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不機嫌な猫と掃除屋ロボット
ep15 モーニングコール
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部屋のドアが開く音で目を覚ました。
「杖よ来い! 止まれ、さもなくば撃つ!」
いつも抱えている杖がなく、咄嗟に飛び起きて杖を呼び寄せたところで、僕はリソーサーと目が合った。
「……悪い、驚かせたみたいだな」
リソーサーは、その場に立ちすくんで伺うように僕を見ていた。
「……大丈夫か?」
うっかりしていた。僕は「あはは」と呟いて杖を下げる。
「僕こそ驚かせちゃったね。ごめん、少し寝ぼけてたみたい。おはようリソーサー。起こしに来てくれたの?」
「……ああ」
リソーサーは少し僕から目を逸らし、頷いた。
「マネージャーは声をかけられないし、他のは、お前の部屋に来るのを遠慮してて。それに俺は、ソーシャルワーカーじゃないから」
「ん? あぁ……そっか」
どういう意味なのかいまいち分からなかったけど、僕は「そうだねー」とか返事をしながら、ベッドの上の寝具を畳んだ。
「……お前の服は、ポストに配達されてる。ガーディナーが、カフェテリアでお前に会いたがってた。朝食も用意してある」
「分かったよ」
「外に出たら、マネージャーが話しかけて来ると思う。色々伝えたいことがあるみたいだった」
と、リソーサーは言葉少なにそう言って、踵を返す。
「俺は仕事があるから、もう行く」
「うん、分かった。起こしてくれてありがとう」
「……」
リソーサーは、最後にもう一度、僕の方を振り向き、黒い瞳でジッと見つめる。
見つめられるのはもう慣れた。僕は気にせずリソーサーが教えてくれたポストとやらを開けて、中に入っている服を取り出す。
「行くぞ、クリーナー」
ドアの閉まりがけにリソーサーの声が聞こえた。
クリーナーも来てたのか。そういえば、マネージャーが、二人はよく一緒に行動してると言ってたっけ。
僕は何か月ぶりかに完璧に洗濯された服を手に取る。
僕は顔を洗って服を着替えて、杖を持って部屋から出た。
「マスター! おはようございます!」
と、一歩部屋から出た瞬間、僕はマネージャーに話しかけられた。
主人の帰りを待ってるわんちゃんみたいだな。
「うん。おはよう、マネージャー」
「えへへ、お待ちしておりました。昨日はよく眠れましたか?」
「すごくよく眠れたよ、ずっと野宿ばかりしてたから。マネージャーはよく眠れた?」
「残念ですが、私に睡眠は必要ないのです、マスター」
マネージャーは、本当に残念そうに言う。
本人は、寝てみたかったりするのだろうか。
「マスター、いくつか伝達事項があります。今からお伝えしても構いませんか?」
「何があったの?」
「まず、マスターの所属は正式に承認されました。おめでとうございます!」
「所属ってことは、僕を船に乗せてくれるってこと?」
「はい! マスターは名実ともに、私のマスターとなりました!」
「そっか」
何よりも、マネージャーが嬉しそうだった。
本当にこの子は可愛い。きっと、誰よりも可愛いマネジメントシステムだ。異世界を含めても。
「貢献できるように頑張るよ。ありがとう、マネージャー」
「難しい仕事ではありませんでした! リソーサーの評価もかなり高かったですし、ガーディナーも賛成していましたから。何もかも、マスターの人望のおかげです!」
「あはは……」
他の何があったとしても、人望だけはないと、思うんだけどな。
帝国ではそこそこ酷い目にあったし。
「……えっと、カフェテリアでガーディナーが待ってくれてるんだよね」
「はい。マスターはカフェテリアに向かっています」
既に案内してくれていたらしい。さすが有能だな。
「ガーディナーがあんなに懐くなんて、珍しいですね。何か言ったんですか?」
カフェテリアまでは、そんなに遠くない。もう入るべき壁が見えている。
「懐いてた?」
「そうですね、ディスカッションの際に、彼女が送信したメッセージを読み上げますか?」
「えっ、いや、それはいいよ。やめておいて」
僕はマネージャーを慌てて制止した。どんなことを言ったのかは分からないけど、知るならガーディナーから聞きたい。
「そうですか? では代わりに、私の送信したメッセージを読み上げましょうか」
「ありがとう。でも、もうカフェテリアに着いたよ」
「え、もうですか?」
マネージャーは、驚いたように一瞬沈黙し、すごく悲しそうに、話し始めた。
「申し訳ありません。実は昨日、朝から晩までマスターに張り付くのは、メモリの無駄だと言われてしまって……しばらく、仕事に専念しないといけないんです。終わったら、またお話してもいいですか?」
マネージャーは心底寂しそうに言った。
「そっか。残念だけど、仕事は大切だからね。またいつでも話そう、僕のことは気にしないでいいから」
「はい、ありがとうございます! マスター、大好きですよ!」
「あはは……」
大好きって言われちゃったな……マネージャー、どういう意味で言ってるんだろう。
僕は苦笑いしながら、カフェテリアの扉を開けた。
「アイト!」
カフェテリアに座っていたガーディナーが嬉しそうな声を上げて、立ち上がる。
その正面に座っていたのは、フォロワーだった。
「杖よ来い! 止まれ、さもなくば撃つ!」
いつも抱えている杖がなく、咄嗟に飛び起きて杖を呼び寄せたところで、僕はリソーサーと目が合った。
「……悪い、驚かせたみたいだな」
リソーサーは、その場に立ちすくんで伺うように僕を見ていた。
「……大丈夫か?」
うっかりしていた。僕は「あはは」と呟いて杖を下げる。
「僕こそ驚かせちゃったね。ごめん、少し寝ぼけてたみたい。おはようリソーサー。起こしに来てくれたの?」
「……ああ」
リソーサーは少し僕から目を逸らし、頷いた。
「マネージャーは声をかけられないし、他のは、お前の部屋に来るのを遠慮してて。それに俺は、ソーシャルワーカーじゃないから」
「ん? あぁ……そっか」
どういう意味なのかいまいち分からなかったけど、僕は「そうだねー」とか返事をしながら、ベッドの上の寝具を畳んだ。
「……お前の服は、ポストに配達されてる。ガーディナーが、カフェテリアでお前に会いたがってた。朝食も用意してある」
「分かったよ」
「外に出たら、マネージャーが話しかけて来ると思う。色々伝えたいことがあるみたいだった」
と、リソーサーは言葉少なにそう言って、踵を返す。
「俺は仕事があるから、もう行く」
「うん、分かった。起こしてくれてありがとう」
「……」
リソーサーは、最後にもう一度、僕の方を振り向き、黒い瞳でジッと見つめる。
見つめられるのはもう慣れた。僕は気にせずリソーサーが教えてくれたポストとやらを開けて、中に入っている服を取り出す。
「行くぞ、クリーナー」
ドアの閉まりがけにリソーサーの声が聞こえた。
クリーナーも来てたのか。そういえば、マネージャーが、二人はよく一緒に行動してると言ってたっけ。
僕は何か月ぶりかに完璧に洗濯された服を手に取る。
僕は顔を洗って服を着替えて、杖を持って部屋から出た。
「マスター! おはようございます!」
と、一歩部屋から出た瞬間、僕はマネージャーに話しかけられた。
主人の帰りを待ってるわんちゃんみたいだな。
「うん。おはよう、マネージャー」
「えへへ、お待ちしておりました。昨日はよく眠れましたか?」
「すごくよく眠れたよ、ずっと野宿ばかりしてたから。マネージャーはよく眠れた?」
「残念ですが、私に睡眠は必要ないのです、マスター」
マネージャーは、本当に残念そうに言う。
本人は、寝てみたかったりするのだろうか。
「マスター、いくつか伝達事項があります。今からお伝えしても構いませんか?」
「何があったの?」
「まず、マスターの所属は正式に承認されました。おめでとうございます!」
「所属ってことは、僕を船に乗せてくれるってこと?」
「はい! マスターは名実ともに、私のマスターとなりました!」
「そっか」
何よりも、マネージャーが嬉しそうだった。
本当にこの子は可愛い。きっと、誰よりも可愛いマネジメントシステムだ。異世界を含めても。
「貢献できるように頑張るよ。ありがとう、マネージャー」
「難しい仕事ではありませんでした! リソーサーの評価もかなり高かったですし、ガーディナーも賛成していましたから。何もかも、マスターの人望のおかげです!」
「あはは……」
他の何があったとしても、人望だけはないと、思うんだけどな。
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「……えっと、カフェテリアでガーディナーが待ってくれてるんだよね」
「はい。マスターはカフェテリアに向かっています」
既に案内してくれていたらしい。さすが有能だな。
「ガーディナーがあんなに懐くなんて、珍しいですね。何か言ったんですか?」
カフェテリアまでは、そんなに遠くない。もう入るべき壁が見えている。
「懐いてた?」
「そうですね、ディスカッションの際に、彼女が送信したメッセージを読み上げますか?」
「えっ、いや、それはいいよ。やめておいて」
僕はマネージャーを慌てて制止した。どんなことを言ったのかは分からないけど、知るならガーディナーから聞きたい。
「そうですか? では代わりに、私の送信したメッセージを読み上げましょうか」
「ありがとう。でも、もうカフェテリアに着いたよ」
「え、もうですか?」
マネージャーは、驚いたように一瞬沈黙し、すごく悲しそうに、話し始めた。
「申し訳ありません。実は昨日、朝から晩までマスターに張り付くのは、メモリの無駄だと言われてしまって……しばらく、仕事に専念しないといけないんです。終わったら、またお話してもいいですか?」
マネージャーは心底寂しそうに言った。
「そっか。残念だけど、仕事は大切だからね。またいつでも話そう、僕のことは気にしないでいいから」
「はい、ありがとうございます! マスター、大好きですよ!」
「あはは……」
大好きって言われちゃったな……マネージャー、どういう意味で言ってるんだろう。
僕は苦笑いしながら、カフェテリアの扉を開けた。
「アイト!」
カフェテリアに座っていたガーディナーが嬉しそうな声を上げて、立ち上がる。
その正面に座っていたのは、フォロワーだった。
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