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二章:悲劇の日から
記憶に取り残された幼馴染 17
しおりを挟む何処から何処までを教えたらいいのか、と教師のようなことを考えつつクロを窺えば、彼は小さく頷いた。
「そっ、それは、知ってる、よ。気持ち良くなると白いの出る」
偉い偉い、と真っ赤になっているクロの頭を撫で話を進める。
「気持ち良くなると、おちんちんが大きく硬くなるだろ? それを女の人の膣……女性には、おしっこが出てくる穴とは違う穴があって、其処に硬くなったおちんちんを挿れて中に白いのを出すと、稀に女性の中の卵と白いのがくっついて赤ちゃんが出来るんだよ。鳥は赤ちゃんを運んでは来ないよ」
嬉しそうに目を細め頭をボクの掌に擦り付けてくる様に、抱き締めたくなってどうしようもなくなった。
それでも、ぐっ、と堪えて柔らかな髪を撫でる。
「女の人は、身体に穴が空いてるんだね。でも、僕には無理そうだなあ」
染々と見当違いなことを呟いたクロが、ちろり、とボクに視線を投げ、ほわり、と笑った。
「サン君がいてくれるなら僕は、お嫁さんも赤ちゃんもいらないや。傍にいて欲しいのはサン君だけだよ」
どくん、と心臓が大きく跳ねて体躯が震えてしまう。
駄目だ駄目だ駄目だ、と自制する脳に逆らい、腕がクロを捕えていた。
「ズルいよ、君は」
クロの首筋に顔を埋める。
泣きたくて堪らなかった。
愛しくて守りたくて大事に大切にしたい。
憎くて滅茶苦茶に壊してしまいたい。
汚いものから遠ざけて綺麗なものだけを見せたい。
ボクだけを見て欲しい。
他のものなど何も見なくていい。
相反する気持ちがごちゃごちゃとボクを乱していく。
「ボクのものになりもしない癖に。そうやってボクを縛るんだ。君は出逢った時からそうだった。汚れを知らない綺麗な心でボクを惑わして、その癖、汚いものを知っている。だからボクには、君を奪えないんだ。ボクの中の汚さを、君に見せたくないんだよ」
わたわたと戸惑うクロの両手が迷いながらもボクの背中を撫でた。
言葉の意味は1mm程も彼には伝わっていないだろう。
それでもクロは無条件にボクを受け入れようとするのだ。
「な、なんか、よくわかんないけど。僕達親友だろ? 何があってもサン君のこと好きだと思うんだ。これからも親友でいてくれる?」
親友、という単語に何故か胸が痛む。
そしてボクは察してもいた。
クロとこの先も一緒にいるためには、親友であり続けることが大前提なのだ。
はは、と乾いた笑いが溢れる。
クロの中でボクの立ち位置が親友という枠から外れた途端に、彼は忘れ去ってしまうのだろう。
何もかも、ボクの想いも全てが無かったことになる。
それは嫌だった。
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