ツンデレΩは噛まれたい

齊藤るる

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出会い編

牙を剥く

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⚠️直接的な暴力表現があります。苦手な方はお気を付けください



グルルルル……
扉の向こうから低い獣の唸り声が響いた。

爪が床を引っ掻くような音が続き、次の瞬間、トイレ個室のドアが外側から激しく揺れた。金属が軋む音が狭い空間にこだまする。


「う、うわっ! 何だ、これ……!」


タチバナの顔が青ざめる。腰が抜けたように後ずさりするが、狭い個室では逃げ場などない。

ドアと天井の隙間から突き出た巨大な頭部。
獣だ。
濁った瞳が輝き、鋭い牙が不気味な光を反射する。開かれた口からは泡が飛び散り、息遣いは地鳴りのように重い。その姿は、まるで凶暴な化け物そのものだった。


「ぎゃ、ぎゃああっ! ちかっ、近寄るな!」


タチバナは悲鳴を上げ、ハルを突き飛ばして逃げようとした。だが、獣はドアを一撃で蹴破ると、狭い空間に無理やり体をねじ込む。

その巨体が生む圧力と威圧感に、ハルは声も出せない。頭では分かっているーーこれはユキだ、と。しかし恐怖が身体をすくませ、微動だにできない。


「うわぁぁ! 来るなぁ!ギャアアアア!」

獣の巨大な前足がタチバナの背中に降り下ろされた。重量に押しつぶされるような音がし、彼は声を上げる暇もなく床に沈む。


「背骨っ! 背骨がぁっ……!」


タチバナの悲鳴が響く中、獣はさらに体重を掛け、タチバナの頭に牙を近づける。その鋭い歯列が、何もかもを引き裂く予感を漂わせる。


(だめだ……やめろ、ユキ!)


ハルの心の中の叫びは声にならなかった。
気絶寸前の意識の中で、最後に見えたのは、タチバナの絶望と恐怖で埋め尽くされた表情だった。
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