滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢

文字の大きさ
92 / 143
09 交流の成果

棚上げするのも選択肢

しおりを挟む
 ロイドさんの指示を仰ぎながら、わたしとスードルで荷物を仕分けていく。
 
 今のところ、レイスさんは見ているだけだ。手伝ってくれないのかな?


 わたしはエナさんとエナさんに殺されかけたことだけ伏せて、世界樹の都市での冒険を話した。

「へー、そんなおっきな建物があるんだねー」
「動物が、いない……?」
「海が空にあって、空が足下にあって……僕には想像もできないよ」
「スズ、今度、一緒、行こう!」

 と、みんなの反応はそんな感じだった。

 大きすぎるショックを受けたケモナー約1名が絶望している以外は、意外とみんな驚かない。
 
 やっぱり剣と魔法の世界だから、異文化とか異世界とか、そういう未知のものに対する耐性があるのかもしれない。

 
「こっちでは何か、特別なことはありませんでしたか? わたしがいない間に、ってことですけど」

「えーと……あ、そうだ。そういえば速達便で届いたんだけど、北の方の鉱山で事件があったんだよ。覚えてる?」

 と、レイスさんがわたしに言った。


「鉱山……っていうと」

 わたしの剣と装備を手に入れた場所だ。もちろん覚えている。

 剣を造ってくれたクルルさんと、宿屋の息子、テウォンと出会い、そして別れた場所だ。
 複雑な構造の坑道でやった採掘は、結構楽しかった覚えがある。


「もちろん覚えてます。どうかしたんですか?」

「私にもよく分かんないんだけどね、なんか、ダンジョンになっちゃったみたいで」
「ダンジョンになっちゃったみたいで?」

 全然どういう意味か分からない。
 わたしが首を捻っていると、スードルが付け加えた。


「もともと魔力が不安定な場所だったけど、そこに何らかの原因があって、内部がダンジョン化したらしくて。もう通常の坑道じゃないみたいなんだ」

 そのダンジョン化っていうのが、よく分からない。
 
 そもそもダンジョンってなんなんだろう? 

 砂漠にあるっていうのは聞いたけど、わたしはそこに行ってないので、いまいち想像ができない。


「街は無事なの? ダンジョンって危険なんだよね?」

「具体的な被害については分からないんだ。たぶん、そんなに酷いってわけじゃないと思うけど……」

「あの街には冒険者が常駐してるし、最低限の自衛は心得てるはずだから、最悪の事態は起きてないと思います。だから、そんなに心配することないよスズネ」

 スードルはそう言って、わたしに大きな袋を渡した。


「だが、スズネの話が片付いたら、アリスは攻略の要請を受けるつもりらしい。高原ホームも近いし、断る理由もないんだろうな」

 ショックから立ち直ったロイドさんは、仏頂面でそう言った。
 反対してるけど、諦めてるみたいな風だ。


「あたしは、他のパーティに任せちゃってもいいと思うんだけどなー。砂漠の方は、今落ち着いてるでしょー?」

「でもスズネが言うには、宝具、撤去しなきゃいけないかもしれないんですよね? そうなったら、砂漠のダンジョンが……」

 ロイドさんとレイスさん、そしてスードルまでも、難しい顔をして考え込んでしまう。
 

 確かにこれは、難しい問題だ。

 見ず知らずの人々のために、自分達の故郷を危険に晒さなければならないなんて。

 ……ましてや、新しい脅威まで出現したなら、なおさら。


 そのときだった。

「いたっ!」

 わたしは、急に後ろから頭をぶっ叩かれた。
 後頭部に衝突した物体は、どうやらキースが適当に振り回した腕だった。

「なんで、難しい話、するの!? つまらない、嫌い!」
「なんで今叩いたの? キースは人間の姿にまだ慣れてないかもしれないけど、腕は人をぶっ叩くためにあるんじゃないよ?」
「キー!」
「その姿でキーって言うのはおかしくない?」

 今のキースは人間の形なのだけど、普通に喋っててもキーキーと喚いているように聞こえるのは気のせいだろうか。


「スズネは、一緒に、旅、するの! 楽しいこと! 難しいこと、しない!」

 キースは自慢げに、胸を張ってそう言った。

 きれいなオッドアイが、キラキラキラキラ、太陽の光を反射して、魔石みたいに輝いている。

「……うん、そうだね」

 絶対に胸を張ることではないけど。


 わたしは、自分の首にかけたままだった、キースのメダルを外し、渡した。

 キースは嬉しそうに目を細めて、それを自分の足首につけ、軽やかにジャンプし、空中で一回転。

「キー!」

 そして見慣れた白いもふもふコウモリの姿に戻り、わたしの胸に飛び込んだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~

うみ
ファンタジー
「魔法のリンゴあります! いかがですか!」 探索者ギルドで満面の笑みを浮かべ、元気よく魔法のリンゴを売る幼い少女チハル。 探索者たちから可愛がられ、魔法のリンゴは毎日完売御礼! 単に彼女が愛らしいから売り切れているわけではなく、魔法のリンゴはなかなかのものなのだ。 そんな彼女には「夜」の仕事もあった。それは、迷宮で迷子になった探索者をこっそり助け出すこと。 小さな彼女には秘密があった。 彼女の奏でる「魔曲」を聞いたモンスターは借りてきた猫のように大人しくなる。 魔曲の力で彼女は安全に探索者を救い出すことができるのだ。 そんな彼女の夢は「魔晶石」を集め、幻獣を喚び一緒に暮らすこと。 たくさんのもふもふ幻獣と暮らすことを夢見て今日もチハルは「魔法のリンゴ」を売りに行く。 実は彼女は人間ではなく――その正体は。 チハルを中心としたほのぼの、柔らかなおはなしをどうぞお楽しみください。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

処理中です...