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一章:男性保育士奮闘記
男性保育士と働くお父さん 08
しおりを挟む途中で途切れてグニャグニャとした線が描かれている。
結杜は紙をテーブルに戻し、リビングから子供部屋にと向かい中を覗いた。
息子の結希はベッドの上で寝ている。
恐らく、颯介は食事を作り風呂に入れて寝かし付けてくれたのだろう。
食事を作っただけならば、とっくに帰っている筈だ。
馬鹿がつく程のお節介、お人好し。
保育園での彼の評判を思い出す。
確かに、度を越したお節介ではある。
それでも幸せそうな顔で眠る結希を見れば、息子にとって颯介と過ごした時間が有意義だったことは伝わってきた。
仕事が忙しく、なかなか一緒に過ごすことが出来ないことで、周りに色々と言われていることは知っているし、それに結希が心を痛めていることも察している。
最近、結希の表情が乏しいことには気が付いていて、何も出来ずにいた。
父親失格だと自覚はしている。
ただどうしたらいいのか解らない。
息子との時間の取り方も接し方ですらも結杜には解らないのだ。
結杜には難しい難題を、颯介は意図も簡単にクリアしてしまえる。
胸に巣食ったのは、嫉妬のような羨望のような、そして何処かホッとしたような、複数の感情が入り交じったものだった。
自分に出来ないことを難なくやってしまえる人間が息子の傍にいてくれる、それは安心感とも呼べる想いだ。
久しく感じていなかったその感覚に結杜は無意識の内に微笑んでいた。
リビングに戻り鞄をテーブルの横に置いた。
緩慢な動きで颯介の体躯に腕を回し抱き上げる。
寝室まで運ぼうと横抱きにして歩き始めた。
んんん、と唸り声を上げる颯介の口から「ゆー、じ、ん?」と言葉が溢れ落ちる。
起こしてしまったか、と顔を覗き込んでも彼は寝息を立てて眠っていた。
「ごめ、ん。ゆうじ、ん……ごめ、ん」
悲しそうに口から漏れた寝言は、切ない響きで結杜に届く。
いつも優しい笑みを浮かべている颯介のあまりに辛そうな表情に胸が痛みを感じた。
もぞもぞと颯介の頭部が動き、結杜の胸に寄り掛かるように額をあて落ち着いた。
結杜が寝室に使っているその部屋には、クローゼットとキングサイズのベッドがあるだけである。
一人で使うには大き過ぎるベッドに、颯介を横たわせ掛け布団を肩まで掛け遣り、彼の前髪を横に流す。
静かに眠っているのを確認しリビングに戻った。
テーブルの上にはエビフライの乗った小皿があり、炊飯器を見れば白米が残されている。
ラップの掛かった皿を電子レンジに入れ温めている間に、自分の買ってきた弁当を冷蔵庫にしまい、茶碗にご飯をよそう。
箸を用意していると温め完了の電子音が響いてきた。
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