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一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う
奴隷と水浴び 08
しおりを挟む辺りを見渡すも人の気配がないことに首を傾ける。
外に出たギーチの横に並び彼を窺った。
「皆は……?」
「先にミーチルさんのところに向かってる。おじいちゃん、今朝息を引き取ったみたい」
モゴモゴと躊躇いがちに問い掛けるメシアに優しく答えてくれるギーチの足は街の方にと向かう。
奴隷小屋は街外れのカースレスト近くにあった。
厭わしいものは一纏めにしておきたいのだろう。
メシアにとっては水浴びの都合上、泉に通いやすくて良いのだが、仕事に向かうのには少々手間だった。
「ミーチルさんのところ。ああ、昔殴られたことがあった。僕のせいで奥さん亡くなったって。そうか、あのおじいさん、死んだのか。やっと奥さんと会えるんだな」
頭の中に浮かんだ痩せこけた老人の姿は、怒り狂ったものだったが、命を終えたと言うだけで、何故だか尊く思える。
迫害してくる人間を憎んでいなければ、彼等に対して特に興味もない。
それでも人の死に触れるのには心が揺らぐのだ。
「もう結構なお歳だったからね。寝たきりで周りもそろそろだって覚悟はしていたみたい。……メシアのせいではないけど。そう思っている街の人間は多いし、未だに攻撃的な人もいるから。僕達でなるべく守るつもりだけど、メシアも十分気を付けて。アンクが一人殺されたところで問題にもならないってことを忘れちゃダメだよ? 人間はどんなにでも残酷になれる。出来たら近くの河原で待っていて欲しい。遺体を其処で浄めてから埋葬するから手伝ってくれるかな?」
ミーチルの家人はメシアを良く思っていないのだとギーチの言葉で解った。
今回に限らず大抵の場合が同じだ。
メシアはこの街から拒絶されている。
解りきった事実に傷付くだけの繊細さはとうの昔に捨ててしまった。
メシアにとって、迫害されるよりは目につかないようにひっそりと生きる方が楽に思える。
それであれ、楽な方に逃げていては駄目なのだ。
何度目になるか解らない忠告に頷いて街に突入して行くのだった。
* * * * * *
無事に死体の埋葬を終えた頃には真っ暗で日は暮れていた。
メシアは河原で身を浄めている仲間達と別れ、カースレストに向かう。
空には真ん丸の月が浮かんでいる。
今夜は満月か、と自然と顔が綻んだ。
満月の夜には不思議な力があるのだと、アツコから聞いたことがある。
光を沢山浴びるといい、彼女はそう言って笑ったのだ。
記憶にある母は、いつでも怖い顔でメシアを睨んでいた。
笑顔の母の記憶は数える程しかない。
それ故か、満月を見ると心が躍る。
小さく小さく「おかあさん」と呟いた。
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