冒涜者 - 悪魔の子は神の使いを穢したい -

Neu(ノイ)

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二章:訪れた変化

神父の場合 01

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【神父の場合】


 ミルと言う少年を拾った時、これは運命なのだと悟った。
彼を育て上げることこそ、私の罪を清算することになると、そう思ったのだ。


 私はミルを実の子のように可愛がった。
天涯孤独の身になったミルを、私の戸籍に息子として入れた。
本当に息子が戻ってきたようで、私は嬉しくて仕方が無かった。


 しかしながら、喜んでばかりもいられない事情があった。
ミルは人格障害を患っている。
彼の病気は、治すとなると時間も忍耐も必要となるものだった。
ミルにとっても、非常に辛いものだ。
だが、それに耐えなくては、人格の統合など出来ない。


 私達は、ひっそりと治療を続けた。
この当時、人格障害の知名度は低く、悪魔に取り憑かれているとの勘違いがまだ広く浸透していたのだ。
人間は、自身の理解に負えなくなると、神や悪魔などの人智を超えた存在のせいにする。
それが悪い訳ではない。
その認識が上手く作動する場合もある。
ただ、病気の存在すら認めていたら、私は息子を喪わずに済んでいた。
そういった想いが、私を医療研究にと駆り立てていたのも事実である。


 息子とは違う病気ではあるが、ミルの病気もまた、人々からの誤解を得やすいものだった。
私一人ぐらい彼の味方になっても、バチは当たらないだろう。


 彼の患う病気は、虐待や心的外傷(トラウマ)を負うような悲惨な現状に立たされた時に、これは自分ではないと認識することにより自分を守る過程で、いつしか架空の人格が実在化してしまうものである。
自分の中に違う人格が出来てしまう。
人格同士の記憶は共有されない為に、その間の記憶は一切ない。


 治療では、違う人格が自分の中にいることを認知し、また、それらは全てが自分なのだと認めることから始まる。
これが、言葉で言う程に、簡単ではない。
耐え難い苦痛を伴う。
何故ならば、経験したくないことを他の人格に押し付けていた訳で、自分の中に別の人間がいると認めることは、その見たくない現実をも受け入れなくてはならないからだ。
それだから、この病気の治療には、時間が必要になる。
ゆっくりと時間を掛けて行わなくてはならない。


 結局、ミルの人格が完全に統合するまでに、3年の月日が掛かった。
ミルの場合、両親を自分が殺したと、認めなくてはならない現実が、相当彼を苦しめ、それ故に、統合にも苦労した。


 しかし、ミルは自分に打ち勝ったのだ。
私は前々から受けていたある街の神父になることを承諾した。
ミルと共に新しい人生を始めようと思ったのだ。
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