13 / 40
一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う
奴隷と水浴び 09
しおりを挟むふとメシアの足が止まる。
カースレストの入口、木々がみっしりと密集したその前に、背の高い男が立っている。
メシアの口からは溜息が溢れ落ちた。
遠回りして泉に向かおうかと思考を重ねている内に、男が動き始め、メシアに向かい歩いて来る。
どうやら見付かってしまったようで逃げ場を失い、立ち尽くした。
「仕事は終わったのか?」
目の前まで迫る漆黒の王子。
噂で聞いた名前は、シヴァ=バンフェンシー。
此処、カピルタ王国の第二王子で、恐ろしい容姿につけられた渾名が「殺し屋」だと言う。
妾の子で王宮に入ったのは10年程前のこと。
母親は豪商の娘で、シヴァ自身金持ちのボンボンらしい。
ギーチにそれとなく聞いたシヴァの情報だ。
「迷惑だと言った筈なんだけど。お金持ちのボンボンって、そんなに暇なの?」
軽蔑を籠めて睨み付けるも、吐息で笑われてしまう。
愉快そうに歪められた口端は上向いていた。
はじめて見た彼の感情らしい僅かな変化に目を見開く。
息を呑んでシヴァを凝視していた。
「俺のことを調べたのか? 昼間は何も知らないようだったが」
両目を細めて見詰め返してくる様は、嬉しそうに見えてしまいメシアを戸惑わせる。
ふるふる、と首を左右させ彼から目を逸した。
「勘違いするな。別に調べたとかじゃない。噂を聞いただけだよ」
そっ、と伸びてきたシヴァの手を叩き落とし、前に進んで行く。
後ろを着いて来る気配に恐怖心が胸を支配していた。
「そう。また泉に行くのか?」
問い掛けに無視したまま木々に突っ込んで行くと、スルスル、と道が開かれる。
「着いて来ないで。僕に構わないでよ。この森は神聖なんだ。余所者は出てけ」
森の中まで追って来るシヴァに振り返り、意識的に出した低い声で宣った。
「神聖? 呪いの森、がか? お前は、魔女を愛する森、に随分と好かれているようだな。魔女はこの世界から姿を消したとされているが。末裔がいてもおかしくはない。お前が何者なのか、まだ疑惑が晴れた訳でもない。俺にはお前を監視する理由がある。……納得したら大人しく俺に見張られていろ」
ふん、と鼻で嗤う男に言葉を失う。
彼は馬鹿ではないようだ。
メシアが導いた答えと同じところに辿り着いているのなら、下手に抵抗するのは却って疑惑を深めるだけだろう。
何にしても、街の中でアツコが魔女ではないかとの噂は昔から絶えずに存在している。
その息子であるメシアに疑惑が向くのも当然のことなのだ。
「わかっ、た。好きにすればいい」
メシアに残された選択肢は、疑惑が晴れるまで男の視線に堪えることだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる