追放勇者はヒューマノイドと空で生きたい

白夢

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血の勇者

ep08 廃墟のアンドロイド

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 僕は、ケアラーと、再び合流したガーディナーと三人で来た道を戻り、再びフォロワーと出会った廃墟に戻ってきた。
 
「さ、捜索を開始しましょうか」

 その間、ガーディナーは一言も話してくれなかった。
 

「ケアラー、疲れてないの?」
「私達は疲れたりしないのよ。勇者さんは疲れた?」

「二人は女の子だから、疲れてないかなって思っただけだよ」
「女の子? そもそも私達、人間じゃないのに?」

 ケアラーは心底愉快そうに笑いながら肩を竦める。

「どうする? 手分けしましょうか」
「分かれるのは危険だよ」
「……」
「勇者さんがそう言うなら、一緒に行動するわ。まず機械部の建物を探しましょ」

 歩き出したケアラーの前をガーディナーが歩き、その後を僕が歩く。
 魔物の気配はするけど、魔物避けの魔法が効いているらしく、今のところ気配はない。


 この研究所の跡地には、その職員が遺した資料や資材が、まだ残っているらしい。

 今回の目的は、その資材の一部。

 主に機械部で使用されていたCPU、つまりコンピューターの頭脳。またはそれが組み込まれた基盤だ。


「この世界のコンピューターにも、CPUがあるんだね」
「……」

 元は七階建てくらいの集合住宅くらいのサイズがあった機械部の建物は、かなりの部分が損壊しているが、建物の形はなんとか残っている。

 目的の部屋があったらしい四階までの階段はというと、その形は残っていたが、ところどころ剥がれ落ちた壁や瓦礫が転がっていて、足場が悪い。


「あら、勇者さんの世界にもコンピューターがあるの?」
「あったよ。ケアラーやガーディナーほど人に似たヒューマノイドはいないけど、アンドロイドっていう人型ロボットはいるし」
「どこの世界の機械も、人を目指すのは同じね」
「……」

 ケアラーは階段を上りながら言う。
 先頭を歩くガーディナーは無言だ。

「実は私達、勇者さんの世界の技術かもしれないわよ」
「えっ?」
「研究所には、帝国の人もいたから。所長様は、優秀な人なら誰でも受け入れてたのよ。例え祖国を追われた人でも、仮に人の姿を失っていたとしても」

 意味深だ。僕は眉をひそめる。

「……どういうこと?」
「あら、勇者さんはご存じないみたいね。でも、知らない方がいいこともあるわ」

 硬い床と触れ合う、三人分の足音が静かな廃墟に響く。
 時折遠くで鳥の鳴き声がする。

 廃墟には小さな小動物だけで、何もいないようだ。

「教えてくれないの?」

 僕が言うと、ケアラーはクスクス笑って誤魔化した。

「私は『ケアラー』。勇者さんを傷つけるようなことはできないわ」

 どういうことなのか聞こうと思ったけど、その時突然、先頭のガーディナーが立ち止まった。
 彼女が手を振り払うと、その手は機械的な音を立てながら変形し、鋭いナイフの形を作る。

「スキャン結果、敵勢力あり。警戒せよ」
「魔力探知には引っかからないけど……」
「機械部には、魔力を持たない生命体もいるのよ、勇者さん」

 言われてすぐ、ようやく僕も気がついた。
 
 何人かの足音が聞こえる。
 それは金属製の音。

「例えば、ガーディナーみたいに」


 それは、僕のよく知るアンドロイドに近かった。

 まるでSFの世界観。
 滅びた文明に残された、孤独な『ガーディナー』。


「――エラー、モンダイヲシュウセイ……シッパイシマシタ。スキャンヲカイシシマス……ツウシンエラー、モンダイヲシュウセイヲシュウセイ……シッパイシマシタ」

 アンドロイドは僕らを見下ろしながら、ブツブツと何かを呟いている。
 

「あの、ガーディナー。彼女、ガーディナーに似てるけど……」
「中央集権型のヒューマノイドには、避けられないことだよ」

 と、ガーディナーは答えてくれた。

「知能を搭載してる本体のサーバーが壊れたらボクラは全員機能を停止するしかない。最低限の動作しかしない、ただの警備ロボットになる。ボクはエンジニアに助けてもらったけど」


 ガーディナーは呟くように言った。
 ブツブツ呟き続けるアンドロイドは、全身がボロボロだ。

「……つまり、ガーディナーの仲間……?」
「仲間じゃなくて同僚よ。それも同僚。ちょうどいいわ、ガーディナー。ちょっと古いけど、彼女のCPUを頂戴しましょう」
「そうだね」

 ガーディナーはアンドロイドに近づいて、腕を振り上げた。

「……そうするよ」

 アンドロイドは無抵抗にその一撃を受け、鋭い斬撃を受けて、頭部を切断された。
 そして、ゴトンと重い音を立てて頭部は床に落ち、階段を数段転げ落ちて止まった。

「よくやったわ、ガーディナー」

 ケアラーはそう言って、道具箱を開ける。


「……もう一つ必要だし、探してみるよ。できればもっと新しいのを」

 ガーディナーはそう言って、部屋を出ていった。


「……ケアラー、別れたら危なくない?」
「一旦離れるだけよ、後で追いかけるわ」

 ケアラーはマイナスドライバーを取り出して、逆手に持った。

(変わった持ち方をするんだな……)

「はあっ!」
「えっ、あ」

 バキッ、と言う音と共に、振り下ろされたドライバーが切断面に突き刺さる。
 僕が止める間もなく、ケアラーは太腿で切断された頭部を挟み、無理矢理カバーを破壊し始めた。

「ちょ、ちょっとちょっとケアラー、だ、大丈夫なの? 精密機器じゃなかったの?」
「私、技術者じゃないのよ! 少しピンが折れたくらいなら、エンジニアが自分で修理できるわよ!」

 ケアラーは力任せにドライバーを振りまくり、やみくもに頭部を破壊していく。
 バキッ、バキッ、と、精密機器からは鳴ってはならない音がずっと鳴り響いている。

「全く、強情ね……」

 ケアラーは金槌を取り出し、思いっきり振り上げた。

「これでおしまいよ!」

 叩きつけられたマイナスドライバーは、そのまま頭部を貫通し、床に突き刺さった。
 見るも無惨に破壊された頭部は、逆立ち状態で串刺しになっている。

 ちなみに、顔はガーディナーと一緒だった。量産型だからかな。
 とんでもない冒涜を見てしまった。

「……あぁ……えっと、ケアラー?」
「やっぱり機械って苦手だわ、何もしてないのに壊れちゃうんだから。ええ、でも大丈夫よ。ガーディナーは、いくらでも、再、生産、される……工場があるのよ、永遠に動き続けるわ!」

 ケアラーは刺さったドライバーを引き抜こうとしたけど、上手くいかずに尻もちをついた。
 僕は工具を拾って、彼女の代わりにドライバーを引き抜く。

「あら。意外と力持ちなのね」
「力がないように見える?」
「あら、悪口じゃないのよ。魔法が専門だと思ってたから」
「勾留中には、魔法が使えなくてね。暇だったから筋トレをしてたんだ」
「筋肉量が増減するなんて、人間って本当に素敵ね」

 ケアラーはクスクスと笑って、ドライバーを受け取った。

もそう言ってるみたい」

 逆さまの頭部の目玉がギョロッと動き、僕を睨む。


「……行こう。ガーディナーを追いかけないと」

 僕はそれから目を逸らして、再び杖を握った。
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