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一章:恋に堕ちた悪魔の子
倒れた場合 03
しおりを挟むそれでも、縋って何になるのか、と思い至り、投げ槍に言えば、頬を打たれた。
神父の手に叩かれて、僕の顔は自然と横を向いていた。
「馬鹿を言うんじゃない! 死んで償いになると思うのは、君のエゴだよ。本当に償いたいのなら、きちんと自分の中の彼と向き合い、病気を治しなさい。そして、人生を全うするんだ。それが君に唯一出来る償いだ。いいね、死のうだなんて愚かなことは、今後一切言うんじゃないよ。こう言っては何だが、君の両親は自分で蒔いた種に殺されたんだ。君も犠牲者なんだよ。あまり思い詰めないで。私が力になろう」
僕は叩かれた頬を押さえ、ゆっくりとブランを窺い見た。
彼は泣いていた。
涙を流して、僕を抱き締めようと腕を伸ばしてくる。
僕は抵抗もなく、デスク越しに彼に頭を抱かれる。
頭に感じるブランの手が優しい。
「大丈夫だ。私が守るから。ショックが強かっただろう? 今は眠りなさい」
耳元でそう言われると、不思議と瞼が落ちた。
僕は意識を失うのだった。
僕が13歳の頃の出来事である。
あれから、僕は神父様の下で治療を続け、人格の統合に成功した。
最初、神父様が厳しかったのは、治療の為だったらしい。
自分の中の人格を自覚することが、治療の第一歩なんだと聞いた。
人格の統合は、厳しいもので、彼の記憶が僕の中に入り込む度に、僕は何度も戻してしまった。
彼の記憶は、悲惨の一言に尽きたのだ。
虐待の記憶であれ、人を殺す瞬間であれ、残酷だ。
今でも、ふとしたキッカケで思い出すと、やはり戻してしまう。
仕方のないことであろう。
これも僕が受け入れるべき罰なのだ。
きっと僕は、フィンに自分を重ねていた。
彼が愛しいのは、仲間だからなんだと、そう思う。
これ以上の大罪は、許されない。
当然、フィンを受け入れてはいけないのだ。
しかし、僕は彼を見放せない。
神父様が僕を守ってくれたように、僕もフィンを守りたかった。
自己満足だと解ってはいる。
大罪に繋がる可能性も高い。
それでも僕は、フィンから離れられそうにないのだった。
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