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一章:恋に堕ちた悪魔の子
家出騒動の場合 05
しおりを挟む「ねえ。そうやって俺のこと、普通に救おうとするけど。お兄さん、解ってるの? 俺を救うってことは、一生傍にいるってことだよ。よく考えた方が良いと思う。俺が救われる時は、隣に特定の人間がいることを許せる時だってことだから。俺に一生を捧げる覚悟がないなら、早目に消えて」
ぐん、と腕を引かれて前のみりになる。
目の前、すぐ近くにフィンの顔がある。
怖いぐらいに真剣な顔で告げられる内容は、どう捉えたら良いのか、解らないものだった。
「それはどういう」
意味ですか、と尋ねる前に唇に触れた感触。
目の前から消えたフィンの顔。
近過ぎて見えないのだと気付いたのは、唇を舐められる感触に戦(おのの)いた時だった。
ゾクン、と背筋に悪寒のようなものを感じる。
抵抗するよりも前に、解放され、呆然とフィンを眺めた。
フィンは此方を見ようとしない。
何故だか悔しそうに唇を噛んでいる。
僕は、そっと自分の唇を人差し指で撫ぜた。
途端に、接吻を交わしたのだと、今更ながらに実感し、顔に血液が大量に巡るようだった。
何と言う大罪を犯してしまったのだろうか、と頭の隅では懺悔しながらも、体は火照ってしまう。
どういうことだ、とパニックに陥る僕を傍目に、フィンはネコを抱き上げた。
だらん、と垂れ下がる腸を体内に詰めながら、僕に一言告げる。
「そういうことだから。お兄さんの職業柄、色々とマズイでしょ? 覚悟がないなら、今後一切俺に関わるな。俺も辛いし、本当に殺しちゃうかもしれないでしょ。考えておいて」
慌ててポケットからハンカチを取り出し、ネコに掛けた。
フィンの言葉には何も返せなかった。
僕は俯いて、彼の後を追い掛けるようにして教会に戻るのだった。
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