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序章:出逢い
異端児の場合 01
しおりを挟む【異端児の場合】
教会で神父見習いをしている男がいる。
彼は俺よりも5歳だけ年上だ。
金の髪は癖毛なのだろう、程好く波打ち、彼の柔らかな雰囲気に合っている。
薄い碧の双眸も嫌いではない。
金髪に碧眼の取り合わせは、この地域に根付いている。
産まれてくる子、皆が皆、同じなのだ。
時折、気分が悪くなる。
理由が自分にあることも解ってはいる。
それでも、其の苛立ちを大人に向けるのをやめれずにいた。
偶々道端で、神父見習いのミルに遭遇したあの日。
俺は蟻を殺していた。
何でこんなにも簡単に死ぬのだろうか、と考えながら指が義務的に動く。
巣まで続く行列から黒点を摘まむ。
ぎゅ、と軽く指先に力を入れれば其は潰れてしまう。
掌に潰れた死骸を乗せて思う。
神なんかいないのだ、と。
蟻は嫌いだった。
先ずもって、黒というだけでも気に食わないのに、其に加えて小さいのだから、嫌で嫌で仕方がない。
消えてしまえば良いのに。
自然とそう思う。
蟻に自分を重ねている。
そう。
自分が消えてしまえば良いのに、と。
何度も何度も、繰り返しお願いした。
夜寝る前に、皆が手を合わせる。
今日一日を無事に過ごせたことを感謝して、明日も無事で通れるようにと、皆が手を合わせている間中、俺は願っている。
皆とは真逆のことを、懇願にも近い想いで唱えている。
俺を消して下さい、と。
手を合わせて祈るのだ。
異端児など、この世界には必要ないでしょう? そう問い掛けながら、いつも眠りに落ちる。
それでも、願いが叶ったことなどなかった。
目を開けて、光を捉える度に、口が呼吸をする度に、生きていることを実感して、落胆した。
神など信じていないから叶えてくれないのか、本当に神がいないのか、どちらなのかは解らないが、何にせよ、小さな頃から神が嫌いだった。
周りと打ち解ける努力をするよりも前に、神を恨む方が楽だった。
どうせ異端児なのだ。
努力をしても無駄だと、何処かで思っている自分がいた。
周りと打ち解けるどころか浮いている俺を、両親は心配したようだった。
余計なことに神父に相談を持ち掛けたのだ。
日曜日、両親に無理矢理に連れて行かされるミサだけでもうんざりなのに、だ。
ミサが終わった後に神父に呼び出される日が増えた。
俺は言ってやるのだ。
俺みたいな異端児は消えていなくなるべきなんだと。
そんなことはないと、宣う神父に問うてやる。
もしも、俺が人を殺したら、どうするのか、と。
今はまだ抑え込めているが、欲求が勝ったとき、お前はどう責任を取るのか。
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