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一章:男性保育士奮闘記
男性保育士と働くお父さん 03
しおりを挟む何気なく聞いたつもりだった。
しかし、結希には地雷だったようで、あれほど動かなかった表情が怒りに染まる。
どんっ、と胸を押され、勢いで尻餅をついた。
「マコ先生も、お父さんのこと悪く言うの? お父さん、お仕事で疲れてて、それでも、ご飯買ってきてくれるよ! あんまりお話しないけど、お父さんはボクのために頑張ってるから、ボクも我慢出来るの!」
しまった、と思った時には、彼の両目には涙が溜まり、一粒、また一粒と、頬を伝った。
「違うんだよ、ユウキ君。マコ先生、お父さんのこと責めてるんじゃなくて、心配なんだ。忙しくてご飯食べられないと、仕事も大変でしょ?」
床に着いた腰を持ち上げて中腰になる。
膝を着くと結希の旋毛が目の前にあった。
彼は手の甲で目尻を乱暴に擦ると、おずおずと片手を差し出してくる。
保育士にとっての制服のような存在であるエプロンに皺が寄った。
結希の小さな手が、エプロンの固い布地を握り締めている。
「ホント? みんな、お父さんのこと悪く言うんだ。マコ先生は、違う?」
上目遣いに潤んだ瞳が問い掛けてきた。
僕は自然と彼の頭を撫でていた。
「先生のお家は、お父さんとお母さんが二人共お仕事が忙しくてね、あんまり家にいなかったから。大変なのはよくわかるんだよ」
肩に手を置き、結希の顔を覗き込んだ。
安心させるように笑みを掛ければ、ぎこちない微笑みを返してくれる。
彼が笑うところを、初めて見たかもしれない。
少しでも心を開いてくれたのならば、こんな嬉しいことはないだろう。
自然と綻ぶ顔は締まりがなく、気持ちも何処かふわふわとしていた。
とんとん、と肩を叩かれて、此処が教室であることを思い出す。
振り向けば、結希の担任である僕の同僚がいた。
教室に並べられた木目調の折り畳みテーブルの上には、ランチョンマットが人数分敷かれている。
彼女が僕の分も終わらせてくれたようだ。
しまった、と表情に出たのか、彼女は気にしないで下さいと首を横に振る。
「佐藤先生が呼んでましたよ? 職員室に来て欲しいそうです。ユウキ君、まだお父さんから連絡ないけど、ご飯食べてく?」
「あ、引き継ぎの時間だ! ありがと、ミドちゃん! じゃあ、ユウキ君。またね」
佐藤先生とは、夜間シフトの保育士である。
慌てて立ち上がり、扉に駆け寄った。
勿論、あちらこちらで遊んでいる園児にぶつからないよう細心の注意を払ってだ。
後ろでミドちゃんこと土門 碧(ツチカド ミドリ)と結希が話しているのを背中に部屋を飛び出した。
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