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二章:訪れた変化
キルバートの場合 03
しおりを挟むブランを非難する目で睨む。
彼は頭を掻くと扉の近くで立ち尽くしている背の高い男に向かい声を掛けた。
「フィン、彼を頼むよ」
ブランの手が俺から離れ、女の介抱を始めるブランを横目に、俺はゆっくりと近付いてくる男を凝視する。
意識の深い場所で、ミルがざわついていた。
眠っている時にも時折あった感覚だ。
「アンタが来たなら俺は必要ないだろ。大人しく退散するよ。言っておくけど。俺を呼んだのはミルだからね。ずっと寝ていたのにさ、いきなり起こされたかと思ったら殴られてるんだ。俺、めちゃくちゃ被害者だよ」
ふん、とブランから顔を背け、若い男からも視線を逸らす。
ミルを守ったのに悪者みたいな扱いをするブランが面白くなかった。
「解っているよ、キル。君はいつだってミルを守ってくれている。約束を破ってしまったのは私の方だ。すまなかったね。助かったよ」
拗ねているのを見抜かれたのか、女の身体を起こしながらブランが頭を下げてくる。
女は咳き込んで茫然自失としていた。
「その女、ミルを殴ったのか?」
いきなり腕を掴まれ顔を相手に向けると、恐ろしい表情の男が俺の頬を撫でた。
つきん、と痛んだ其処は痣になっているのだろう。
男の体が女とブランに向く。
今にも標的を喰い殺そうとしている野生の獣に思えた。
「落ち着きなさい、フィン。彼女には私が話を聞く。君はミルの傍にいてあげなさい。……キル、ミルを起こせるかい?」
ブランの一言で男は理不尽だと表情に出しつつも小さく頷いた。
俺はブランの問い掛けに肩を竦ませ、隣に立つ男の顔を下から覗き込む。
「さてね。そこのお兄さんが怖い顔してるから怯えて出て来ないかもな。……本当にミルは異常者によく好かれるよ。お前、覚えておけ。ミルに危害を加えたら、俺がお前を殺す。二度と俺が出てくるような状況を作るな。好きならちゃんと守れ。守れないなら、手ぇ出すな」
どん、と男の胸に拳を叩き付け目蓋を閉ざした。
明らかにミルへの執着をみせる男が異常なことはすぐに察した。
俺と同じ人種だ。
ミルがいなければ生きていけない。
ミルのためなら何だってする。
殺しも暴力も、ミル以外の人間が傷付くことに何の感情も抱かない、そういった人間だ。
ミルを起こすのには毎回苦労するのに、簡単に起こせと要求するブランが憎らしい。
それでも、ミルの意識が上がってくる感覚があり、俺の意識は闇の底にと沈んでいく。
崩れ落ちる身体を支えられるのを薄れていく意識で感じながら、俺は消えた。
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