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一章:男性保育士奮闘記
男性保育士と働くお父さん 07
しおりを挟む結希の話では彼の父、結杜(ユウト)の帰宅は夜中を過ぎることが多いと言うので、二人で先に食べることにした。
結杜の分は別の小皿に盛ってラップをしてある。
テーブルに茶碗を並べ、結希の隣に座った。
手を合わせ「いただきます」と二人で声を合わせると、結希は嬉しそうに綻ばせた顔を僕に向けて「ありがとう、マコ先生!」と今まで見た中で一番子供らしく告げ、エビフライに箸を伸ばしていく。
その顔を見れただけで僕の胸はほっこりと和み、やって良かった、と思えるのだった。
* * * * * *
もう深夜を回り1時だろうか。
男は人知れず、極力音を立てないよう扉を開け帰宅する。
思った以上に仕事が押し、いつもよりも遅い帰りとなってしまった。
息子はもう寝ているだろうと手に下げたコンビニの袋には一人分の弁当が入っているのみだ。
溜息を吐き出し靴を脱ぐ男の鼻に、微かに食欲を誘う匂いが漂ってきた。
怪訝に思いつつもリビングに向かうと、其処にはテーブルに突っ伏する人間がいて、軽く目を見張る。
離婚した後、暫くは助けに来てくれていた男の家族も、愛想を尽かして今では連絡すら取っていない状況だ。
他にも心当たりを考えてはみたが、男の家に訪ねてくる人間に思い当たる節はなく、警戒しながら寝息を立てている人間の後ろまで近付いていく。
「マコ、先生?」
片頬をテーブルに着け、右手は顔の横に、左腕はだらりと宙に垂れ下がっている。
謎の人物の横顔を見て、思わず彼の名を呟いていた。
息子が通う保育園の保育士である。
確か、真古 颯介(マコ ソウスケ)と言う名前だった筈だ。
顔は見たことがあるし、電話で声も聞いたことはあるが、正直、それだけだった。
クラスの担当ではない保育士との関係など、顔見知り程度なのが普通だろう。
何故、彼が此処にいるのかと頭を悩ませつつも観察していると、颯介の顔の下にメモ用紙があり、右手の傍にはペンが転がっていることに気が付く。
起こそうかと手を彼の体に伸ばし掛けて、やめた。
起こしてしまうのが可哀想に思える程に彼は気持ち良さそうに寝ていたのだ。
知らず知らず苦笑を浮かべ、起こさぬようゆっくりと颯介の下からメモ用紙を抜き取る。
手に取った紙にはこう書かれていた。
『藍沢さんへ
お疲れ様です。○○保育園で保育士をしている真古です。いつもお世話になっております。
勝手ではありますが、夕飯を作らせて頂きました。テーブルに置いておきますので温めて食べて下さい。一週間分の食事も冷凍保存してあります。
もし宜しけ』
其処まで書いて寝てしまったのだろう。
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