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一章:恋に堕ちた悪魔の子
家出騒動の場合 04
しおりを挟む「お母様、に。そう言われたの、ですか? 心配していましたよ。熱くなって、思ってもいないことを口にしてしまったのでしょう。生まれてきてはならない命など、この世にはありません。僕は、君が生まれてきてくれたことを、とても嬉しく思います。感謝してもし尽くせない程です。それに、君には殺せませんよ。大丈夫、君は大丈夫。僕は殺されない。絶対に」
ゆっくりと、フィンの顔が上がり、僕の顔を凝視する。
信じられないと、表情が語っていた。
そんな彼に、にっこりと笑い掛ける。
「殺さない、って根拠は!? 何でそんな自信満々に言えるんだよ。お前、バカなの!?」
興奮したのか、フィンの語調が荒くなる。
僕は、頭に置いた手を、緩慢な動作で彼の背中に回す。
「僕は知っています。世界の何処かには、フィン君と同じ色の髪や目を持つ人達が住む島があることを。その島の人は、とても謙虚で優しい人達です。君のお祖父さんは、そんな素敵な島からやって来たのです。君は、その素晴らしい血を引き継いでいるのです。人は確かに、愚かにも他を殺します。けれど、人間にあって動物にないもの。それは罪悪感だと、僕は思います。君は本当は、優しい子だ。罪悪感に押し潰されそうになっている。其れだから、忠告してくれたのでしょう? どうでも良ければ、殺しても良いと思っているのなら、忠告など必要ないものです」
背中を擦りながら、ゆったりとした口調を心掛ける。
胸に、フィンの額が押しあてられた。
肩が震えている。
微かに嗚咽が漏れて聞こえた。
背中に回した手に力を込めて、まだ小さな体を抱き締める。
体重を預けてくれるフィンが愛しかった。
同時に、人の心の重さを知るようでもあった。
「俺、ずっとコイツ好きで。隠れて飼ってたんだ。でも、見付かって、喧嘩になって。友達一人出来ないお前には育てられないって。そこから、俺の容姿の話になった。そんな色で生まれてきたりしたから、友達も出来ないんだって。売り言葉に買い言葉だって解ってたけど、感情、コントロール出来なかった。こんな俺に飼われるぐらいなら、コイツも死んだ方が幸せかなって。なあ、コイツ、救われる?」
消え入りそうな声で、それでもフィンは経緯(いきさつ)を話してくれた。
辿々しいところはまだ子供なんだな、と再確認し、何だか嬉しくなる。
「お母様も後悔している様子でした。今頃は、神父様の元で懺悔をなされていると思いますよ。この子も、救われます。持って帰って、神父様に浄めて貰いましょう」
彼から離れ、ネコの死骸に手を伸ばそうとした時だった。
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