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一章:恋に堕ちた悪魔の子
告白された場合 02
しおりを挟む神父様の手が、よく頑張ったと頭を叩く。
それが嬉しくて、苦しかったことも忘れてしまいそうになった。
僕は、神父様をとても尊敬している。
僕の目標なのだ。
涙目で、それでも笑い掛けると、神父様の手が空になった器を、すっと奪っていった。
「そんな一気に飲まなくても良いのに。苦いだろ? 水を持ってくるよ。待っていなさい」
「はい、神父様」
「今はブランで良いさ。親子の時間だ」
「……うん、ブラン養父さん」
目を細めて微笑む僕を確認すると、ブランは踵を返して部屋から出て行った。
僕が独りになってしまったあの事件の後。
ブランは僕を養子に迎えてくれた。
私には家族がいないから嬉しいよ、とそう言った神父様の笑顔を、僕は一生忘れないだろう。
暫くの間、親子として過ごし、ブランがこの街に神父として赴任するのを機に、僕は神父見習いとなった。
それからは、親子の時間と、神父様と弟子の時間と、分けるようになったのである。
当然ではあるのだが、それでも寂しく思う気持ちは拭えなかった。
僕は何処まで行っても愚か者なのだ。
偽物の家族に、縋り付いた。
やり直せるような気がした。
偽物でも、本物になれるのだと、そう信じたかった。
けれど、どんなに焦がれても、血の繋がりは手に入らない。
どんなに足掻いても、僕達は他人なのだ。
他人で良いんだよ、とブランは言った。
血の繋がりに頼ることも必要、されど、それだけが全てではないと、彼は教えてくれた。
他人だからこそ、お互いを知ろうと努力できる。
知ろうとする想いが思い遣りになる。
血の繋がりなど、思い遣りでカバー出来ると。
そう彼は言った。
偽物が本物になることはない。
それでも、本物に近付くことは出来るのだ。
不器用だが着実に、僕達は家族としての絆を深めていった。
今では、あんな不味い薬も愛情だと思って飲めるまでになった。
昔は駄々を捏ねて飲まないことも多かったのだ。
父親としても、神父様としても、僕はブランを世界中の誰よりも尊敬している。
その気持ちが、僕達をより家族に近付けていた。
だが、僕はフィンから告白されたことを、ブランに言えないでいる。
相談したくて堪らないのに、フィンから遠ざかれと言われるのが怖くて、僕はどうしても言い出せなかった。
悶々としていると、ブランがコップを手に戻って来た。
「待たせたね。ほら、お水」
「あ、有り難う御座います。……頂きます」
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