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第1章・第3節:導かれた先に
過去問は3回は実施する
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池田から連絡があったのは、ゴールデンウィークの最終日だった。
「孝一さん、夕飯一緒にどうかなって」
「阿部さんも誘ってます、いつものとこで18時でどうです?」
ちょうど2人にも試験の事を相談しようと思っていたタイミングだった。
「オーケー、行こう!」
二つ返事だった。
“いつものところ”は、すっかり馴染みになった駅前の商店街にある居酒屋だ。
入社前に、3人で来て以来、この一ヶ月何度か訪れていた。
「こないだ、椿さん、遠野さんとどうでした?」
冷やかすように池田が話し始める。
「どうって?どうってなによ?」
「大塚さん、藤井さんと飲みに行くのに割って入ってきたんですよねー、わざわざ」
「これは、そういうことなんじゃないかなーって。ねー阿部さんとしゃべってたんですよ」
「いや、池田さんの妄想が激しくて。ついていけないです」
3人で笑い合う。
「残念だけど、何もないし、俺は彼女居るし」
「確か、椿さんも付き合ってる人いた気がするなー」
「えー、どこ情報っすか」
池田が食い込んでくる。
「こないだそんな話を、、、あ、遠野さんは募集中らしいよ」
「孝一さんいいなぁ、綺麗どころ両手に抱えて」
「何それ」
同期の女子の話は格好の肴だ。
「そういえば、基本情報って二人は持ってたっけ」
「えぇ、俺は学生時代に取りました。専門だったんで授業で対策講座とかあって」
「俺もですね、孝一さんも取るんですか?」
「今考えてて。この前、大塚さんと藤井さんとの飲み会で、2人の上司の桃田さんっていうリーダーの人も来てたんだけど、昇格要件は早めに取得しておいた方がいいってアドバイスもらってさ」
「さすが、孝一さん」
「いや、取っておかないと色々面倒らしいよ」
「年次が上になって取れていないと恥ずかしいらしいし、昇格の土俵にも上がれないらしい」
「専門で取得出来てたのはラッキーだよ」
「やったぁ、でも俺たちは持ってて当たり前って目で見られるんで」
「そうそう、次の応用試験まで持っていれば一目置かれるかもですが」
「応用試験もあるのか……取れるかな」
「基本受けるなら、使ってたテキストあげましょうか。去年のですが」
「え、いいの助かる」
「情報処理は過去問3回やればだいたい受かるって言われているんで」
「まずは過去問ですよ」
「過去問3回か、わかった。ありがとう」
「やっぱり二人に話して良かったよ」
「えーなんですか、どんどん話してくださいよ」
「で、孝一さんはどっちなんですか」
「しつこいな、またその話?」
「ね、池田さんの妄想はもう病気レベルなんです」
「そしてしつこいですからね、この後もう1回は同じ話ありますよ」
こんな調子で、ふざけることができる関係になれたのは嬉しい。
その日の帰りに阿部からテキストと過去問をもらった。
繰り返し取り組んだのだろう。使い込まれたテキストだった。
阿部もこれを使って合格したのにあやかって、自分も続けて合格を果たしたいと思った。
「孝一さん、夕飯一緒にどうかなって」
「阿部さんも誘ってます、いつものとこで18時でどうです?」
ちょうど2人にも試験の事を相談しようと思っていたタイミングだった。
「オーケー、行こう!」
二つ返事だった。
“いつものところ”は、すっかり馴染みになった駅前の商店街にある居酒屋だ。
入社前に、3人で来て以来、この一ヶ月何度か訪れていた。
「こないだ、椿さん、遠野さんとどうでした?」
冷やかすように池田が話し始める。
「どうって?どうってなによ?」
「大塚さん、藤井さんと飲みに行くのに割って入ってきたんですよねー、わざわざ」
「これは、そういうことなんじゃないかなーって。ねー阿部さんとしゃべってたんですよ」
「いや、池田さんの妄想が激しくて。ついていけないです」
3人で笑い合う。
「残念だけど、何もないし、俺は彼女居るし」
「確か、椿さんも付き合ってる人いた気がするなー」
「えー、どこ情報っすか」
池田が食い込んでくる。
「こないだそんな話を、、、あ、遠野さんは募集中らしいよ」
「孝一さんいいなぁ、綺麗どころ両手に抱えて」
「何それ」
同期の女子の話は格好の肴だ。
「そういえば、基本情報って二人は持ってたっけ」
「えぇ、俺は学生時代に取りました。専門だったんで授業で対策講座とかあって」
「俺もですね、孝一さんも取るんですか?」
「今考えてて。この前、大塚さんと藤井さんとの飲み会で、2人の上司の桃田さんっていうリーダーの人も来てたんだけど、昇格要件は早めに取得しておいた方がいいってアドバイスもらってさ」
「さすが、孝一さん」
「いや、取っておかないと色々面倒らしいよ」
「年次が上になって取れていないと恥ずかしいらしいし、昇格の土俵にも上がれないらしい」
「専門で取得出来てたのはラッキーだよ」
「やったぁ、でも俺たちは持ってて当たり前って目で見られるんで」
「そうそう、次の応用試験まで持っていれば一目置かれるかもですが」
「応用試験もあるのか……取れるかな」
「基本受けるなら、使ってたテキストあげましょうか。去年のですが」
「え、いいの助かる」
「情報処理は過去問3回やればだいたい受かるって言われているんで」
「まずは過去問ですよ」
「過去問3回か、わかった。ありがとう」
「やっぱり二人に話して良かったよ」
「えーなんですか、どんどん話してくださいよ」
「で、孝一さんはどっちなんですか」
「しつこいな、またその話?」
「ね、池田さんの妄想はもう病気レベルなんです」
「そしてしつこいですからね、この後もう1回は同じ話ありますよ」
こんな調子で、ふざけることができる関係になれたのは嬉しい。
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繰り返し取り組んだのだろう。使い込まれたテキストだった。
阿部もこれを使って合格したのにあやかって、自分も続けて合格を果たしたいと思った。
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