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二章:訪れた変化
誘拐された場合(2)01
しおりを挟む【誘拐された場合(2)】
家で学校の支度をしている時に、母が部屋に入って来た。
神父から電話だと言う。
朝っぱらから何の用だと漠然とした不安を胸に受話器を耳に宛てた。
* * * * * *
息を切らして教会の前まで走り抜け、目の前の扉を開け放った。
「ミルは!? いなくなったって、どういうことだよ!」
神父からの電話は、ミルが来ていないか問うものであった。
聞けば夜も明けぬ内から街人に呼び出され教会をあけた神父が戻ると、いる筈のミルがいないと言う。
一人でジョギングに出た形跡もなく、ホールの床にミルの身に付けている十字架のペンダントが転がっていた、と聞いて俺の不安は一気に頂点にと達してしまう。
彼が十字架を手放すことなどないに等しい。
「落ち着いて、フィン。私は目撃情報がないか調べてくるから、君は此処にいてくれ。もしかしたら戻ってくるかもしれないし。頼んだよ」
険しい顔付きで落ち着けと言われ、俺は首を左右に振りたくる。
一緒に行こうとしたのが顔に出たのだろう、牽制するように戻ってくる可能性を示唆され頷くしかなかった。
生きた心地のしない時間を教会の椅子に座り過ごす。
膝に肘を置いて頭を抱え込んだ。
十字架のバッグに聳え立つステンドグラスに陽が当たり、色鮮やかな光が室内を飾る。
以前、ミルが綺麗なのだと誇らしげに語っていた光景だ。
「ミル」
彼がいないと認識するだけで胸が引き攣れる。
苦しくて痛くて、どうにもならない焼けるような凍えるような、なんとも表現のしようもない苦痛が心臓をじんわりと焼いていく。
火傷なのか凍傷なのか。
何方のようでもあり、全然違う痛みのようでもあった。
「ミル」
名前を呼んでも返事が返って来ない。
誰も彼もが俺の元から逃げてしまうのだ。
異端の自分を愛してくれる者など存在しないと、物心ついた時から自覚して生きてきた。
期待は全て捨て去り、独りで生きることを課した。
辛いと感じたことはなかったのだ。
ミルに出逢うまでは、そんな自分を悲しいと思うこともなく平然と生きていた。
「ミル……っ、俺を……独りに、しないでよ」
キンキラと光る柔らかな髪に触れたい。
碧眼の瞳に自分だけを映したい。
中性的な優しい顔に浮かぶ笑みを自分だけに向けさせたい。
汚い独占欲を彼にぶつけて壊してしまうのが怖かった。
か細いミルはすぐにでも崩れ落ちてしまいそうで、腕に囲うことすら躊躇してしまう。
大事に大切にしたかった。
だが、触れることなく失うぐらいならば、壊してでも触れて抱き締めて閉じ込めてしまってもいいのかもしれない。
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