ってさぁ……そっちの世界って、まだ絶対王政なの? 前時代的すぎだよ。蛮族の集まりじゃないの?」
「そんなことないです。お城はあるけど、王様は……いるのかな? 貴族さんはいるけど……でも、みんな仲良しですよ。王子様っていうのは、闇の峡谷っていうところに住んでる古代闇妖精の王国の王子様です」
「面白い民族がいるんだね、上の世界って。その王子様ってのが機械を持ってきたの?」
「王子様は、光の民……人間とか、獣人さんとか、を助けようとしてくれたんですよ。神様に言われたから、貸してあげたって言ってたけど……」
「は?」
「その神様が、エナさんの敵の神様なんじゃないですか? だったらその機械、絶っ対、悪いことしてますよ! エナさんは上の世界の人のこと、あんまり信じてないみたいですけど、わたしは信じてます。自分たちが知らない世界のことだからって、苦しんでるのを放っておくような、そんな人たちじゃないんです!」
「……ふーん」
「わたしは死にたくないです。死んじゃダメだと思うんです。死ぬのは簡単だけど、わたしが死んだら、ここのことを知ってる人は、本当に誰もいなくなっちゃう。今のところ、ここに来られるのはわたしだけなんです。わたしには、生きて果たすべき、役目があると思います!」
わたしがそう言うとほぼ同時に、部屋の扉が開いた。
わたしばかりでなく、エナさんまでもが驚いて「わ」と声を上げる。
「彼女の言う通りだよ、総督。我々は会話すべきだ」
それは燃えるような赤い髪を持つ、隻眼の女性だった。彼女は力強い目をし、仁王立ちしている。
「あぁ、聞いてたんだ」
とエナさんが言った。
「総督の知識と技術力はよく理解しているが、彼らが我々に敵対するという確証がない以上、我々はまず対話すべきだ。我々において最も優先すべきは大樹の保持と種の存続ではないか?」
「それは分かってるよ。リスクの問題だ。彼女を利用すれば確実に助かるんだよ。分かる? 賭けるのは勝手だけど、失うものは人類だよ。この世界なんだよ?」
「彼女を犠牲にする方が、将来的なリスクは高いだろう。我々にとってはただのイズミでも、幼い少女だ。大切に想う者がいる。彼女を傷つければ、彼らは我々に敵対する。どうしようもなく、確実に。
「彼女によれば干渉の可能性はないそうだが、今後永遠にそうだとは限らない。そうなったとき、彼らの我々に対する認識が、『幼い少女を無慈悲に殺した蛮族』では困る。今度は異界人と戦うことになりかねないとは思わないか?」
「知らないよそんなの。僕は守るのは得意だから、攻めてきたら皆殺しにすればいいじゃん」
「総督はそれでいいかもしれないが、我々の子孫はどうなる? 総督とて、永遠に君臨することは難しいだろう。そして我々も、永遠の君臨を許すつもりはない」
「……あー、そう。君はそういう考えなわけね」
エナさんは露骨に嫌な顔をした。
「さっきディーは、こっそり上に行って機械だけぶち壊そうって言ってたけど、君はそれも嫌なんだね? 正面切って交渉して、和解を持ちかけて……そうしないと嫌ってこと? はぁ……そんなんだから、君は負け犬なんだよ」
「それでも、オレは自分が間違ってるとは思わない。人類の9割以上が死滅した世界で、今、生きてるんだ。それが答えだよ」
「思い上がるな。お前は、生きてようが死んでようが何の影響もないし、お前が死ぬとデコイが壊れそうだから生かしてるだけなんだから。
「でも……はぁ……お前の言う通りにするのはほーんとムカつくし、最悪の気分だけど……それが最善だろうってことは、認めざるを得ないか。はー…………じゃ、スズネちゃん。今日はもう寝なよ。明日、改めて全員に紹介するからさ」
「えっ?」
「だーかーらー、生かしてあげるって言ってるの! 死にたくないんでしょ? じゃあいいよ、生きてても。ただし役には立ってもらうからね! ってこと。分かった? 子供だけど女の子だし間違いが起こったら大笑いしてあげるから、適当なところで寝れば? おやすみ!」
エナさんはそう言って、部屋の扉を開けて出ていった。
48
あなたにおすすめの小説
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~
うみ
ファンタジー
「魔法のリンゴあります! いかがですか!」
探索者ギルドで満面の笑みを浮かべ、元気よく魔法のリンゴを売る幼い少女チハル。
探索者たちから可愛がられ、魔法のリンゴは毎日完売御礼!
単に彼女が愛らしいから売り切れているわけではなく、魔法のリンゴはなかなかのものなのだ。
そんな彼女には「夜」の仕事もあった。それは、迷宮で迷子になった探索者をこっそり助け出すこと。
小さな彼女には秘密があった。
彼女の奏でる「魔曲」を聞いたモンスターは借りてきた猫のように大人しくなる。
魔曲の力で彼女は安全に探索者を救い出すことができるのだ。
そんな彼女の夢は「魔晶石」を集め、幻獣を喚び一緒に暮らすこと。
たくさんのもふもふ幻獣と暮らすことを夢見て今日もチハルは「魔法のリンゴ」を売りに行く。
実は彼女は人間ではなく――その正体は。
チハルを中心としたほのぼの、柔らかなおはなしをどうぞお楽しみください。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる